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インドネシア、高成長への軌道に乗れない悩み

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【経済着眼】大衆に人気のジョコウィ大統領。だが、政治基盤が弱すぎる

公開日: 2015/06/02 (ワールド)

ジョコウィ大統領=Reuters ジョコウィ大統領=Reuters

俵 一郎 (国際金融専門家)

 ジョコ・ウィドド(通称ジョコウィ)大統領が昨年10月に就任して8ヶ月あまりが経った。庶民の出で木材関係の事業を起こして成功、ジャカルタ特別州知事としても貧困対策、インフラ整備などで実績を挙げてきた国民的人気を背景に第7代大統領に当選した。
 清新なイメージと弱者保護に熱心であることから「インドネシアのオバマ」とも呼ばれている。ただ議会では与党勢力が過半数に達せず議会対策に苦労している。
 また、所属する闘争民主党内でも党首のメガワディ元大統領が「ジョコウィは党の産物(You are a product of the party)」と党大会で公言するようにメガワティの影響力が強く、ジョコウィはメガワティの操り人形と批判する声もある。大衆人気とは裏腹に政治的には脆弱な基盤に置かれている。

 ジャカルタの熱気と喧騒に接すればこの国の成長力に驚嘆する。インドネシアの一人当たりGDPは3,500ドルと日本の高度成長期初期の水準まで上昇した。日本ではこの所得水準に達して、モータリゼーションが始まり、家、車など守るべき資産も出来たことから保険契約も飛躍的に増えていった。日本の自動車メーカーや金融業がインドネシアに熱い視線を注ぐのも当然だ。

 しかし、インドネシアの今年第1四半期の実質成長率は4.7%と低い前期(5.0%)をさらに下回った。前期比では2期連続のマイナス成長となる。若い国であるインドネシアでは労働市場に毎年230万人の若者が参入するため5%前後の成長では失業が増えることになりかねない。
 景気減速の主因は資源大国インドネシアの輸出不振にある。錫、パーム油(ともに世界一)、天然ゴム、石炭などの輸出は世界有数であり、中国による大量買付けと資源価格の高騰がインドネシア経済を潤してきた。
 しかし、いわゆる資源の“スーパーサイクル”の終焉、中国の景気停滞で価格・量の両面で今やその逆回転が起きている。
るぴあ
 経常収支は2011年に15年ぶりに赤字に転落したあともGDP比3%を超える高水準が続く。通貨ルピアも1ドル=13,000ルピア台に乗せるルピア安となっている。企業業績の低迷から株価もさえない展開となっている。今年1月のガソリン補助金の廃止と通貨安からインフレ率も7%近い。
 為替、株価を経済運営の通信簿とすると、ジョコウィの経済政策は、大衆受けを狙った小気味の良い表現にもかかわらず、政策効果の実体を伴っていないという厳しい評価も目に付くようになった。
 1997年のアジア通貨危機でインドネシアが標的とされた海外からの資金流入に頼るという構造も変化なく、国債保有者の4割は海外勢である。海外勢の評価が落ちれば、米国の利上げと絡んで資金流出に見舞われよう。

 ジョコウィ大統領は、中長期的にはアジア金融危機前の7~8%の実質成長を目指していると伝えられる。そのためにインドネシア経済の構造を資源輸出依存から輸入代替を中心とする製造業の育成へと舵を切るという明確な戦略を打ち出してきた。
 ガソリン補助金を撤廃することで浮いた分を財源に充てて脆弱なインフラ基盤の強化を図るという方針を打ち出した。このため、インフラ関連予算は前年比5割増とインドネシア史上最大の増加となった。投資承認のワンストップ化(投資調整庁に各省庁にまたがる許認可権を一本化、22省庁のスタッフを同庁に駐在させる)を通じて発電所建設などの承認にかかる日数を大幅に削減した。
 ネックとなる電力、道路、港湾などのインフラを整備して製造業が力を増せばインドネシア経済は栄えるという戦略だ。

 確かにインドネシアは2億5千万という世界第4の人口に加えて、月250ドル程度という相対的な低賃金、平均年齢29歳という若さ、豊富な資源という製造業の発展をもたらす条件は揃っている。しかし、むしろ製造業のシェアが落ちているのは、蔓延する腐敗、汚職に示されるビジネス環境の悪さ、外国企業の意欲を削ぎかねない保護主義、などにある。
 世銀によるビジネス環境調査では全世界189か国中120位とシンガポール(第1位)タイ(第18位)などの近隣諸国に遠く及ばない。国内産業保護のために外国企業による投資禁止リストには石油掘削(但し海底油田は除く)とe-commerceも加わった。また悪名高き未加工鉱石の輸出禁止令により、例えば、ボーキサイトの輸出は年間5,500万トンから50万トンへと99%の減少をみた。

 部品の現地調達義務(ローカルコンテンツ)も自動車、小売、IT関係などで厳しい。例えばタブレットやスマートフォーンの現地調達比率が40%に引き上げられる。
 もちろん、国内のテクノロジー産業の振興を企てているのだが、ヤミ市場における規制逃れの海外品取引を増やすだけだ、と批判されている。元々、工業化を推進したスカルノ時代からインドネシアで経済自由主義が定着したことはない。
 ジョコウィ大統領が劣勢に立つ議会は伝統的に保護主義的政策を奉じている。この背景には「外国人はインドネシアの資源を略奪し続けてきた」「外国資本がインドネシア人を豊かにしたことはない」という思い込みがある。97年のアジア金融危機も外国資本に対する懐疑を強めさせた。

 ジョコウィ大統領の手によって経済は高成長を実現できるのであろうか。
 一つの障壁は政治的基盤の強化を図らねば自分の思い通りの政策が打てないことだ。野党第一党のゴルカル党が与党勢力に加わる動きもあるようだが、何せ複雑怪奇のインドネシア政界であるだけに楽観はできない。
 
 またジョコウィ自身が貧困層の医療・教育無料化などの社会政策で地方政治家時代に人気を得たように大衆を支持基盤としているため、経済政策においても大衆迎合的な保護主義的色彩の強い政策を打ち出している。市場機能を重視する、外資導入を図り大胆に自国産業保護優先の政策を見直していくことが出来るのかが今、問われている。

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