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中国「改革開放派」の復権

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【中国深層リポート(30)】反コロナデモが反習近平派を勢いづけた

公開日: 2022/12/13 (ワールド)

CC BY 李克強首相=CC BY /China_NZTE(cropped)

林 愛華 (国際ジャーナリスト)

 12月11日に、ある動画がツイッターで流れてきた。李克強国務院総理(首相)が6人の国際経済組織のトップを連れて、中国の名所「黄山」を見学した映像だ。マスクなしの姿で6人を一般市民に紹介し、これからの中国はさらなる改革開放が必要だと強調した。

 中国外交部の発表によると、李首相主催の国際経済機構トップらを招いた会議は12月9日に始まった。今年で七回目の会議だが、コロナ感染拡大以来、初めての対面式の会議だった。国際通貨基金(IMF)や世界銀行など六つの国際機関トップが参加し、共同記者会見も行った。

 「改革開放は中国を発展させただけではなく、世界に利益をもたらした。改革開放は人民が豊かになるために歩むべき道で、開放のゲートはチャンスのドアとなる。(中略)中国はハイレベルの開放を推し進め、制度の開放も安定を保ちながら拡大していく。多くの外国人が中国に投資することを歓迎したい」。李克強は記者会見で胸をはった。

 李克強の言動は明らかに習近平の主張に反している。10月中旬に開かれた中国共産党第二十回大会、習近平主席は改革開放を主張する李克強を始めとする共青団派を徹底的に最高指導部から排除した。また、大会報告の中でもイデオロギー思想を強め、改革開放の色を薄めた。

 習近平はゼロコロナ政策にこだわり、経済を犠牲にする姿勢を見せたのに対し、李克強は終始経済の安定的発展を訴え、改革開放の必要性を強調し続けた。李克強のその声はしかし、習近平が掌握するメディアにあまり取り上げられなくなっていた。

 しかし、ここに来て、李克強に再び注目が集まっている。会議での李は晴れ晴れとした表情で、「改革開放」もキーワードとして再浮上した。また流れてきた黄山での映像で李が発言するたびに民衆の拍手や喝采が湧き起こったことも印象的だった。

 習近平は崇拝の対象を演じるため、国民との距離は遠い。しかし、李克強は国民に自分の言葉で呼びかけ、国民との近さを重視してきた。次期総理ではなくなったが、依然として習近平より人気が高い。

 冒頭の経済会議は2016年から開催され、テーマは世界経済の活力に関するものが多かった。しかし今年は、「中国経済を合理的な範囲で動かし、改革開放を頼りに新しい駆動力を注いでいく」がタイトルだった(外交部網2022年12月10日)。

 このタイトルから二つの意味が読みとれる。一つは3年も続けたゼロコロナ政策が中国の経済に大きなダメージを与え、異常な領域に達したため、「合理的な範囲で動く」必要があると主張すること。もう一つは「改革開放を頼りに」を強調したことで、国民の不安を和らげることだ。

 習近平はイデオロギーを重視し、社会主義こそ中国が歩むべき道だと強調、アメリカなど民主主義国との距離を広げ、中国の孤立を招いた。外資が中国から逃げ出し、人々の生活にもダメージを与えた。ゼロコロナ政策を推し進めた結果、更に生産停止が広がり、失業が増えた。人々の不満は爆発し、ついに反ゼロコロナデモが起こり、「習近平の辞任」が叫ばれるまでに至った。

 デモに驚いた習近平はやむを得ず、ゼロコロナ政策を放棄、政策を転換させた。また国民が求める経済回復には改革開放の道しかないと中国政府は再認識したようだ。デモを背景に改革開放派が再び勢いづいている。

 12月6日、中共中央政治局会議が開かれ、2023年の中国経済の基調は「全社会の活力を奮い起こさせて、幹部が恐れずに仕事をし、地方政府が恐れずに事業を開拓し、企業が恐れずにやるべきことをやって、人々が恐れずにイノベーションができる」に決定された。

 その「恐れずに」の対象は暗に習近平を指しているようだ。12月10日に上海で行われた第四回外滩(The Bund)金融フォーラムにテレビ電話で祝意を述べた国家副主席の王岐山は、中国の更なる開放を強調した。

 同じ日に、政府系メディア「求是網」が「改革開放を深めることを堅持しよう」というタイトルの論文を掲載した。作者は中国国家発展改革委員会経済研究所所長の郭春麗だ。習近平が最高指導者になって以来、政府系メディアから消えつつあった「改革開放」の復権と言えるだろう。

 今後は党大会の党規約案にありながら最終的に採用されなかった「二つの確立」(党の核心としての地位と、習氏の思想の指導的地位を確立したとするスローガン)に代表される習近平のイデオロギー思想は色褪せ、李克強が主導する国務院が中国経済を引っ張っていく方向に向かうだろう。

 この意味で李克強などの改革開放派は政治闘争で負けたが、中国が歩むべき路線闘争においては、いまのところは勝ったといえるであろう。
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