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追い込まれ習近平「ゼロコロナ政策」緩和、自らの決断とふるまう

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【中国深層リポート(29)】「白紙革命」はまだ習体制を揺さぶっている

公開日: 2022/12/06 (ワールド)

中国のゼロコロナ政策への抗議デモで白いプラカードを掲げる人々=Reuters 中国のゼロコロナ政策への抗議デモで白いプラカードを掲げる人々=Reuters

林 愛華 (国際ジャーナリスト)

 一枚の白い紙が象徴する「白紙革命」が中国に旋風を巻き起こした。1989年の天安門事件以来の反政府デモで大きな役割を果たしたのは、情報伝達のスピードが速いSNSだった。

 人々は鎮圧の口実を与えないようにSNSを利用して抗議を続け、警察の暴行映像は即座に海外まで拡散された。対応に苦慮した習近平政権は早々に妥協し、ゼロコロナ政策を緩めたが、背景には政治闘争があった。

 デモが起きた直後の11月27日、新華社は「ゼロコロナの総方針を断固として貫徹する」と政府の方針を強調した。その翌々日、中国国務院が会見を開催、内外の記者が多く集まり、CCTVとネットでも中継された。

 ゼロコロナ政策で重大変更があると言う噂が流れ、人々は期待を胸にライブ映像に釘付けとなったが、関係部門の幹部6人が記者たちの質問に淡々と答えただけで、新しいことは何もなかった。強調されたのは「世界的なコロナの感染状況を緊密に注視し、経済に対する影響を最小限に抑える」ことだけで、ゼロコロナ政策への言及もなかった。

 そもそも李克強は今年の5月からも鮮明にゼロコロナを反対した姿勢を貫いてきた。だから彼が主宰する国務院もできるだけ経済を発展させ、ゼロコロナ政策に抵抗した。結果、李克強を含めた反習派は最高指導部から排除されたが、意見の食い違いは残ったままだ。今回の記者会見も李克強が主宰する国務院が記者会見で見せた水を差すような姿勢は習近平への抵抗だったのだろう。

 それもあって、中身のないこの記者会見は国務院が習近平から政策転換の指示を得ていなかったことを意味する。一方で、新華社のようにゼロコロナを貫徹する断固たる意気込みも感じられなかった。記者会見は国民を落ち着かせて時間を稼ぐ目的のように見えて、人々の習近平に対する怒りはさらにエスカレートした。

 コロナ感染拡大初期に習近平が「コロナ感染防止はすべて自分が指揮を取った」と胸を張ったことが記憶に新しいからだ。

 人々の失望のなか、同じ日に浙江省からある論評が出て、大きな話題となった。文章のタイトルは「人民至上不是防疫至上(至上なのは人民で、コロナ防止ではない)」。作者名の「之江軒」から浙江省宣伝部の記事だと分かった。

 習近平の「浙江閥」は「之江(浙江の別称)新軍」とも呼ばれる。習は2002年から2007年まで5年を浙江省の副省長からトップの書記まで過ごし、この時期の部下たちの多くを北京で要職に着けている。このため、浙江閥ができた。当時、習は地元メディアの浙江日報に「之江新語」という連載コラムを書いていたため、派閥の別名として之江新軍と呼ばれたりする。

 習の力の源泉ともいえる浙江省からの記事はしかし、明らかにゼロコロナ政策に反対を唱える内容だった。また「感染拡大防止の対象はウイルスであって、人間ではない」と厳しいゼロコロナを暗に批判する一文もあった。身内からの反旗だろうか?

 さらに、「人民日報」の携帯ニュースも同日、「核酸乱象不止 疫情永無寧日(PCR検査の乱れた状況を止めないと、コロナ感染も止められない)」という記事を掲載した。PCRのビジネス化が中国の感染防止の障害となっていることを批判する内容で、大きな話題を呼び、多くのメディアに転載されたが、その後原文は削除された。

 一日のうちに、ゼロコロナ政策をめぐる相反する意見が出てきたのは、鉄板だと思われた習近平のゼロコロナ政策が反対デモの衝撃と反対派の抵抗で揺れ始めたことを示している。

 その後の中国政府の動きは速かった。11月30日と12月1日の二日間、国務院副総理の孫春蘭と専門家たちが会議を開いた。「ゼロコロナ政策を断固守る」と訴えて来た孫副総理は初めて、オミクロン株の毒性が弱まったことを認め、感染防止が新たな局面を迎えたと発言した。

 中国のコロナ政策が大きく転換し、ゼロコロナにこだわらずに、体の弱い人々の保護を重視するようになるだろうとシンガポールの「聯合早報」は解説した。

 その後、中国の大都市部でまずPCR検査が強制されなくなった。北京などで地下鉄の陰性証明書も不要になった。しかし、混乱も生じている。PCR検査不要と政府が方針を示したにもかかわらず、地域によっては職場や買い物などでPCRの陰性証明が必要だ。

 こういった混乱を政府が適切に解決しないと、またデモにつながる可能性がある。

 習近平は表向き民意に従ったように見えるが、そうではない。ゼロコロナ政策を緩和するのと同時に、デモの参加者を逮捕し、その黒幕とみる「海外勢力」を血眼に探して、反撃している。

 12月1日に、習近平はEU大統領と北京で会見した。習は反政府デモを触れ、デモの理由は「三年に及ぶコロナの流行への人々の不満」だと釈明し、規制緩和の意向も示した。

 中国の国家最高指導者が自ら反政府デモについて外国の指導者に語り、そのことが外国メディアに報道されるのは異例中の異例だ。裏で行われた政権内にもあった政治対立を隠し、ゼロコロナ緩和を自分の実績として強調、反政府デモの民意を自分も承知していることを中国の国民に伝えてみせた。

 習近平の権力の座を守る闘いは今後のコロナ感染状況にも左右される。三期目に入り、早くも大きなピンチに直面した習近平にとって想定外のクリスマスプレゼントとなったのではないだろうか。
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