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ドラギ政権が発足、EU基金てこに伊経済再生に挑む

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【経済着眼】国民的人気で反EU二大政党も取り込み、挙国一致内閣に

公開日: 2021/02/15 (ワールド)

ドラギ伊首相=Reuters ドラギ伊首相=Reuters

 イタリアのマッタレッラ大統領から首相として組閣を指示されたドラギ前ECB総裁は、2月13日(土)に組閣にこぎつけて正式に首相に就任することとなった。左派から右派までほぼ全政党の合意を得て「挙国一致内閣」を組成できることになった。

 世論調査ではドラギ氏はコンテ前首相を抜き、最も人気のある「政治家」となり、国民の支持率は7割を超えている。

 ドラギ首相は、最優先の課題として、ワクチンの早期接種などを通じて蔓延するコロナ感染の拡大防止に取り組むことだ。そのうえで、EU基金より割り当てられた2,000億ユーロ(25兆円)という同国GDP比10%にもあたる資金を使って疲弊したイタリア経済の再生にも取り組むことである。

 組閣に当たっては、イタリア銀行(中央銀行)の元理事であるフランコ氏を経済相に据えたほか、ボーダフォーンの役員であるコラーオ氏が技術相に就任するなどなどテクノラート内閣として10閣僚を政界以外から採用した。

 コンテ前内閣の閣僚も多くが再任された。最大政党「五つ星運動」(下院629議席中191議席)の党首であるマイオ氏が引き続き外相に留まるなど、25閣僚のうち15閣僚が連立参加を表明した各政党から選出された。

 ベルルスコーニ元首相率いる右派フォルツア・イタリア(同99議席)も10年ぶりに政権の一翼を担い3ポストを確保した。中道左派の民主党、右翼のサルベーニ党首率いる「同盟」(同124議席)も3閣僚を送り込み、レンツィ元首相率いるイタリア・ビバ(同28議席)、左翼の「自由と平等」(12議席)が各1閣僚のポストを得た。

 ドラギ首相は最近30年でチャンピ、ディーニ(ともにイタリア銀行総裁を歴任)、モンティー(欧州委員会イタリア代表委員)に次ぐ4回目のテクノクラート内閣を組成することとなった。ただ、前3回と大きく違うのは上記の通り、政党を協力させるために閣僚の6割が政界出身となったことだ。

 ドラギ氏が右派から左派まで幅広く支持を集めたのは、EUの中でも最も信頼度の高いイタリア人であり、EUにも大きな影響力を及ぼせると政界から期待されているからだ。EU基金のうち、20億ユーロという巨額の支出がイタリアに割り当てられており、これを自己の政治基盤の強化に使いたいと手ぐすね引いているのがイタリアの政界である。

 ドラギ氏が国内政治の世界に飛び込んだのはわずか2週間ほど前であるにもかかわらず、ドラギ氏のイタリア経済・社会に及ぼす影響を好感して債券市場ではイタリア国債の独国債に対するスプレッドは5年間で最低のレベルとなった。

 ドラギ氏が連立内閣組閣までの足取りを振り返ると、民主党(下院629議席中89議席)やレンツィ元首相率いるイタリア・ビバなどの支持をまず得た。その後、いったんは幹部が連立参加を拒否すると明言した「五つ星運動」が党員に対するオンライン投票を通じて6割の支持を集めたドラギ氏に一転して投票することを決めた。

 「同盟」は2018年6月に「五つ星運動」と連立してコンテ首相を擁立した。その後、野に降りてからは「五つ星運動と連立を組むことはあり得ない」と公言していた。しかし、その言を翻して、あっさりと手を組むことにもなった。

 「同盟」の周辺からは来年任期満了を迎えるマッタレッラ大統領の後任にドラギ氏を就けるべきだ、との声が出ている。勘ぐれば、ドラギ氏に解散・総選挙を打たせて世論支持率が30%を超えるトップに位置する「同盟」が筆頭政党に躍り出る機をうかがっているともみられる。

 例えば、サルビーニ党首の「同盟」と「五つ星運動」は、ともに反EUでユーロ離脱すら表明していた。しかし、その彼らがEUを救ったECB総裁であったドラギ氏と連立を組むのであるから驚きだ。ご都合主義と言ってよい。

 過去1週間余りにおよぶドラギ氏の連立政権構想をみるかぎり、本来であればイタリアの多くの政党にとって政党の綱領を大きく変更せざるを得ないはずだが、そういう動きはない。

 「五つ星運動」と「同盟」という二大政党の支持を得たドラギ氏は議会の圧倒的多数をバックとして、政権をスタートすることになった。しかし、上記の通り、各党は同床異夢であり、国難に臨んで一致協力する、といったスタンスにあるわけではない。

 ドラギ首相の国民的人気を利用したい、さらにEUに対する影響力で2,000億ユーロに達するEU基金を引っ張り出させてバラマキ政治により党勢拡大に利用したい、と虎視眈々と狙っているに過ぎない。

 ドラギ首相もそのことは十分知りつつ、イタリアの低成長、労働生産性の低さを矯正するべく、合理的な経済政策、構造改革を遂行しようと意思を固めているに違いない。

 ドラギ氏はECBでは独仏のような大国ではなく弱小イタリア出身の総裁として当初は指導力を懸念されていた。しかし、その政治力でメルケル独首相のバックアップを得て「できることは何でもする(whatever it takes)」という中央銀行の矩(のり)を超える行動が可能になった。

 イタリア首相としても「2,000億ユーロのEU基金を引っ張り出すのは自分の信用にかかっている」と各党を脅しすかして、言うことを聞かせるくらいの政治力を発揮することを期待したい。

俵 一郎 (国際金融専門家)

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