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スペイン前国王がUAEに逃亡 サウジから不正に資金

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【欧州から】民主化導いた名君が、王政廃止の議論も

公開日: 2020/08/24 (ワールド)

CC BY ファンカルロス1世=CC BY /Irekia

茶野 道夫 (ウィーン在住コンサルタント)

 2020年8月3日、スペインの前国王フアンカルロス1世が、国外へ退去した。当初、行先は明らかにされなかったが、その後アラブ首長国連邦に滞在していることが明らかとなった。フアンカルロス1世前国王は当地に永久に滞在し、スペインへは戻らない方針とのことである。

 前国王がスペインを離れた理由は、サウジアラビア国王からの1億ドルの資金の支払いを、前国王が受益者になっているパナマ籍の財団が受け取ったことが、不当なコミッションの受領に当たらないか、スペインの最高検察庁が捜査を開始したためである。捜査結果次第では、前国王が起訴される可能性がある。

 フアンカルロス1世は、独裁者フランコ元帥に後継者として指名されて、フランコ元帥の死後、スペイン国王として即位した。即位後フランコ元帥の遺志に従ず、新憲法を制定しスペインを民主的な立憲君主制の国に移行させた。今日スペインが、民主国家としてEUの重要なメンバーとなったのは彼の貢献によるものである。

 新憲法制定後、軍事クーデターが起きたとき、フアンカルロス1世は民主体制の維持を軍の波乱分子に呼びかけ、クーデターを収めた。こうしたことから国の内外で名君との評判が高まった。

 しかし齢を重ねるにつれ名君の誉れを傷つけるような行動を取るようになった。ユーロ危機がスペインを襲った際、スペインはEUの支援を受けたが、支援条件を満たすため厳しい緊縮財政の実施を迫られた。この結果、多くの失業者が生まれた。

 そのさなか、フアンカルロス1世はアフリカに象狩に出かけ負傷した。このため、多くの国民の批判にさらされた。その後、フアンカルロス1世は自発的に退位し、息子のフェリペ6世に国王の地位を譲った。

 スペインは法治国家である。スペイン憲法の規定によれば、現国王を起訴することは認められていないが、王族やその配偶者を起訴することは差し支えない。現に現国王の姉の夫が公金横領で起訴され有罪判決を受けて服役中である。フアンカルロス1世も、そのような運命をたどる可能性があった。

 スペインでは、王制の維持について国民のコンセンサスがあるとは言えない。筆者はスペイン住んだことがあるが、スペイン人から、外国から来た王様の起こした外国での戦争のために豊かなスペインの富を費消され、国が貧しくなったとの意見をよく聞かされた。

 フアンカルロス1世の祖父アルフォンソ13世も、スペインが共和制の樹立を決めたため国外に亡命した。アルフォンソ13世の亡命後、フアンカルロス1世の即位まで、スペインには国王が不在で、この間スペイン内戦が勃発し、その結果フランコ元帥が独裁政治を行うこととなった。

 今回のフアンカルロス1世の国外退去発表後、政権政党の社会労働党と連立を組む左翼政党Podemosの党首は、フアンカルロス1世の国外退去を恥ずべき国外逃亡と非難し、王制見直しの議論を本格的に行う構えを示した。

 またスペインからの独立を希望しているカタルーニャ州議会は、王制を否定しカタルーニャ共和国を樹立するとの議決を行った。フアンカルロス1世の国外退去の決定を前に、サンチェス首相は、現国王フェリペ6世とともに、フアンカルロス1世と話し合ったと伝えられている。

 最高検察庁が捜査を開始している被疑者のフアンカルロス1世の国外退去を、現首相が容認したのは腑に落ちない。だが、フアンカルロス1世が国内にとどまり起訴され裁判にかけられ有罪にでもなれば、カタルーニャ州の独立の動きに拍車ががかかるだけでなく、アルフォンソ13世の亡命後のように国論が割れ、最悪の場合、スペイン内戦の再来を招きかねない可能性があった。

 このため、フアンカルロス1世を国外へ退去させ、穏便に現体制の維持を図ったものとみられる。そのせいか、国外退去を認めたサンチェスを批判する声はほとんど聞かれない。

 名君、晩節を大いに汚したと言わざるを得ない。非常に残念な出来事である。
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茶野 道夫(ウィーン在住コンサルタント)
日系金融機関のウイーン駐在代表を定年退職後、不動産投資コンサルタント。日系金融機関のウイーン駐在代表をつとめた後、定年退職。ウイーンで、不動産投資コンサルタント。英、独、仏、西、伊、露語に通じ、在欧経験は30年を超えた。英国、スペインにも勤務。
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