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早すぎた経済再開 マスク着用はトランプ不利を象徴

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【北丸雄二の「世界の見方」】ストーンの減刑などなりふり構わぬ大統領権限の乱用ぶり

公開日: 2020/07/13 (ワールド)

マスク着用に追い込まれたトランプ=Reuters マスク着用に追い込まれたトランプ=Reuters

 米テキサス州サンアントニオのメソジスト病院は7月10日、「コロナ・パーティー(COVID-19 Party)」に参加した30歳の男性が新型コロナウイルス感染症(novel COronaVIrus Disease 2019=COVID-19)で死亡したと発表した。

 病院医師によると、「コロナ・パーティー」とは若者たちが新型コロナ・ウイルスに感染した者を交えて開くパーティーのことで、ほかの参加者がそのウイルスに感染するかどうかを試す催しだという。

 若者は感染しても重症化しないとか、「コロナは99%無害」と言ったトランプの無根拠演説とかの誤解・誤報のせいもあり、パーティーを肝試しだとしたり、アラバマ州タスカルーサで開かれた大学生たちの「コロナ・パーティー」では、参加者で賭け金を出し合って最初に感染した者がそれを総取りするという趣向まで凝らされていたという。

 今回亡くなった男性は死の床で看護師たちを前に次のように話したという。「どうもぼくは間違いを犯したようだ。新型コロナなんてウソだと思ってた。でもそうじゃなかった」

 同病院では他にもまだ20代30代の重症患者が闘病中で、検査での陽性率は数週間前には5%だったものが現在は22%に跳ね上がっているという。

 11月3日の大統領選挙まであと110日余り。「サン・ベルト」と呼ばれる米国南部州での激戦地は上記のテキサスのほか、フロリダ、アリゾナの3州。この3州での最新世論調査が12日に出た。

 南部州ではコロナ感染が急増していて、7月7〜10日に行われたCBSニュースとYouGoveの共同調査の結果もこれらを背景に、フロリダではバイデン支持が48%でトランプより6ポイント多く、テキサスではトランプ支持の46%にバイデンが45%で肉薄、アリゾナでは両者46%で伯仲という、トランプ優位の前回選挙とは異なる数字が出ている。

 3州とも経済活動が再開していて、それに関してもフロリダで64%、テキサスで61%、アリゾナで60%の登録有権者が、この再開を「早すぎる」と断じている。

 この3州でコロナ感染を「非常に懸念している」という有権者層ではいずれも70%前後という圧倒的多数がバイデン支持。一方でトランプ支持派はやはり大学を出ていない白人層に多く、テキサスで68%(バイデンは24%)、アリゾナで60%(同31%)、フロリダで57%(同31%)。

 しかし女性有権者ではバイデンへ投票するという人はアリゾナ。フロリダともに50%(トランプは42%と37%)、テキサスでも47%対42%でいずれもバイデンに傾く。

 その他の機関の調査でも同様の傾向が窺えるが、特徴的なのはこの3州でトランプへ投票するという人の2/3が「トランプを支持するから」という理由なのに対し、バイデンへの投票者は半分が「トランプが嫌だから」というのが理由な点。

 全米規模ではさらにこの傾向は顕著で、バイデンに投票する人の直接のバイデン支持は35%で、62%が反トランプが動機。一方、トランプへ投票するという人の81%がトランプ支持だからで、反バイデン動機は18%にとどまる。

 アリゾナではバイデン支持者の94%、トランプ支持者の95%までが、大統領選まで110日余りを残してすでに自分の投票行動に変化はないと言い切っている。これが現在のアメリカの分断の固定化をよく象徴していると言えそうだ。

 コロナ禍への対応とBLM(黒人の命だって大切だ)運動への対応の拙さと幼さで、トランプ再選の流れはガラッと変わった。

 就任以来、支持率が一度も過半数に行ったことのない大統領というのも珍しいが、大統領選ではたとえ総得票数で負けても(前回の対クリントン戦と同じく)代議員数で勝って再選を、と目論むトランプは、支持者層の期待通りの「ドナルド・トランプ」を演じて決してマスクを着用してこなかった。

 7月11日にその彼が紺色の生地に大統領の金紋章の付いたマスクを着けて初めてテレビに映ったのは、それだけ状況が(選挙もコロナ禍も)逼迫しているという証左だろう。

 アメリカは、信仰の自由を求めた清教徒たちが英国国教会という権威から逃れて建てた国。自治から始まったので、連邦政府すら要らない、税金さえ払わないという考えの人が今でも多数いる。同様に、権力が変なことをしたら人民が銃を持って立ち向かう権利も保障されている(憲法修正第二条)。これがいまも銃規制が困難な理由。

 つまり「お上」という権力や権威から自由に、自分で考え自分で生きてゆく「自助の精神」が基本。西部開拓はそのように進んだし頼るべき政府も未熟だった。だからとにかく政府がエラそうに個人の生活や信条に介入してくることを嫌う。

 ご存知のように「小さな政府」というのは現在の共和党のモットーの1つ。「アメリカ・ファースト!」を標榜する人たちは同時に「自分ファースト」の独立独歩の人たちだということでもある。

 そんな精神風土の根強い土地で、お上がマスクをしろと言ってくるのがもう「自由の侵害」。そこに、口を隠すのは銀行強盗のやることで立派な男のやることじゃない、とか、コロナなど陰謀だと嘯く輩も出る始末。

 なので冒頭の「コロナ・パーティー」は催され、マスクなしで店に入ろうとして断られては大立ち回りを演じる人まで続出するわけだ。そしてそんな地域の白人たちを支持基盤と頼むトランプもまた、彼らの期待を裏切らぬよう絶対にマスクをしたくなかった──そういうメカニズムだったのである。

 「サン・ベルト」だけでなく前回の勝利のカギを担った「ラスト・ベルト」州でも軒並み「不利」「接戦」の数字が報告されて、トランプ陣営は選挙戦の巻き返しに懸命だ。

 同時に、ロシア疑惑捜査で有罪を認めた元大統領補佐官マイケル・フリンの起訴を司法省を使って取り下げさせたり、果てはトランプの長年のフィクサーだったロジャー・ストーンをも偽証罪などの重罪で禁錮3年4月の収監直前に減刑して放免したりと、まるで「今使わねば後がない」かのような、なりふり構わぬ大統領職権乱用のし放題状態。

 このまま無事に大統領選挙の実施までたどり着けるかさえおぼつかないと不安がる向きも出てきた。

 一方でバイデン陣営は全米でなおも継続するBLM運動を勝機に結びつけようと、女性副大統領候補を「非白人」に絞って選考中だとされる。

 前回指摘した有力候補エイミー・クロブシャーは、ジョージ・フロイドさん殺害警察官のミネソタ州ミネアポリスの検察官だったことでミソが付き、問題視される前に自ら身を引いた。

 これにより、カマラ・ハリス上院議員やオバマ政権当時のスーザン・ライス国連大使、南部ジョージア州アトランタのケイシャ・ランス・ボトムズ市長や同州のステイシー・エイブラムズ元州議会議員らが有力候補となってきた。バイデンは8月初めにこの副大統領候補決定を発表するとしている。

 同時に、前回のクリントン選挙の失敗を繰り返さぬため、今回は若い世代に絶大な人気の左派バーニー・サンダースやエリザベス・ウォーレンという予備選大統領候補の二人の上院議員陣営とも緊密な連絡を取り合い、作業部会を立ち上げてこの3か月にわたって政策のすり合わせを行なってきた。

 結果、気候変動や医療保険制度、教育など6つの分野で110ページの政策文書をまとめ、8月の全国党大会で、事実上の公約である党の政策綱領として発表する。

 さて、そこでさらに追い詰められるトランプ陣営が着々と用意していると言われるのが「オクトーバー・サプライズ(10月の不意打ち)」。

 前回選挙でも最後の最後の10月末にヒラリー・クリントンの私用Eメール問題が再燃して再捜査に持ち込まれたが、今回もそうしたアッと驚く仕掛けが画策されているという。北朝鮮核問題、あるいは中国との貿易交渉での何らかの進展や合意、と推測する向きもあるが、このところトランプの私的代理人として元ニューヨーク市長のルディ・ジュリアーニが陰で動いているのはどうもウクライナ筋らしい。

 とするとバイデンの次男ハンター・バイデンのウクライナ疑惑がまた持ち出されることもあり得る。いずれにしても11月3日の大統領選挙は、史上例を見ない波乱含みであることは間違いない。

北丸 雄二 (ジャーナリスト)

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北丸 雄二(ジャーナリスト)
1993年から東京新聞(中日新聞)ニューヨーク支局長を務め、96年に独立後もそのままニューヨークで著述活動。2018年からは東京に拠点を移し、米国政治ウォッチと日米社会の時事、文化問題を広く比較・論評している。近著に訳書で『LGBTヒストリーブック〜絶対に諦めなかった人々の100年の闘い』(サウザンブックス社)など。
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