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バイデノミクスとは 4年2兆ドルの巨額財政

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【経済着眼】党内左派と共和党右派の板ばさみも

公開日: 2020/11/06 (ワールド)

Reuters Reuters

 バイデン氏が大統領選挙で過半数を獲得する見通しが強まってきた。ただ、トランプ大統領が数州に再集計を要請したほか、連邦裁判所にも不正を提訴すると息巻いているいるため、そう簡単に決まらない可能性が高い。しかし、バイデン氏はいちはやく、政策検討チームを発足させた。

 少し気が早いかもしれないが、バイデン大統領が誕生した時の経済施策を占いたい。まずは全米で20万人以上の死者を出しているコロナウィルスの感染拡大というパンデミックに取り組むことだ。コロナ禍で失業者数は高止まり、所得不平等は拡大している。トランプ減税で潤ったのは大企業と富裕層に限られる。老朽化が激しい道路、港湾、空港、学校などのインフラ整備も大きな課題である。

 パンデミックからの経済復興でバイデン氏が期しているのはフランクリン・D・ルーズベルト(FDR)大統領が1930年代の大恐慌からの復興を期した“ニューディール”政策の再来である。救済すべきは貧困層やマイナリティーであり、その資金は企業・富裕層には増税を行って調達する方針だ。

 バイデン氏の経済政策の公約をみてみると、無理もないことであるが、中道左派に属するバイデン氏としてはかなり左傾化している。覚えておられるように、民主党の大統領選予備選では、社会主義者と言ってもおかしくないバーニー・サンダース上院議員やウォールストリートから敵視されているジャネット・ウォーレン上院議員などが前半で活躍、バイデン氏を苦しめた。民主党の路線自体が、貧困層の増大や所得格差の拡大を反映して左傾化しているのである。

 さらに、世界最大の感染者数、死者数を記録した米国でのコロナ禍は、大胆な財政支出を求める声が強まっていることも影響を及ぼしている。例えば、国際通貨基金(IMF)や世銀は、かつては財政健全化と政府債務の抑制という政策提言を繰り返してきたが、いまやパンデミックの克服を優先するまでは政府債務の増加もやむを得ないと180度姿勢を転換している。

 さらにFRBも大統領選で7月から民主・共和党間で財政支出の拡大を巡る議論が止まってしまったことに憂慮を示している。

 新型コロナ感染の対策は、バイデン氏が大統領に就任して最初の、そして最大の注目される政策対応となろう。バイデン氏はPCRテストならびにコロナで入院した際の費用をすべて無料化する、コロナ感染者となった場合には勤労者を有給休暇扱いにする、などの施策を打ち出している。

 長期的には全米国民をオバマケアの下でコロナ感染を含めるような法改正を実施するとしている。コロナ禍の下で、米国の伝統に反する政府による強制介入を支持する声が拡がっていることもバイデン氏のプランを後押ししよう。しかし、コロナ対策で最大の違いは、トランプが時としてファウチ国立感染症研究所長などを攻撃したのと異なり、バイデンは公衆感染の専門家に政策対応を委ねようとしていることであろう。

 バイデン氏のスローガンである“Build Back Better”(よりよい社会を取り戻そう)”Made in all of America“(すべて米国製で)を実現すべく、大統領一期目の4年間で総額2兆ドル規模の財政支出を行うと表明している。エコノミストの見通しでは、10年間で10兆ドル規模に達すると見通している。世論調査によれば、バイデン氏が掲げた2兆ドルの経済プログラムに対して国民の2/3が賛意を示しているようだ。

 内容的には、公共インフラ投資、気候変動、クリーンエネルギー向け投資を飛躍的に増大させるほか、教育、医療制度の改革も公約している。具体的には公共交通網ならびにブロードバンドアクセス網の整備や空港、鉄道、学校建設の拡大などを目指す、としている。

 トランプ大統領が脱退したパリ協定にも再加入して気候変動対策にも力を入れる。2050年までに炭素排出ゼロを目指すために、クリーンエネルギー基準を満たす電気事業者に税控除などの税制優遇措置を講じるほか、太陽光発電、風力発電など再生可能エネルギーへの転換を促す。

 さらに排出ガス低減のため、電気自動車(EV)の普及を目指し、全米に50万ヶ所の充電施設を設置するほか、EVへの買い替え促進奨励金も配布する、などの政策を打ち出している。

 産業政策としては、政府調達に米国製品を優先して4,000億ドルを振り向けること、ならびに米国企業の研究・開発(R&D)、電気自動車(EV)、新通信規格である5G、AI(人口知能)の開発支援にも3,000億ドルを支出する計画だ。

 さらに今後10年間に貧困層、育児、高齢化対策費として総額7,750億ドルを支出する。子供の育成に対する支援としては、保育園の無償化、低所得層向けに1世帯8,000ドルの税額控除を実施するほか、貧困層対策として最低賃金を7.25ドルから15ドルに倍増させる提案もおこなっている。

 バイデン氏は貿易政策については多くを語っていない。トランプ大統領の中国製品に対する高関税賦課に対しては、一般の労働者層を傷つける一方で大企業を守る政策だ、と激しい非難を浴びせて、「米国労働者を擁護する貿易戦略」を掲げている。ただ、実際には、中国に対してはトランプ大統領と同様に強硬な姿勢を続けるものとみられる。

 もっとも、バイデン氏は「中国に対しては同盟国と歩調を合わせて国際的な圧力をかける道を選択する」としている。トランプ大統領と違い、同盟国のドイツやカナダまで厳しく対立することは避け、国際社会が一丸となって中国の貿易問題、さらには人権問題、南シナ海への海洋進出などを厳しく批判するものと思われる。

 このようなバイデン氏の経済プランは、10年前であれば、民主党員ですら想像しなかった意欲的な内容である。それだけに緊縮財政と赤字削減を通じた「小さな政府」をモットーとする共和党からは大盤振る舞いをストップさせようという勢いが強まろう。自分たちがトランプ政権時代に大幅減税や所得補償で大盤振る舞いをしたことは棚上げするであろう。

 すでにテッド・クルーズ上院議員らタカ派からはこれ以上の債務増加には反対の意思が示されている。反対に左傾化傾向を強める民主党内からは支出拡大の声がやまない。バイデン氏が仮にラリー・サマーズやティム・ガイトナー元財務長官のような穏健中道左派の政策を狙っても左傾化した民主党内からの激しい抵抗にあうであろう。

 いずれにしてもバイデン氏は経済分野に強みがある訳ではない。同氏がオバマ大統領に副大統領候補として選任されたのは、オバマ氏が経験の足りない外交政策や議会工作といった点で上院議員の経歴が長いバイデン氏が長けていたからだ。経済政策の立案はおそらく経済の専門家に委ねられよう。

 したがって、経済政策を占うには、誰が財務長官やCEA委員長に指名されるかも鍵を握ることになろう。

 さらに注意を要するのは、いわゆる「ブルー・ウェーブ」(Blue Wave、共和党のカラーである赤色に対して民主党の青色が席巻する、との意)と言われたホワイトハウス、上院・下院の議会すべてを民主党が占めるという大方の予想が崩れそうなことだ。キャピタルゲイン課税の引き上げなどの税制改革や共和党に比べて大型の景気対策がそのまま実現する可能性は弱まった、とみられる。

 その分、景気対策としてはFRBへの依存度が高まりそうだ。FRBによる量的緩和拡大など、金融政策の動向に注目が集まろう。

俵 一郎 (国際金融専門家)

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