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米最高裁判事の死、オバマ指名拒否の共和党が選任急ぐ

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【北丸雄二の「世界の見方」】トランプ指名通れば6対3の保守固定に、判事数増の対抗策も

公開日: 2020/09/22 (ワールド)

 故ギンズバーグ判事=PD 故ギンズバーグ判事=PD

 大統領選まで46日となった日本時間19日午前(米時間18日)にリベラル派の旗手ルース・ベイダー・ギンズバーグ最高裁判事の訃報が飛び込んできた。

 4年半前の2016年2月、オバマ政権最後の年に、保守派だったアントニン・スカリア判事が亡くなった時、共和党上院院内総務のミッチ・マコネルは「選挙の年の後任判事任命は控えるべき」と主張してオバマの指名したメリック・ガーランド判事の承認手続きを拒否した。

 今回もまたその轍を踏むものと直後は誰もが予想した。その同じ人物がよもや前言を翻し、自党の大統領トランプこそが今すぐ後任を指名すべき、と口にするとは思わなかった。かくしてこの後任判事の任命はにわかに大統領選挙の最大の争点の1つ、同時に新たな火種の1つになった。

 マコネルの理屈はこうだ。

 「1880年以来、上院は上院少数派党の大統領が任期最後の年に指名する最高裁判事を承認したことがない。16年2月のスカリア死亡の後のオバマ指名拒否もその例だ。しかし共和党は16年の大統領選挙、18年の中間選挙の2回ともトランプ大統領と一緒に仕事をするという公約の下、上院で多数派党となった。よって有権者の信を受けた多数派党として、今回はトランプの指名受理が当然の仕事である」

 大統領選で不利とされるトランプはこれも支持固めに利用しようと、中絶権の否定を悲願とする福音派取り込みの後任判事を指名する。上院で承認されれば最高裁は6対3で今後数年以上にわたって保守派が主導権を握ることになる。するとたとえバイデンが大統領になっても、様々な政争の果てに裁判に持ち込めばこのコロナ禍の最中であってもオバマケアは撤廃され、妊娠人工中絶は禁止される──。

 しかし、ここで共和党に別の論理が台頭し始めてもきた。つまりもし最高裁がトランプ指名の3人目の判事で6対3の保守体制で固まったら、保守派の政治的理想はそこで保証され、べつにトランプが再選されなくとも、あるいは両院議員選でも共和党に投票しなくて大丈夫だとなって、支持者が投票に行かなくなるのではないか、というものだ。

 トランプの後任指名を受け、それを承認するかどうかの上院審議は通常2カ月ほどかかる。米連邦議会の議員の交代は大統領と同じ1月なので、後任判事の上院承認は選挙は終わっていても旧議員が投票する。大統領選や連邦議会選の結果をにらみながら状況は変わるということ。

 トランプの再選が決まれば最高裁は間違いなく保守派となるが、トランプが負けるとなれば上院共和党は逆にトランプ指名の保守派判事の承認を急ぐ。いずれにしても最高裁の趨勢は強く保守派に固定される。

 しかしそこで、アメリカはもう一度大混乱に陥るはずだ。敗北した大統領が指名した判事を、(ともすればこちらも少数派に転落する)上院共和党が承認してよいのか、と。しかもあの自由と人権の騎手だった『ノートリアスR.B.G.(悪名高きルース・ベイダー・ギンズバーグ)』の後任である。

 人気ラッパーになぞらえた「グッド⇆バッド(善悪逆転)」のこの形容詞の付いた同名ドキュメンタリー映画が公開された2019年、彼女はアメリカのリベラルな若者たちにとって一躍ロックスター並みのヒーローとなった。それは彼女の死後28時間で民主党への献金が一気に9100万ドル(95億円)以上に上ったことでも明らかだ。それを無視するような後任人事を強行するならば、若者たちを中心に、ともするとBLM運動以上に大きな全米規模の猛抗議が勃発する可能性もある──。

 ちなみに大統領選の結果判明が遅れに遅れた場合も(「敗北」となってもそれを認めない伏線として、トランプはすでに何度も郵便投票の不正を主張している)、トランプ共和党はやはり何が何でも後任判事を強行承認するかもしれない。しかもその正当性が争われた場合、それは最終的にR.B.G.が不在の5対3で保守派の最高裁が判断することになるのである。

 さてそこでもし「6対3」で保守に固定してしまった後に、民主党には何ができるのか?

 現在の最高裁判事のうち保守派5人中4人(ロバーツ、アリート、ゴーサッチ、カヴァナー)は選挙において総投票数で負けた大統領(前二者はジョージ・W・ブッシュ、後二者はトランプ)が指名した(大統領は総得票数の直接選挙で決まるのではなく、選挙人獲得数で決まる間接選挙)。在任中に3人の最高裁判事を任命するとなればレーガン以来。そうなると、9人が定員の最高裁判事の過半数(5人)が、総投票数で負けた大統領に任命されたことになる。

 民主党に残される道は、選挙結果が遅れてもとにかくバイデンが勝利し、上院も民主党が取ることだ。そして来年1月の大統領就任後に、最高裁判事の数を増やすのである。

 最高裁判事の数は憲法に規定はなく、過去にも連邦議会の立法によって定員は変更されてきた。したがって民主党が上院・下院を押さえれば、判事定員を現在の9人から12人に増やすことはできる。その場合、バイデンと上院民主党で新たに3人のリベラル判事を任命する。すると最高裁判事は、保守、リベラルが6対6のタイとできる。

 この強行策に正当性はあるか? 実は現在、58%のアメリカ人が選挙人団による間接選挙を廃止して、一般投票による、つまりは全米の総得票数によって大統領を選出する直接選挙に変更することを支持している。この論理で行けば、総得票数で劣った大統領によって指名された最高裁判事たちが政治判断の主導権を握ることに疑問を持つ有権者は多いということだ。

 さて、「私の最大の願いは、新しい大統領が決まるまで、自分が取って代わられないこと」と孫娘に言っていたR.B.G.の最後の思いは叶うのだろうか?

北丸 雄二 (ジャーナリスト)

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北丸 雄二(ジャーナリスト)
1993年から東京新聞(中日新聞)ニューヨーク支局長を務め、96年に独立後もそのままニューヨークで著述活動。2018年からは東京に拠点を移し、米国政治ウォッチと日米社会の時事、文化問題を広く比較・論評している。近著に訳書で『LGBTヒストリーブック〜絶対に諦めなかった人々の100年の闘い』(サウザンブックス社)など。
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