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韓国で慰安婦判決 韓国以外とはどうだったのか?

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【世界を読み解く】日本側の誠意を受け入れてくれた人たち

公開日: 2021/01/09 (政治, ワールド)

少女像=Reuters 少女像=Reuters

井出 敬二 (ニュースソクラ コラムニスト)

 1月8日、韓国ソウル中央地裁は,慰安婦訴訟で日本政府に対して賠償支払いを求める判決を出した。私はかつて外務省で、慰安婦問題を含む歴史関連の諸問題を担当する課長(アジア大洋州局地域政策課長)を務めており(2001年)、フィリピン、オランダに出張もしてこの問題に取り組んだ。

▼韓国以外にも大勢いた慰安婦

 いわゆる慰安婦は、韓国以外にも中国、台湾、フィリピン,インドネシアとオランダ(インドネシアを植民地にしていたので)にもいる(いた)。

 それぞれの国、地域との法的な問題は諸合意により解決している。(但し北朝鮮は別の事情があり、ここでは立ち入らない。)

 しかし慰安婦の方々への道義的責任を認め「償い」の気持ちを表すために、日本政府は補助金を出すとともに日本国民から募金も得て、アジア女性基金(1995年創設)という組織(財団法人)と一緒に、各国・各地域の慰安婦の方々に事業を行った。

 外務省とアジア女性基金(2007年3月末に解散したが、ネット上にデジタル・アーカイブがある)のウェブサイトに諸情報が掲載されているので、参照していただきたい。

 アジア女性基金の具体的事業として、1997年からフィリピン、韓国、台湾の元慰安婦の方には一人当たり一律200万円の「償い金」を支給する事業を行った。

 インドネシア、オランダにおいては、両国政府・関係者とも相談して、日本政府からの拠出金を基に、元慰安婦の人たちが裨益する別の事業を実施した。

 オランダでは1998年から元慰安婦の人たちの生活の改善・向上に資する事業を行った。結局79名の元慰安婦に事業を行った。2001年半ばにオランダでの事業が終了した時は、私は外務省の担当課長だったので、田中真紀子外務大臣(当時)のメッセージを携えてオランダに出張し、事業関係者(オランダ側の協力団体「蘭事業実施委員会」)に謝礼を伝えた。

 オランダで判明したご存命中の元慰安婦の人たちの人数は79名よりはもう少し多く、日本からの支援を受け取りたくないという人もいたが、多くの人たちが日本からの善意を受け止めてくれた。

 無事にオランダでの事業が終結したことに安堵したことを覚えている。

 私はフィリピンにも出張する機会もあり、フィリピン政府の関係部局(社会福祉開発省)の人たちと意見交換するとともに、元慰安婦の女性(おばあさん)のご自宅を訪問してお話しを聞いた。彼女は、日本側から既に200万円相当の「償い金」を受け取っており、また一緒に送られた小泉純一郎首相(当時)からの手紙を保管していて、それを見せてくれた。

 フィリピンにおいて当時の200万円というお金はかなりの金額であり、私が面会した元慰安婦はとても助かったと述べていた。(それ以外に一人当たり120万円相当の財・サービスも提供した。)

 また小泉総理からの手紙が添えられていたことも、元慰安婦の心に訴えたようである。やはりお金(だけ)の問題ではなく、気持ちの問題である。

 このフィリピン人の元慰安婦は、戦争当時の経験はひどいもので、思い出したくないが、今日の日本人が自分のことに思いやりをもって、このようにお金と総理からの手紙を送ってくれたことには感謝していると述べてくれた。

 この方のご生存の間に、今の日本人の気持ちが伝わったことは良かったと思う。

 フィリピンでの事業も私が課長を務めていた2001年8月に申請受付を終了した。

 私は2002年2月に担当課長から外れ、その後同年9月にフィリピン、韓国、台湾の事業は終了した。

 ただ、韓国においては、この事業の「償い金」を受けとった元慰安婦達(一定の人数はいた)を非難する人たちがいて、日本側も、受け取った元慰安婦たちも大いに困惑した。そのため彼女達のプライバシーを守ることが重要になっていた。

▽中国の慰安婦

 中華人民共和国にも慰安婦はいる(いた)。

 私が担当課長になった時には、中国においては、諸般の事情から、アジア女性基金の事業を行わないことになっていた。

 その後(2004年2月から2007年7月まで)、私は北京の日本大使館でスポークスパーソンとして働いた。その間、中国で慰安婦問題が関心をよんだことがあった。

 中国人でこの問題に関心を持つ人に対して、私から日本の立場を説明することになった。そこで私からは、日本側としては、どこにいる元慰安婦の人に対しても、同じ気持ちをもっており誠意をもって対応したいのだと伝えた。同時に、各国・地域の政府・行政機関ともよくコミュニケーションをとって、またそれぞれの事情をよく理解して、具体的な対応を決めており、その結果対応にちがいがあることも説明した。

 この説明をきいた中国人は、では中国の当局の関係部門にも、どういう考えなのか話を聞いてみたいと述べていた。(この人物がその後どうしたか分からないが。)

▽クロアチアで説明したこと

 私はクロアチア駐在の大使(2014年~2016年)をしていた際、クロアチアの第一副首相兼外務大臣(ベスナ・プシッチ氏)は女性で、女性の人権の問題に強い関心を抱いていた。彼女は国連事務総長選にも立候補した政治家である。

 クロアチアにおいてもユーゴスラヴィア解体時/後の戦争で被害を受けた多くの女性たちがいた。彼女達に対する支援の手も十分でなく、クロアチア政府として支援策を種々検討していた。

 私はプシッチ氏と意見交換した際に、慰安婦問題への日本の取り組み(上記の私の経験も踏まえて)についても説明したことがあった。プシッチ氏は日本の誠意と行動を理解してくれたと言ってくれた。

 上述のとおり元慰安婦に対する事業が無事終了できた場合も多々ある。その際世話になった関係者、そして日本側の気持ちを受け入れてくれた元慰安婦の人たちに、改めて感謝の気持ちを持つ次第である。
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井出 敬二(ニュースソクラ コラムニスト)
1957年生まれ。1980年東大経済学部卒、外務省入省。米国国防省語学学校、ハ
ーバード大学ロシア研究センター、モスクワ大学文学部でロシア語、ロシア政
治を学ぶ。ロシア国立外交アカデミー修士(国際関係論)。外務本省、モスク
ワ、北京の日本大使館、OECD代表部勤務。駐クロアチア大使、国際テロ協力・
組織犯罪協力担当大使、北極担当大使、国際貿易・経済担当大使(日本政府代
表)を歴任。2020年外務省退職。著書に『中国のマスコミとの付き合い方―現
役外交官第一線からの報告』(日本僑報社)、『パブリック・ディプロマシ
ー―「世論の時代」の外交戦略』(PHP研究所、共著)、『<中露国境>交渉史
~国境紛争はいかに決着したのか?』(作品社)、”Emerging Legal Orders in
the Arctic - The Role of Non-Arctic Actors”(Routledge、共著)など。編訳に『
極東に生きたテュルク・タタール人―発見された満州のタタール語新聞
』(2021年出版予定)。
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