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ワクチン接種の遅延国 インド、ブラジル、トルコで感染爆発 

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【医学者の眼】ワクチンが変異種にまったく効かないはずないが

公開日: 2021/04/28 (ワールド)

Reuters Reuters

中島 正治 (医師、医学博士、元厚労省局長)

 私も医療関係者ということで、先日第1回目の新型コロナワクチン接種を受けました。

 接種時の痛みはインフルワクチンに比べても弱く、幸いアナフィラキシーショックも起こしませんでしたが、聞いていた通りその日の夕方から翌日にかけては接種部の筋肉痛が生じました。しかしそれも手が挙がらないというほどではなく、3日目には消失していました。高齢者への接種も始まっていますが、医療関係者でもまだ3割程度しか終わっていないということで、速やかに進むことを期待しています。

 ワクチン接種が広がる前に、我が国でも第4波の流行が始まってしまいました。

 感染拡大は大阪、兵庫等で顕著で、東京はやや遅れて上昇してきており、過去の最大値を上回りそうな勢いです。

 特に関西の医療提供体制は既にひっ迫しており、重症患者の適切な医療機関への受け入れが事実上困難となり、中軽症者対象の医療機関や在宅等で治療する他なく、その間に不幸な転帰をとる方も出ているようです。

 こうしたことから、まん延防止等重点措置では対応できないとして3回目の緊急事態宣言が発出されました。

 世界全体の状況を見ると、本年2月頃に一旦治まりかけた新規患者数が3月初め頃から再度上昇し始め、これまでよりやや急なペースで既に前回のピークを超える約90万人/日の勢いとなっています。本年1月のピークの頃にはまだワクチンの接種がごく少数であったものが、最近では全世界で約10億人に既に接種されたにもかかわらず、この急激な増加となっています。

 人口対比で接種が進んでいるイスラエルや英国などは大きな波とはなっていませんが、インド、ブラジル、トルコなどは急激に拡大しています。

 特にインドでの上昇はまさに倍々ゲームのような指数関数的増加を続けており、36万人/日という数字は米国での1日当り最大数をも上回りました。そして実態はさらに多いとも言われています。

 こうしたことから、インドでは病床が不足して入院できずに亡くなる人が多数発生しているだけでなく、入院しても吸入する酸素までを含む医療物資が不足し、十分な治療ができないところが生じているようです。

 インドの急激な増加の原因は、一旦治まりかけた本年2月頃の規制の緩みや地方選挙、宗教行事等による人の密集に加え、今回の当初は英国変異株(B.1.1.7)が大部分だったものが、最近では、2重変異とも呼ばれる株等が増加したためとの見方が有力です。

 我が国では変異株と言えばN501Yというものが中心ですが、その他に英国株、ブラジル株、南アフリカ株などもあり、どう違うのかなど分かり難いのではないでしょうか。

 この変異株問題は今後も出てくると思うので、少し説明したいと思います。

 コロナウイルスは約3万文字(4種類の塩基の繰返し)からなるRNAという遺伝物質が殻をかぶってできています。これが人の体の中で複製され、ばら撒かれていくのですが、複製する際に1カ月に2カ所ほど間違いが生じることが分かっています。この間違いがウイルスの存続に不都合であればそのウイルスはそこで終わりますが、それ以外の場合はウイルスの中に間違いを持ったまま増えていきます。そういう間違いがいくつか重なるとRNAに基づいて作られるウイルスの殻の(スパイク)蛋白質にも変化が生じることがあります。

 こういった蛋白の変化のうち、感染性や毒力などに影響を与えるものが見つかってきており、その一つがN501Yです。 記号の意味は、この蛋白の501番目のアミノ酸であるN(アスパラギン)がY(チロシン)に置き換わった変異株であることを意味しています。N501Y自体は、その他の変異の有無については何も言っていません。

 一方、英国株、南アフリカ株などと呼ばれているのは、それぞれウイルス進化の系統によってB.1.1.7、B.1.351などともよばれており、それぞれの国で流行した主な株を指しており、何れも複数の変異の組合せを持っています。

 また、VOC(懸念される変異株)*、VOI(注目すべき変異株)*という用語も出てきますが、これらはその時点において、VOC*株がより深刻であることを示しています。

 要するに、株に関する用語の使い方がある意味で錯綜していて分かり難くなっているのです。

 ところで、インドの急激な増加については当初は英国株が大部分だったものが、最近はB.1.617系統の2重変異株、さらには3重変異株が増えてきているとの報告もあります。

 この2重、3重というのはE484Q、L452Rなどの変異を同時に持つという事で、これによって感染性や病原性が影響をうける可能性があるということが分かってきました。

 さらに、この変異株はワクチン接種や一旦感染した人のその後の免疫の働きを弱める(免疫をすり抜ける)場合もあるようで、変異株に効果がある新たなワクチンが必要になる可能性もあるようです。しかし、現在のワクチンが全く効果がなくなるわけではなく、重症化予防などある程度の効果は期待できるようですが、まだよく分かっていません。

 いずれにせよ、インドの爆発的な流行が今後どうなっていくのかは慎重に注目していく必要があります。確実な評価ができていない段階で、過剰に恐れる必要はないとはいえ、知見が十分得られ、ワクチンも含め体制が整うまでは、我々は感染状況に応じてソーシャルディスタンスや人の動きの抑制など、基本的な感染防御を繰り返さざるを得ません。

 変異株については、特別のPCR検査や全遺伝子解析をしないと分かりませんので、その対応はより難しくなります。変異株とその臨床データの収集分析体制の整備強化、変異株にも効果のあるワクチンや確実な治療法、簡便な検査法などの早期の開発が期待されます。

 多くの専門家の予想を超えて短期間でこれだけの変異株を生じたという事は、今後も更なる脅威となる変異株の出現が考えられます。こうしたものに迅速に対応するためにも、また、今後の医療のあり方が大きくゲノムベースにパラダイムが変わる可能性があることも踏まえれば、この機会に日本が遅れをとっていると言われるゲノム研究と開発に対して特段の充実と強化が求められます。
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中島 正治(医師、医学博士、元厚労省局長)
1951年生。76年東大医学部卒。外科診療、医用工学研究を経て、86年厚生省入省。医政局医事課長、大臣官房審議官(医政局、保険局)、健康局長で06年退官。同年、社会保険診療報酬支払基金理事、12年3月まで同特別医療顧問。診療、研究ばかりか行政の経験がある医師はめずらしい。
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