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英国 合意なきEU離脱の危機再び

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【経済着眼】英国首相、EUとの合意離脱合意を国内法で修正へ  

公開日: 2020/09/14 (ワールド)

ボリス・ジョンソン英首相=CC  byThinkLondon ボリス・ジョンソン英首相=CC  byThinkLondon

俵 一郎 (国際金融専門家)

 英国のEU離脱を巡って、ジョンソン首相が昨年10月、EUとの合意取り決めにおける「北アイルランド関連の条項(プロトコール)」を修正した国内法を議会に提出した。

 いったん両者で合意した離脱合意書を修正するのは国際法違反にあたるとして、EU首脳は言うに及ばず、英国保守党の首相経験者などの政界やメディアなどから大きな反発を招いている。

 英国のEU離脱は今年12月末であり、残り3か月を切った秒読みの段階にある。次回EU首脳会議(10月15日)前の実務者会議も残り二回を残すのみとなった。英国とEUの自由貿易協定(FTA)締結が難航を続けている。

 こうした中で、ジョンソン首相は、国際法に違反するとみられるEUとの合意内容の上書き(overwrite)をおこなった法案提出に踏み切った。ジョンソン首相が得意とする瀬戸際作戦で、EUを恫喝して何らかの譲歩を引き出そうとする作戦ではないか、との穿った見方もある。ただ、このまま行けば提出法案は与党保守党が多数を占める下院を通過してしまう恐れが大きい。

 昨年10月の英国・EU間の離脱合意案では、アイルランドの和平維持のために南北アイルランドの間に物理的国境を置かないという取扱いに最も苦労したと言われる。今回の合意案の上書きはまさにその北アイルランド関係に集中している。

 ジョンソン首相は「EUはFTA締結後も競争政策、補助金、環境問題に関するEU規制を英国に呑ませようとしている」と反発してきた。今回の北アイルランドプロトコールの国内法上での修正についても「外国の勢力がわが国を破壊するのを防ぐために必要なセーフティーネットを設ける措置」と説明している。

 ジョンソン政権による同プロトコール(第10条関係)の修正は次のような内容となっている。

 第一にはEUの補助金規制を「北アイルランドにのみ適用する」と明記した。たとえば、離脱合意案では英国政府が北アイルランド企業に補助金を提供する場合はEUに逐一その内容を通知することになっている。

 しかし、プロトコールの文面からみて「北アイルランド以外の英国企業(スコットランド、ウエールズ、イングランド所在企業)にも適用される不安が残るので「北アイルランド企業のみに適用」と上書きした。

 ジョンソン政権の杞憂かもしれないが、一方でEUが国家補助金を使って競争力を向上させるのはアンフェア―(中国の動きを見れば明らか)として、神経をとがらせてきた。ジョンソン首相はEUとのFTA交渉の際も「補助金の規制は主権国家の英国に及ぶものではない」と反発してきた。

 第二には貿易面で、(1)北アイルランド企業が北アイルランド以外の英国企業(スコットランド、ウエールズ、イングランド所在企業)に出荷する際に求められる「輸出申告書」作成を免除すると変更するとともに、

 (2)逆に北アイルランド企業に出荷する際に求められる関税還付の対象品目をEUと英国で協議、となっていたのを英国のみで決定する、と変更するものである。

 (1)については北アイルランドから英国領への物資販売は輸出申告書で縛っておき、物理的国境の置かれていない南アイルランドを経由して北アイルランドに出荷された物資が他の英国地域に流れるのを阻止することを狙っていた。

 しかし、これでは北アイルランド企業が同じ英国領へのビジネスにおいてフリーなアクセスを妨げられるとして離脱強硬派が主張していた輸出申告書を免除することを国内法で明記した。

 (2)については、たとえば、イングランド地域から北アイルランド企業に出荷する際に、先に関税を徴収して同じ英国領である北アイルランドで消費される物品のみ、あとで関税を還付することになっている。一方で、南北アイルランドで物理的な国境管理のおこなわれないことを利用してイングランド→北アイルランド→アイルランド共和国(南アイルランド)→EU他地域、と関税賦課を逃れてEUに輸出することも考えられる。

 このため、予め、北アイルランドでEUに持ち込まれる恐れが高い物品をEUと英国の合同委員会で協議して決定することになっていた。これを英国政府の判断のみで決定すると修正したものである。

 保守党内の対EU強硬派(約50名)は英国の国家主権を守り、EU規制を国内に及ぼさない意味でも今回のジョンソン首相の考え方を支持している。しかし、昨年10月にEUとの間で合意した事項を修正するのは国際法に抵触する振舞いと非難する声の方が英国内外を問わず圧倒的に大きい。

 EUのバルニエ首席交渉官などEU側は当然強硬な態度で法案取り下げを主張している。さもなくば、英国の合意違反を欧州司法裁判所に訴えることやFTAの協議打ち切りなどの強硬手段に訴える可能性すら指摘している。

 英国国内でもメージャー、メイ元首相といった保守党の首相経験者やフィナンシャルタイムス紙などのメディアは、国際法違反の行為は英国が築いてきた国際的な信頼を失うものと一斉に批判している。

 さらには米国のペロシ下院議長が「英国政府の国際法無視の態度を見るにつけ、信頼性の乏しい英国政府と米国との自由貿協定(FTA)の締結は難しかろう」と非難している。

 ジョンソン首相は「10月15日の欧州首脳会議までにFTA合意ができない場合、FTA締結をあきらめて移行期間を速やかに終了する」と強気の姿勢を示している。英国のEUからの合意なき離脱の可能性が強まっていると言えよう。
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