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米中衝突「巻き込まれ」回避を 日本外交、深まる同盟リスク 

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【深読み時事鼎談(1)】米中対立下の日本の針路

公開日: 2021/01/31 (政治, ワールド)

Reuters Reuters

 米国大統領がトランプ氏からバイデン氏に交代し、世界が米中関係の行方に固唾をのむ。その中で日本はどうあるべきか。米駐在経験のある2人の記者とアジアに詳しい大手企業役員に展望を語ってもらった。

▽「守ってくれる」は幻想に

記者A:中国で習近平国家主席の独裁が固まっていく中、米国はトランプ政権の4年間で対中関係の緊張を深めた。その間、日本はトランプべったりの場当たり外交を続けてきたように感じる。国際協調を掲げるバイデン政権でも米中の覇権争いが続くといわれるが、日本はどう振舞うべきなのか。

役員:日本の外交は日米同盟という大枠の維持に気を取られ、思考停止の状態が続いているように思う。ビジネスの世界にいて不安なのは、政府が日本の弱点を自覚した外交を行っていないことだ。震災やコロナ禍など国家的な危機が頻発する時代に浮かび上がってくるのは、日本のエネルギーと食料の自給率の低さ。
これに朝鮮半島有事や米中対立による台湾海峡での有事の可能性を加味すれば自給率向上は最優先課題だが、今の政治のアジェンダから外れているようにみえる。

記者A:自給率向上というとグローバル化に逆行するようにもみえるが。

役員:グローバル化の時代は展開が早い。食料やエネルギーだけでなく、どこかに過度な依存をすることはビジネスでもリスクが大きい。日本企業は一時、中国の安い労働力に依存した生産体制を築いたが、いまはコストが急激に上がり分散を迫られている。
エネルギーや食料も同じだ。そのベースになるのは多角的な自主外交。安全保障面でも米国が世界の警察官でなくなるというトレンドはバイデン政権になっても変わらない。その中で日米同盟一辺倒という戦後外交の継続はメリットよりもデメリットの方が目立ってきている。

記者A:日米同盟の基軸は安全保障面もさることながら、自由と民主主義という共通の価値観がおおもとにあった。しかし衰退する米国にもはや大きな理念を掲げ続ける余力は乏しい。日本が従来通りの米国一辺倒でいいのかという不安はこれからもっと高まるだろう。今の指摘は、そうした従来型の理念を超えてもっと複眼的な外交が必要という趣旨だが。

記者B:同感だ。米国が日本をこれまでと同様のパートナーとして処遇するかは疑問だ。将来的にはコストのかかる日米安保の廃棄もあり得ると私は思っている。日本外交の最大の課題は米中の軍事的衝突に巻き込まれないことだ。
米中は経済的に依存関係にあるから軍事衝突はないという指摘もあるが、両国は経済的不利益を度外視しても軍事的優位にこだわる軍事大国であることを忘れるべきではない。少なくとも局地的な軍事紛争はいつでも起こり得る。
さらに米国の国力の衰えや内政の混乱を考えると、米国はどんどんドライになる。同盟さえ堅持すれば日本を守ってくれるという幻想は捨てたほうがいいだろう。

記者A:その文脈で言えば集団的自衛権の行使容認は、巻き込まれなくていい米中の紛争に巻き込まれるリスクを抱え込んだのではないか。そもそもが安全保障コストを下げたい米国からの長年の要請に安倍政権が応えたもので、日本が主体的に選択した政策ではない。
東アジアの緊張が高まる中で「日米同盟の強化」というと何となく安心感を呼ぶが、日米が一体化することによるリスクにも冷静に目を向けるべきだろう。
 
▽プライドより実利の外交

記者B:日本にとって大事なのはどのような国とも敵対関係をつくらないこと。その意味では欧州や韓国との関係深化が重要だ。

記者A:韓国とは徴用工、慰安婦など問題などが多いが。

韓国の文大統領=Reuters

役員:文在寅政権が内政のためにやっていることにムキになっても仕方がない。安倍政権下の強硬な対応は、日本国内のナショナリスト向けという意味では文政権と同じレベルだ。つまらないプライドを捨てないと長期的には国益を損なう。実利の外交に立ち返るべきだ。

記者B:竹島や尖閣諸島の問題もそうだ。相手の挑発に乗らず争点化させないこと、お互いの国内世論をあおらないこと。
たとえば、2010年の尖閣諸島での中国漁船の海上保安庁巡視船との衝突事件のようなことが起これば、日本国内のナショナリズムが刺激されて一気に嫌中に傾きかねない。こうした紛争は小さいものでも起こさない周到さが大切。5手先を読むような関係構築が必要だ。

記者A:日米同盟に頼らず、多元的な平和外交に移行するには国内的に相当の反発があるだろう。政治的な基盤が強い政権でないとできない。

役員:全体の6割を占める無党派層、投票に行かない層に標的を絞って働きかけることだ。今はコアの自民支持層とコアのリベラル層という両極の発信力ばかりが目立つが、マジョリティーは眠っている層。この層が何を求めているかを突き詰めて働きかけることこそが政治の使命だろう。

記者B:安っぽいナショナリズムに自身のアイデンティティーを託す人たちは一定程度いる。彼らからは多元的な平和外交は日本の弱腰に映るだろう。ただ米国社会をみていると、台湾海峡や朝鮮半島有事が絵空事ではないと思う。
いくらバイデン新大統領が融和を呼び掛けても米国内の分断は容易に収まらない。そうした場合、往々にして起きがちなのが“共通の敵”をつくって強硬な外交を展開したり地域紛争を仕掛けることだ。外に敵を作る戦略は2022年2月の北京冬季五輪以降は中国も取るかもしれない。
仮に米中が一触即発の事態になれば米軍基地のある日本が標的になりかねない。そうした危機への備えという現実的な課題を丁寧に説明していくことが必要だと思う。コロナ禍や大震災でも、危機が来てからでは遅いことを私たちは学んだのだから。

記者A:日本は大きな旗を掲げて外交を大転換できる国柄ではない。まずは日米同盟一辺倒ではないことを示す個別の政策転換をやることだ。例えば集団的自衛権の歯止めを明確にすること。あるいは日米地位協定の改定、核拡散防止条約へのコミットを深めること。
これまでタブーだったことに挑むことで、中国を含めたアジア諸国の日本観も変化するだろうし、一つの成功体験をつくれば日本社会の空気もガラッと変わる。日本外交が自立へと歩み出せば、米国が対中強硬策を思いとどまる抑止効果にもなるはずだ。

記者B:日米安保を定義しなおすことが必要だが、日本の方から持ち出してもおそらくうまくいかない。在日米軍費用の日本側負担交渉に絡めて、基地の返還を結果的に実現していくなどタイミングを捉えた交渉で日米安保が変質したという形にすることが現実的ではないか。

▽国際機関の復権を

記者A:中国との関係はどうか。

役員:先ほども言ったが、経済界では中国市場のデカップリングの動きがある。米企業は2000年代後半から、日本企業はここ3-4年の間に中国市場と微妙に距離を置きだしている。だがそれが国際政治の中で中国外しにつながるようだと危険だ。
あくまで中国を国際秩序の枠組みの中に入れて関与していく。経済関係で距離ができても、政治家がそれと歩調を合わせて中国を孤立させてはいけない。

記者B:米国では逆にトランプ政権の中国排除政策が民間経済にも影響を及ぼしている。

記者A:米中対立と並行して進んでいるのが国際機関の地盤沈下だ。トランプ政権の時代になって国際貿易機関(WTO)や国際保健機関(WHO)を軽視する姿勢が強まった。バイデン氏は国際協調を掲げるが、もともと米国は国際機関軽視の傾向が強い。中国の覇権的な台頭を制御していくには国際機関のプレゼンスを高めていくことが大事だ。ここには日本が関与できる余地がある。

記者B:中国は、米国の政権移行期をとらえて、トランプ政権が距離を置いてきた環太平洋パートナーシップ協定(TPP)への参加を表明している。日本は参加に慎重な米国に対し、中国をてこに参加に誘い、逆に中国には参加を条件に「開国」を迫る交渉術が試される。
中国がTPP参加を狙うのは、既存の国際機関と違って参加国が限られ、自らが主導権を取りやすいからだろう。そうした思惑をけん制するためにも、日本が中国をマルチの場に引き込んでいく努力が必要だ。

記者A:そのためには日本が米国一辺倒でないことを行動で示していくべきだろう。米国にはかつてのように日本の自立を頭から否定する余力はない。一歩一歩実績を積み上げてアジアでの信頼を高めていくことだ。
(了)
参加者プロフィール
役員:大手製造業取締役。インド、中国など海外駐在歴が長く、アジアのビジネス事情に詳しい。1959年生まれ。
記者A:フリーライター。通信社でニューヨーク駐在、財務、農水省取材を経験。1958年生まれ。
記者B:元新聞記者でマクロ経済、金融に精通。ロンドン、ニューヨークに駐在。1961年生まれ。

ニュースソクラ編集部

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