• tw
  • mail

カテゴリー

 ニュースカテゴリー

  • TOP
  • 独自記事
  • コロナ
  • 統一教会
  • 政治
  • ワールド
  • マーケット
  • ビジネス
  • IT/メディア
  • ソサエティ
  • 気象/科学
  • スポーツ/芸術
  • ニュース一覧

TV討論会 罵詈雑言のトランプ 健康不安打ち消したバイデン

あとで読む

【北丸雄二の「世界の見方」】不気味なトランプ発言 投票後の暴動「指令」にも聞こえる

公開日: 2020/09/30 (ワールド)

米大統領選TV討論(2020年9月29日)=Reuters 米大統領選TV討論(2020年9月29日)=Reuters

北丸 雄二 (ジャーナリスト)

 世界が注目の米大統領選第1回TV討論会が米時間29日夜(日本時間30日午前)にオハイオ州クリーブランドから90分にわたって生中継された。

 前回のヒラリー・クリントンvsドナルド・トランプの対決の際は38%の有権者がその討論内容を候補者選択の大きな材料とするとしたが、今回のトランプvsバイデンではその数字は29%にまで低下している。これはとりもなおさず、7割の有権者はすでに投票先をどちらかに決めており、それを変えるつもりはないと宣言しているということだ。

 さて、90分にわたるディベートは、予想通りディベートにはならなかった。トランプは自分の自画自賛をまくしたてただけだし、バイデンはトランプの挑発に乗らないように用意した台詞をそつなく話すことに傾注した。2人が政策論争をすることはなかった。

 では勝者は誰だったか? それは司会者のクリス・ウォレスだ。

 數十回にわたってバイデンの発言にヤジや捨てゼリフや反論で不規則に割り込んでくるトランプに、業を煮やしたウォレスはトランプに対して「この討論会に先立って、2人ともが2分ずつ話をしてその間は互いを邪魔しないということに両陣営とも同意したんです。いいですか?」と最後通牒を切った。

 「いや、それでも」と言葉を継ごうとしたトランプを、ウォレスは「ダメです。邪魔する理由を聞いてるんじゃありません」とピシャリと撥ねつけた。

 こう書いている間にも討論会直後の調査結果が入ってきた。

 英国のネット市場調査会社「YouGov」の調べでは、討論会の勝者はバイデンと答えたのが48%、トランプが41%。これは討論会直近の支持率の数字とほぼ同じまたはその差がやや広がった感じだ。信頼性や優しさ、正直さなどの人柄の印象に関してはバイデンがトランプをそれぞれ10ポイント前後引き離して優位で、トランプは仕事のスタミナでバイデンを5ポイント上回った。

 また、この討論会を聞いてバイデンをより好ましく思うようになったと答えた人は38%、対してトランプは24%。バイデンに失望した人は32%、トランプに失望した人は42%。変わらないと答えたのはバイデン30%、トランプ34%だった。

 ただし、この討論会そのものの印象は、83%の視聴者までもが「Negative(ひどい)」と答え、「Positive(よい)」は17%に止まった。見ていて気分が悪くなった(Annoyed)と言う人が69%もいたのだ。

 そもそも、トランプとバイデンとではこの討論会で目指したものが違っていた。

 以前から言ってきたようにこの選挙は「トランプvsバイデン」というより、「トランプvs反トランプ」の戦いだ。トランプはハナから反トランプ派の切り崩しなどねらっていず、自分の支持者固めだけが戦略(総得票数で破れても、選挙人の数で勝ってヒラリーの時の再現を狙うもの)。

 そのため、今回の討論会で話したことは全てこれまでの選挙集会で繰り返していた自慢と支持者称賛、そしてバイデンへのこき下ろしだけで、新しい目玉政策は出てこなかった。むしろ4年前の対ヒラリー選挙の時の方がメキシコ国境の壁建設やオバマケアの撤廃、パリ協定やTPPからの離脱、法人・富裕減税など、より具体的な政策を示していたくらいだ(ちなみに「壁」の新設はわずか8kmに止まり、メキシコは金を払わず、オバマケアはこのコロナ禍で逆に脚光を浴び辛うじて生き延びている)。

 それが今回は、バイデン相手にただただヒラリーに嫌味と悪口を浴びせたあの手法の再演のみ。それは既得権益へのトリックスター的挑戦者として登場した4年前ならまだしも、アメリカの現在の状況をすべて引き受けなければならない現職大統領としてははなはだ情けない。

 とはいえ、トランプ本人とその支持者たちにはそれは大した問題ではない。4年前、共和党の予備選段階から討論会に罵詈雑言合戦を持ち込んだのは、プロレス興行主としても人気を博したトランプ本人だからだ。

 そればかりか、シャーロッツビルなどでの白人至上主義者の台頭と暴力に関して、ウォレスに「バイデンにBLMの暴動騒ぎで左派を批判しろと言うなら、あなたも白人至上主義者やミリシア団体を批判するか?」と詰め寄られても、彼らを明確に非難する代わりにトランプが言ったのは「Stand back and stand by!(後ろに下がって準備していろ!)」というものだった。

 これはまるで、来るべき「時」のための「指令」だ。それはどういう「時」なのか、何を含意しているのか?

 対するバイデンは6〜10%ポイントの支持率優位を確定させるべく、いまだ投票先を決めかねている中間浮動票を引き寄せる戦略だった。バイデンに対する「反トランプ」派の懸念は、77歳という彼の高齢さだ。大統領就任時に78歳というのは史上最高齢の大統領ということ。ネット上には記憶障害を見せたり呂律が回らずしどろもどろに呆然自失となるバイデンの「ディープフェイク(捏造)動画」が多数バラまかれ、それを信じる有権者も少なくない。

 今回の討論会で、バイデンは心配された「老い」や「衰え」を見せなかった。連邦所得税をわずか750ドル(8万円)しか収めていなかったと報道されたトランプ(討論会ではこれをフェイクニュースとは言わなかった)への、もっと厳しい切り返しを求める反トランプ派には物足りなかったろうが、まずは精神的肉体的に「大丈夫だ」という印象を与えたことは「反トランプ」派の結集には大きな安心要素だったと思われる。

 いずれにしても2人の討論が噛み合わなかったのは事実だ。経済に関しても法人税はトランプが下げた21%から28%に引き上げると言うバイデンに、トランプはそんなことをしたら経済再生できないと言うだけで、互いに言いっ放しで終わってしまった。

 象徴的な場面を挙げる。

 バイデンは20万人以上の死者を出したトランプのコロナ対策に厳しく切り込んだが、「もっと賢くならないとさらに死者が増える」と言うバイデンに、トランプは「『賢い』なんて言葉を使うな。あんたは出身のデラウェア州立大学の名前も思い出せず、クラスでも成績はビリだったんじゃないか」と突っ込んだ。納税記録だけでなく、自分が学業成績も公開していないことは棚に上げて。

 バイデンの健康問題への不安が一応払拭されて、選挙は今後はトランプが不正が起きると喧伝する郵便投票の行方に焦点が移る。そこでは投票結果のもつれ込みによって、トランプがいま指名している最高裁判事候補エイミー・コニー・バレットの動向が大きく関係してくる。勝敗が最高裁によって決められることになることも大いに予想されるからだ。その時、どんな混乱あるいは暴動が待っているのか、

 先ほど挙げた、右派の支持者たちに対するトランプの「Stand back and stand by!(今は後ろに下がって準備していろ!)」という「指令」が、不気味な響きを持つのはそのためだ。
続報リクエストマイリストに追加

以下の記事がお勧めです

  • 【北丸雄二の「世界の見方」】 米最高裁判事の死、オバマ指名拒否の共和党が選任急ぐ

  • 【北丸雄二の「世界の見方」】 共和に不利な郵便投票、トランプ派との郵政長官に意図的サボり疑惑

  • 北丸 雄二のバックナンバー

  • 洋上風力 三菱商事の全勝で公募ルールを改悪

  • 買い手側キャンセル案件にみる「買い支え」のカラクリ

  • 菅前首相 副総理兼脱炭素担当兼経産相で入閣へ

  • 台湾封鎖、2週間で天然ガス在庫切れ 大停電も

  • プロフィール
  • 最近の投稿
avator
北丸 雄二(ジャーナリスト)
1993年から東京新聞(中日新聞)ニューヨーク支局長を務め、96年に独立後もそのままニューヨークで著述活動。2018年からは東京に拠点を移し、米国政治ウォッチと日米社会の時事、文化問題を広く比較・論評している。近著に訳書で『LGBTヒストリーブック〜絶対に諦めなかった人々の100年の闘い』(サウザンブックス社)など。
avator
北丸 雄二(ジャーナリスト) の 最新の記事(全て見る)
  • 【北丸雄二の「世界の見方」】SNSだけでないトランプ・ボイコット 恩赦と弾劾が焦点に -- 2021年1月14日
  • 【北丸雄二の「世界の見方」】閣僚人事は気心しれた「オバマ政権で見た顔」ばかり -- 2020年12月17日
  • 【北丸雄二の「世界の見方」】トランプ会見の中継中止など風当たり強まる -- 2020年11月7日
Tweet
LINEで送る

メニュー

    文字サイズ:

  • 小
  • 中
  • 大
ソクラとは 編集長プロフィール 利用案内 著作権について FAQ 利用規約 プライバシーポリシー 特定商取引法に基づく表示 メーキングソクラ お問い合わせ お知らせ一覧 コラムニストプロフィール

    文字サイズ:

  • 小
  • 中
  • 大
  • 一覧表示を切替
  • ソクラとは
  • 編集長プロフィール
  • 利用案内
  • 著作権について
  • メーキングソクラ
  • お知らせ一覧
  • FAQ
  • 利用規約
  • プライバシーポリシー
  • 特定商取引法に基づく表示
  • お問い合わせ
  • コラムニストプロフィール

Copyright © News Socra, Ltd. All rights reserved