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序列トップの外交エリートが、突然畑違いの部門に

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【中国深層レポート(9)】ロシア通の元外交部副部長の異動に映る、中露関係の変化

公開日: 2022/07/19 (ワールド)

楽玉成氏=cc0 楽玉成氏=cc0

林 愛華 (国際ジャーナリスト)

 元中国外交副部長の楽玉成の異動は大きな話題になった。

 去る6月14日、中国国務院が楽玉成の任命通知を公表した。彼の外交副部長の職務を解き、国家ラジオテレビ総局副局長に任命したのだ。

 この人事異動は世間をあっと言わせた。

 楽玉成は1963年6月生まれ、1986年から1990年まで中国外交部ソ連東欧司(日本の局に相当する)の職員になり、1990年から1991年に中国駐ソ連社会主義共和国大使館に勤務した。

 駐ロシア大使館秘書官などを歴任したあと、外交部欧州アジア司処長、駐国連代表団参賛などを経て、2016年から2018年まで中央外事弁公室、中央外事工作委員会弁公室副主任に、2018年からは外交部副部長に昇格した。

 彼の経歴からみると、ずっと外交畑にいたので、今後も外交関係の仕事を続けるだろうと思うのが自然だ。

 そんな中、突然彼は中国国家ラジオテレビ総局副局長に任命されたのである。昇職どころか、むしろ降格されたといえよう。 

 楽氏の異動にはもう一つ不自然な点があった。

 本来彼は三名いる副外交部長の中で、唯一、中共中央委員候補であり、序列も一番であった。シンガポールの「聯合早報」は、王毅外交部長に次ぐ外交部長候補者だと報じた(2022年6月14日付)。実際、彼は中国屈指のロシア通で、ロシア関係を重視する習近平の頼りになるカバン持ちである。習近平とプーチン大統領のパイプ役でもあった。

習時代に変化した中露関係

 欧米などの先進国家からロシアの孤立を際立たせないためにも習近平はプーチン大統領と親密な関係を作る必要があった。

  かつて鄧小平が中露関係に「握手をするが、抱擁しない」と基調を決めたが、習近平はそれを無視し、中露関係はどんどん親密になった。

 2013年から2022年2月まで、テレビ電話方式も含めで習近平とプーチン大統領が全部で38回の会談をした。それも楽氏を初めとした親ロシア派の外交幹部の主導で進められた。

 2018年6月8日、習近平が北京でプーチン大統領に「友誼勲章」を授与し、「プーチン大統領は一番の親友だ」と公言した。

 2019年6月5日には、習近平は八度目のロシア訪問をし、「中露関係は一番いい時期」と持ち上げながら、「国際業務において中露ソリューションをもっと多く提案すべきだ」と強調した。

 2020年12月28日、習近平がプーチン大統領と電話会談で新年の挨拶をし、コロナ禍の大変な年に、中露関係は「ハイレベルの相互信頼と友情を表した」と表明した。

 2021年の12月15日には、習近平とプーチンが同年二度目のテレビ電話会談を行う。「中俄睦邻友好合作条约(中露善隣友好協力条約)」の延長を宣言し、両国関係の質の高い発展の継続を習近平が明言した。

 そして、今年の2月4日に、中露関係が史上最良の時期に入った。

 北京冬季五輪開幕式に当たり、プーチンが習近平と頻繁に会い、長い時間をかけて密談を交わした。政府系マスコミも会談などを取り上げて、両国の親密さを大いに内外にアピールした。

   それでも友好の熱度が十分ではないかのように、楽玉成が外交部副部長としてマスコミの前に現れ、「中露関係は天井がない。終点がない。ガソリンスタンドがあるのみだ」と習近平とプーチン会談の成果を総括したのである(外交部網2022年2月5日付け)。

 国際社会はこれを聞いて騒然となった。アメリカに誇示するための演出であることは明白だったにしても、「天井がない」はないだろう、と。

人事異動は習近平がプーチンと電話会談の前日に

 以上のごとく、北京五輪後、習近平が望んだ通り、中露関係を順調に発展させた楽玉成は年齢的にまた59才で、さらに昇進すると誰が思っていたのである。

 楽玉成の異動が伝えられたのは、そんなタイミングだった。格下げの中国国家ラジオテレビ総局に転任され、しかも局長ではなく、副局長だったのである。

 副部長から副局長へ、しかも何の経験もない分野への異動は何を意味するか?

 中国人であれば、誰も分かるはずだ。日本語にある「窓際族」と同じように中国語には「冷板凳を座る(冷たい椅子に座らせる)」と言う言葉がある。そこまでひどくないにしても、栄進とは言い難い。

 知人から伝え聞いたことによると、楽氏の人事異動には背景がいろいろとあるようだ。

 一説によると、彼はロシアがウクライナを侵略する情報を誤って判断をしたことで、中露関係に天井がないと宣言した。

 しかし、その後、一か月もたたずして、ウクライナ侵略戦争が勃発し、中国政府はまずい立場に立たされた。彼もウクライナはすぐ降伏すると見ていたようだ。しかし、戦争が長引いて、すべてが狂い出した。

 ロシアと共にアメリカが率いる先進国と対抗しようと思った習近平は、ロシアを正面からは支持しにくい中、常にバイデン氏にロシアを支持しないようにと釘を刺され続けた。

 ロシアとの親密さゆえに中国は一層、国際的に孤立させられるはめになったのである。そんな中で楽玉成の責任が問われたのだろう。

 また、楽玉成の異動翌日の6月15日は習近平の誕生日だった。その日にプーチンが習近平に祝いの電話をかけて、二人はまた会談した。

 こういうときこそ、ロシア通の副部長楽玉成が一番必要になる。にもかかわらず、彼の異動はわざわざその前日に通告された。

 そこに見て取れるのは、中国の親ロシア外交方針の変調だと知り合いの中国政治専門家は分析している。
   つまり、わざわざ会談の前に楽玉成の異動を発表することで、もう彼のようなロシア通は必要ないと内外に伝えた、ということだ。一理はあると私は思う。

 中国の親ロシア外交が変化した兆しはもう一つがある。

 6月15日の習氏とプーチンの電話で、中露関係には「天井がない」という文言が消えたのだ。

 習近平は「中露関係は良好な発展の勢いを維持している」とだけ強調した(「外交部網」6月15日付)。国際社会の目を気にしてか、習近平が推し進めた親ロシア路線が修正されたと理解してもよいであろう。

 しかし、それは表だけの変化であり、本音ではないことも見るべきであろう。
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