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“習降李昇” 習近平の権力が弱まり、李克強が浮上しているのか? 

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【中国深層レポート(1)】4月末の政治局会議後 李首相報道がわずかだが変わり始めた

公開日: 2022/05/25 (ワールド)

李克強首相@雲南大学=中国SNSから 李克強首相@雲南大学=中国SNSから

林 愛華 (国際ジャーナリスト)

△  マスクなしの李克強の雲南視察

 ゼロコロナかウイズコロナか?それが政治問題となっている中、李克強首相の言動が国内外を騒然とさせた。5月18日、李克強は雲南大学を視察し、多くの人に囲まれたにも関わらず、マスクをつけていなかった。

 人だかりで密集した中で彼は笑顔で人々と話を交わし、コロナウイルスを気にする様子を全く見せなかった。習近平が唱えたゼロコロナの方針に明らかに反する彼の行動は、「やっと習近平に反旗を翻したか」と内外に騒ぎを巻き起こした。

 李克強のマスクなしでの視察姿の映像は、まず雲南大学の微博(中国最大のSNS)で公表された。たちまち話題を呼び、ツイッターなどでも多くの人々に転送された。海外の一部中国語メディアはお祭り騒ぎのように取り上げ、李克強による習近平の独裁への「反旗」に期待を込めた論評も見られた。(雲南大学での李首相の動画があるSNSへはこちらから)

 海外での盛り上がりとは異なり、中国の政府系メディアの報道は興味深い。5月19日の『新華網』に李克強が雲南で経済安定と雇用確保に関する会議を主宰したとの報道はあったが,動画も写真もなかった。『人民網』と『人民日報』も同様だった。

 17日から19日までの李克強の雲南視察についての総合的な報道は、20日になりやっと『人民網』などが掲載するようになった。その多くも写真もなく文字だけの記事であった。

 以上のことで「李克強は異例な行動で態度を表明した」と『ラジオフリーアジア(RFA)』は報じ、彼の視察先でマスクをつける人がなく、ゼロコロナを政治任務とする中国で実に異例だと強調した。李克強の最近の視察などで本人はもとより同行者もマスクをつけていなかったと指摘した。

 「これは意図的だ」と分析する筆者の知人の中国政治専門家もいる。中国経済の舵取りを担う李克強には、ゼロコロナで経済をダメにしてはならない責任がある。オミクロン株の特徴を踏まえ、ゼロコロナ政策に李が異論を唱えたのだろうと、この政治専門家は分析してくれた。

△  4月29日の政治局会議の後から流れてきた噂

 『ラジオフランス』(中国語版)も、これまで弱いと思われてきた李克強の言動は“習降李昇”(習近平の権力が弱まり李克強が勢いを強める)の噂を増幅させたと取り上げた。噂というのは「習近平の内政と外交の連続失敗で、長老達、多くの高級幹部達が、李克強を支持する方に回った」といった話である。確かに4月29日に行われた政治局会議の後に、これらの噂が具体的に流れだした。

 この政治局会議に関する『新華社』の報道は、珍しく「習近平を核心とする」との文言を使わず、またほぼ全てを経済情勢の安定を強調することに費やした。その後に「習近平のコロナ政策や外交面での国際的孤立、ロシアへの対応などが会議で批判された」との噂が流れた。

 また海外にいる消息筋は、中国国家安全部の内部情報として、中国指導部の政策が調整され、「集団指導制」に回帰したとツイッターした。知人は「多くの人々は習近平に不満を持っているが、言えない。だから習に関する不利な情報は密かに転送されているのだ」と教えてくれた。

 『ウォールストリートジャーナル』(中国語版)も5月16日、「李克強は習近平の影から脱した」との長文の記事を掲載し、李克強が勢いを強めているとの見方を更に増幅させた。

 確かに習近平が2012年11月15日に共産党総書記と党中央軍事委員会主席に就任して以来、政治局常務委員を9人から7人にするなど、権力掌握に腐心してきた。経済は李克強首相が主宰する国務院(内閣)の責務であるはずだが、習近平はわざわざその上に多くの「小組(中国語で人数の少ないグループの意味)」を作った。

 「中央全面深化改革領導(統帥して指導する)小組」、「中央ネット安全と情報化領導小組」、「中央財経領導小組」といった経済関係の小組の責任者は全て習近平である。李克強は肩書だけで経済政策で決定権のない立場に追いやられ、習近平の指示の執行係に降格されたのだと誰でも分かった。

 習近平は反腐敗キャンペーンなどで権力基盤を固め、個人崇拝も復活させた。共産党中央宣伝部の指示で政府系メディアの報道で習近平の顔が出ない日は珍しくなった。

 しかし4月29日の政治局会議の後、李克強や汪洋などの政治局常務委員も、政府系メディアの一面に登場する日が増えている。

△  習近平とは異なる李克強の発言とその伝えられ方

 李克強が、その言動で習近平との違いを示したのは2年前に遡る。2020年5月29日、恒例に従い李克強が中国全国人民代表大会(全人代)に際しての記者会見を行った際、中国の6億人の収入はまだ1か月1000人民元(日本円換算で約1万6千円)だと公言した。それは習近平が一番重視し、誇っていた脱貧困の政策への評価として、相反する発言であった。

 2016年に習近平政権は2020年までに中国の貧困人口をゼロにする5か年計画をうちだした。習氏自身も2013年から9年連続して「新年賀詞(年頭所感)」で脱貧困に言及し、2020年までに中国の農村で貧困人口を無くすとの目標を達成すると繰り返し強調した。

 しかし、習が言っていた脱貧困の基準は一人当たりの平均収入が年4000人民元(日本円換算で約6万4千円)である。だから李の発言は、習が実現したい目標の達成は困難であると言った,あるいは習近平の誇る成果の意義をおとしめたに等しい。

 その後も、李克強による習近平とは異なる言動が続いた。2021年から李克強への国民の好感度は一気に上がり、マスコミへの露出度もわずかながらも増えた。

 李克強が政府系メディアに冷遇されてきた理由は、宣伝部のトップ黄坤明(こう・こんめい、ファン・クンミン)にある。黄は福建省龍岩市長、浙江省杭州市党委員会書記を務めた後、2013年10月、習近平に抜擢され、宣伝部副部長、2017年10月、政治局委員、中央書記処書記、宣伝部部長に上り詰めた。

 まさに“習家軍(習近平派)”ならではのスピード出世だ。黄宣伝部長が李克強よりも習近平に忠誠を示すのも当たり前だろう。これで政府系メディアは全て習近平派に掌握され、李克強は冷遇されている。しかしそれに対抗するかのように、SNSでの李克強の人気は習近平よりはるかに高い。今回の“習降李昇”騒ぎもその状況を如実に物語っている。

 まもなく首相職を2期10年間務めあげることになる李克強は、習近平に対してひたすら我慢する必要もなくなるはずである。その上、ゼロコロナで中国経済が大きなダメージを受けていることで、李克強の腕を発揮すべき時が来た。もう習近平への遠慮は不要だ。

 「李克強派は、第20回党大会でより重要なポストを占めるように動くだろう」との内部情報もあるが、「最近の李克強の大胆な言動も、習近平は黙認せざる得なくなっている」と分析する知人もいる。権力闘争の駆け引きの一端が現れているのだろう。

 中国をいわば北朝鮮化させた習近平派に対して、今後も李克強を筆頭する改革開放派は更なる反撃を強めるだろう。中国での権力闘争の駆け引きは一段と激しくなるものと筆者は見ている。

 ◇     ◇
 
 独自の情報源を持つ中国人ジャーナリスト、林愛華さんに中国の深層レポートの連載をお願いした。
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