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北京市書記は李克強の国務院に背いた?

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【中国深層リポート(13)】一日で撤回された強制ワクチン接種令に表れた習李の争い

公開日: 2022/08/19 (ワールド, コロナ)

CC BY 李克強氏=CC BY /NZTE(cropped)

林 愛華 (国際ジャーナリスト)

 去る7月6日、北京市政府は突然記者会見を開き、ワクチン接種に関する新規定を公表した。

 7月11日より、図書館、映画館、シニア大学などの十数の場所に出入りするのに、ワクチン接種が必要になる。対象施設の範囲はあまりに広く、ワクチンを接種しないとどこにも行けなくなった。「これはワクチンの接種強要ではないか」とすぐにネットなどを通して不満の声が発せられた。

 新規定発表のわずか一日後、7月7日の深夜に「北京日報」は北京市政府コロナ感染防止担当の幹部の話として、ワクチン接種は国務院の原則に従い、個人の意思を尊重し、強制しないと伝えた。事実上、7月6日の新規定は取り消された形だ。

 北京市は習近平の側近、市党委員会書記蔡奇の牙城である。習近平が唱えたゼロコロナを堅持し、秋に行われる予定の中国共産党二十回大会を前に昇進のための点数をかせぐ必要があった。

 しかし、中国経済発展の責任を担わされた李克強首相は、ゼロコロナより経済を重視している。

 6月に、経済発展に号令をかけた十万人大会を開き、過剰防疫を防ぐ「九条」を公表した。実はその前の2021年10月下旬から、中国国務院もワクチン接種に関する「知情(知る)、同意(認可)、自愿(強制しない)」の原則を公表し、ワクチンの強制接種をしてはならないと決めた。

 そういう状況で、ワクチンを打つ人々が想定以上に増えなかったのである。蔡奇が主導する北京市は、ゼロコロナ重視か経済重視かを迫られたこの重要な時期に、突然ワクチン接種を強引に求めたのである。

 明らかに国務院の方針に反する行動だ。中央政府に喧嘩を売っているのか? それとも李克強に対する嫌がらせであろうか? 憶測は中国語圏で飛び交うことになった。

 今年の6月28日、習近平が武漢を視察した。

 彼は「我々はゼロコロナを堅持して、最大限に人民の生命安全と健康を守れた。(中略)だから今は経済発展に少し影響を与えたが、人民の生命安全と健康に損害を与えてはならない」と発言した(中央テレビ網6月30日付)。

 習近平のこの発言は再びゼロコロナの重要性を強調して、自分は経済よりゼロコロナを重要視すると言っていることを意味した。

 「ゼロコロナ政策を改めると言えない重要な政治要素がある。それは中国共産党の権力継承と新たな最高指導部(七人の政治局務委員)の組み合わせが今年秋に中国共産党二十回大会で決まるからだ。それで習近平は絶対に安易にゼロコロナを放棄するといわないだろう。ゼロコロナは彼の看板政策であり、極めて悪い結果を招くことを知っても放棄できない政策だ」と張倫セルジーパリ大学教授が評した(フランス国際ラジオ中国版2022年7月7日付)。

 だから、蔡氏はすぐも行動で習近平を支持するように動いて、冒頭の記者会見で新しい措置を打ち出した。しかし、これは明らかに李克強の経済発展の施策を無視することだと思われた。李克強の国務院は譲らず、わずか一日で新規定を撤回させた。

 「これは中国共産党内部の路線闘争だ。とくに国際社会から「習下李上」と騒がれているときに蔡奇氏がゼロコロナ方針を堅持する姿勢を習近平は喜ぶであろう。ゼロコロナが成功すれば、習近平個人だけではなく、自分の派閥の人間にとっても昇進に有利になる。だから強要してでも成功させたいのであろう」と知人の政治専門家が分析している。

 「北京市は試しに強制接種の姿勢を見せた。(中略)世論がその強制令を撤回させた一面もあるが、後ろに政治の駆け引きもあったではないか」と中国紅十字基金会元医療救助部長任瑞紅が「フリーアジアラジオ」中国語版の取材で語った。

 確かに、最近の李克強の動きは活発で力強い。すでに「最後の国務院総理任期」と宣言した彼は遠慮がなくなった。蔡奇北京党委員会書記からの攻撃を見事に打ち返したあと、7月7日、李克強は晴れ晴れした表情で福建省に現れた。

 流れた映像をみると、彼はまたもマスクなしで民衆に近づき、笑顔で会話を交わし、ゼロコロナにはひとことも触れなかった。同じ日に、李克強が福建、上海、江蘇、浙江、広東省と市の責任者会議を主催し、全国財政収入の四割を占める大きな都市は引き続き力を発揮せよと号令した。また会議を通して、国際情勢は如何様にも変化するだろうが、改革開放は更に拡大するという重要な信号が発せられた。

 李克強は、民衆との距離が近いという点で習近平と大きく違う。

 7月1日に、習近平が香港の中国帰還25周年式典を参加した。すべての活動にマスク姿で、表情がみえなかった。その上に、二日間に行われた多くの行事に参加せず、香港では宴会を避け、香港に泊まることもしなかった。

 「なんのために行ったのか。これではお祝いといえるのか」とネットでその暗さが話題になるほどだ。

 いま、習近平のゼロコロナはすでに最も重要な政治課題ではなくなり、経済の安定が取ってかわった、と「ボイス・オブ・アメリカ」が報道した。ある中国人ネットユーザーが「ゼロコロナは一番コストが低く、一番効果的だと(習近平が)言ったが、それを証明するデータはあるのか?」と書き、削除された。

 いま中国のネットで習近平のゼロコロナに反対する声が現れては削除される、ということが相次いでいる。

 8月6日、コロナ感染者が出たため、中国海南省は突然ロックダウンを宣言した。

 海南省政府は12日に観光客などに全員、海南省を離れて所在地に戻るよう指示し「社会面ゼロコロナ(管控区、防範区=多人数活動を自粛、非閉鎖管理の社会流動人員などを含む陽性感染者が3日連続してゼロになる状態、つまりすでに感染者がいる区域以外の感染者「ゼロ」)」を実現すると宣言したが、事実上その目標は達成できなかった。

 海南省の旅行とラジオ体育庁の汪黎明・副庁長は13日、「申し訳ないと思っている」と陳謝。「ゼロコロナ」について、省政府高官が非を認め、公の場で謝罪することは異例で、「習近平のゼロコロナ方針も以前と比べ緩くなった」と分析されている。

 習李の争いには中国の人々も右往左往している。
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