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北戴河会議後も習・李の路線の違いくっきり

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【中国深層リポート(14)】李首相は全人代常務委員長(国会議長)で政治局常務委員にとどまる可能性

公開日: 2022/08/23 (ワールド)

CC BY-SA 北戴河=CC BY-SA /Charlie fong

林 愛華 (国際ジャーナリスト)

  8月1日から、中国共産党政治局の常務委員7名が夏休みで北戴河の別荘へ出かけた。中国の政治を左右する所謂「北戴河会議」の時期だ。

 今年は例年と異なり重要な会議となった。秋に迎える中国共産党第二十回大会で、今後5年の施政方針と人事など重要事項が決定される。「北戴河会議」はその前触れだ。

 幹部たちの今夏の休暇は8月1日から15日までとされた。現地からの情報によると、期間中外部から北戴河に入る者は身分証を確認され、鞄の中身をチェック、自動車はトランクの中も検査された。当局は特に危険物やドローンの持ち込みに目を光らせた。

 外国メディアにもよく取り上げられる「北戴河会議」は、実際は指導者たちの夏休み兼非公式会合を指す言葉であった。北戴河には政府首脳の別荘が多く建てられているが、国家機密に属するので、現地の情報は乏しい。

 1950年代の資料によると、国務院が占有する砂浜は東側で、西側は中国共産党幹部の専属エリアだった。毛沢東などの中国共産党の幹部たちは西側に滞在し、会議もそちらで行われた。

 指導者たちの休み期間は初日の交通規制で始まり、政治局常務委員たちが再び公衆の前に現れるのは会議の終了後だ。今年も例外ではなかった。

 8月16日に、李克強が深圳視察に姿を現したことで北戴河会議は終わりを告げた。中国CCTVの公式「央視網」が16日、李が経済大省の省長会議を深圳で主催したと報道。

 習近平も同日、中国東北区域の遼寧省を視察したと新華社が李氏視察より一日遅れて報じた。李克強の行動が習近平より一日早くメディアに取り上げられたことを一部海外の中国語メディアは「習下李上」と解説したが、指導者の身の安全を配慮したための単なるセキュリティー対策だろう。

 報道の日付より興味深いのは、2人の訪問先だ。李は中国改革の最前線で中国南部の深圳。習はロシアに近い東北遼寧省の錦州。まさに「李南習北」で、真逆だ。いわゆる「北戴河会議」の後と言う微妙な時期に、2人が全く違う方向の地域を視察したことは憶測を呼んだ。

 習は錦州市で遼(寧)瀋(陽)戦役記念館、東湖の森林公園を視察して、環境保護や水害防止などの状況報告を受けたと新華社が報じた。彼は遼(寧)瀋(陽)戦役記念館で毛沢東を讃え、党の歴史を勉強する重要性を語った。

 ロボット企業「瀋陽新松ロボット自動化株式会社」で革新の重要性を強調し、外国から技術面での「卡脖子(首を抑え込まれた)」問題を自力で突破して、核心技術を獲得すると強調した。または住民たちと懇談し、中国の夢、強い国の夢を語り、瀋陽の軍隊幹部に接見した。

 一方、李克強は深圳で経済を安定させる省長幹部会議を主催し、「創業園(科学技術開発特区)」を視察し、鄧小平の銅像に花を捧げたと政府系メディアが取り上げた。政府系メディアに報じられない李克強の発言はSNSの個人アカウントを通じて拡散した。

 李は深圳の塩田港を視察した際、「黄河と長江(揚子江)は逆流することができないように中国の開放は引き続き推進する」と語った。また「一部の人が中国は世界一だと言った。そう考えるのはいいが、「山外有山(山の外に山があり)」も忘れてはならない」と釘を刺した。 

 2人の視察の際の言動でも、違いが鮮明に浮かんでくる。習は経済より党及び政権に対する忠誠心を重視し、台湾を念頭に軍事力で国の強さを喧伝している。中国は外国に屈しないと呼びかけ、戦狼外交を堅持する意志を示した。

 一方、李克強は全く違うメッセージを発した。改革開放の堅持は外国との対立を解消することを意味し、戦狼外交を和らげる方向を示している。

 習は「東昇西降」と信じて、中国はもう西側などの先進国を師としなくてもいいと考えているが、李は「山外有山(山の外に山があり)」と強調している。これが今の中国指導部の実態だろう。つまり「各自为政(歩調を合わせずにそれぞれ勝手に振舞う)」だ。

 「北戴河会議」でもう一つ注目されることは人事である。例年であれば、すでにさまざまな情報が出回っている頃だが、今年は情報が外部にはほとんど流れていない。

 習近平の締め付けが厳しい面もあろうが、交代がそう多くない可能性もある。あるいは北戴河で人事に関して決着をつけなかったのかもしれない。

 来る中国共産党第二十回大会では、習の三選が焦点だ。習が三選となるのか、総書記は誰かに譲り、軍事委員会と国家主席を兼任する可能性もある。

 いまのところ習三選の方向で動いているというのが中国政治評論家の見方だ。だから三選よりも、習の政策が北戴河会議では激しく議論されていたという情報もあった。

 李克強は国務院総理を辞任した後も全国人民代表大会常務委員長に就任する可能性があるので、引き続き政治局常務委員として、影響力を保つだろうと見られている。

 李がいままで虐げられたことに嫌気がさして胡錦濤のように「全退(全での職を辞める)」という説もあるが、全人代委員長になる場合は、引き続き中国指導者のNo.2に並ぶだろう。李鵬元首相がその前例である。

 日本のメディアも観測記事を流しているように、胡春華副首相が中国共産党大会で昇進する可能性が大きいようだ。「胡氏は共青団派であるが、習氏にとって汪洋よりコントロールしやすいからだ」と言われてきた。

 中国では政治局常務委員は「七上八下(67歳のひとは留任ができるが、68歳を超えると辞める)」と言う暗黙のルールがある。今の7名の常務委員では、習近平(69歳)や栗戦書(72歳)、韓正(68歳)が辞任の対象となるはずだ。だが、習近平の三選で、そのルールがどうなるのか? これも見どころの一つだ。

 香港の「明報」によると、慣例に従うと中国共産党第20回大会の人事はことしの5月から6月にかけて提案し、8月の北戴河会議で案をまとめ、9月の政治局会議で決まるはずだ。

 いまでは胡春華副首相(61歳)、中央弁公室主任・丁薛祥(60歳)、重慶市委員会書記・陳敏爾(62歳)、上海市委員会書記・李強(63歳)の4人の中から2名が政治局常務委員に昇進する公算が大きいが、北京市書記の蔡奇(66歳)も争っている。

 「ボイス・オブ・アメリカ」中国語版は「胡春華の政治局常務委員会入りの可能性が一番高く、李克強の後任に一番近い」と分析した。

 中国共産党第20回大会に向かって、2名の政治局常務委員の椅子をめぐる争いは一層激しくなるだろう。中国の指導部の変動を世界は固唾を飲んで見守っている。
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