いまの中国は内外の難題が山積している。中国政府も右往左往して、混乱を呈しているようだ。習近平の三期目政権が不安定なのではないかとみられがちだが、彼の最新の重要講話を見ると、少なくとも習近平が目指している方向ははっきりしている。
2月7日、習近平が中共中央党校で重要談話がした。新入りの中共中央委員、候補委員及び省の幹部に面して、彼が「中国式現代化」を大いに語り、西側との違いを下記のように強調した。
「中国式現代化が優秀な中華伝統文化に根差して、科学の社会主義の先進した本質を現している。中国式現代化は人類のすべての優秀な文明成果を吸収し、人類文明の発展方向を代表して、西側の現代化のモデルと違う新しい未来図を描いた。中国式現代化は真新しい人類文明の形態であり、現代化が=西側化の「迷思(幻想)」を打ち破った。(中略)中国式現代化が人類にさらなるいい社会制度を探すために中国式の方案を提供した」
習近平が中国式現代化を打ち出して以来、ここまではっきりと西側との違いを公表したのは初めてだ。習近平の三期目政権が目指すことも鮮明になった。まずはアメリカを初め、西側先進国には妥協しないこと。その二はもう西側先進国の指図を受けない。その三は西側に同化されない上に、世界諸国に中国の社会制度を推し進めること、であった。これは習近平による西側との決裂宣言に等しい。
日本ではあまり注目されていなかったかもしれないが、習近平の「中国式現代化」と西側の現代化の違いを宣言したことは大きな話題となった。もちろん中国政府系マスコミが「空爆」のような宣伝戦を展開し、「中国式現代化は中国民族の偉大振興の壮挙だ」などのタイトルが踊り、鸚鵡のように西側と違うと繰り返した。
2月26日、「中共中央弁公庁、国務院弁公庁は西側の憲政と三権分立などの西側の間違った観点を断固として阻止し反対しよう」と新華社が報道し、イデオロギーの面で反西側の号令をかけた。
しかし、海外のマスコミは冷めた見方が多かった。
フランスの「世界報」が「一帯一路が唱えてから10年後、習近平がつぎの一歩を踏み出した。それは世界で中国式現代化を押し広めること」と報じた。またこの新しい習近平の夢は北京とワシントンの直接対決を宣言し、挑戦、困難甚だ危険の暴風雨に遭うことはさけられないであろうと評した(2月22日2023年 IFI)。
欧州の「現代外交」網は「ほかの現代化と違い、中国式現代化は暴力で自分の未来図を世界諸国に強引に推し進めるだけではなく、自分の国をよくなるように進めている。中国式現代化は他の国のモデルに成り得るか?歴史が教えてくれるだとう」と(参考消息網2023年2月22日)。
「習近平の中国式現代化は新しい理論であるか?それでも習近平式の帝王術?」とボイス・オブ・アメリカは問いかけた。
習近平の西側の普遍的価値観に対するアレルギーはかなり深刻だ。彼が副主席だった2009年2月に「満腹して、やることのない外国人がわれわれ(中国)のことに指図している」とのメキシコ訪問中の発言はいまだに鮮烈だ。その後、彼が中国最高指導者になって、中国共産党の一党統治を強めると同時に、言論のコントロール及び人々の監視を強めて、西側のカラー革命を如何にして防ぐかに腐心してきた。
トランプの施政期間中に、中共中央弁公庁か清華大学に研究報告を出すように指示した。それは中米関係および中露関係に関する重要な報告書であった。「ロシアの経済は未来がない」と分析したその「報告書」が内部資料として習近平のテーブルに上がったあと、彼は「一派胡言(全くのでたらめだ)」と言う指示を書き込んだと言い伝えられた。
三期目政権が本格的に始動する直前になったいま、「中国式現代化は西側の現代化と違うのだ」とはっきりと公言した。
習近平の西側への反発は、裏返しでロシアのプーチン大統領に対する憧れとなって現れる。2013年3月、習近平がロシアを訪問した。そのとき、プーチン大統領に面して、「私はあなたの性格と似ていると思っています」と習近平がいった。それから、習近平とプーチン大統領の友情を日に日に深めてきた。プーチン大統領の誕生日ごとに必ず祝ってあげるようになった。
2018年6月、プーチン大統領が習近平に「勲章」を授与した。そのとき「プーチン大統領は私の一番心が知れた友人だ」と本音を公に言い出した。二人の直接会見も他の国家元首より圧倒的に多かった。中国政府系マスコミの報道を総合してみると、2013年から2018年までのあいだに、二人は23回も会談した。
コロナ禍の下でも、直接訪問の代わりにテレビ会談で二人の関係および中露関係を深めて来た。去年の2月、ロシアがウクライナを侵略する直前にプーチン大統領は北京冬五輪開幕式に出席した後は「中露関係は天井がない」と中国外交部が公表するほどだ。バイデン大統領はプーチン大統領より早く習近平と会っていたが、なかなか「心が知れた友人にはなれなかった」
日本と西側の先進国はよく中国政府の言動を西側の価値観で分析したので、間違いやすい。西側の価値観などで中国政府の言動を解釈すると、中国に対してわずかな希望をもつことになる。例えば「ロシアとウクライナの戦争に中立の立場で和平を仲介すると中国政府が言っている」「気球事件を習近平は知らなかったのだろう」などなど。
しかし、習近平が西側の普遍的価値観と対決した態度がはっきりさせた以上、もはや中国は本当に中立的な立場でこれら問題を取り込むことは不可能であろう。
日本のマスコミも取り上げたように、香港の「明報」はまたも震撼的な情報を暴露した。旧ソ連を真似して、中国政府は機構を改革すると偽って、党中央直轄の「内務部」を作ろうとしていると報道した。
また、まもなく開かれる中国全人代と政治協商会議で人事を刷新する際、さらなる集権をはかろうと習近平及び追従者たちが動いているという情報も伝わってくる。
西側の普遍的な価値観を捨てる一方、中国の更なるソ連化は避けられないであろう。習近平および追従者たちのこれからの言動から目が離せない。