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新型コロナ 大きな第二波が欧州経済を襲う

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【経済着眼】積極的な財政支援に動くEUと各国

公開日: 2020/10/26 (ワールド, コロナ(国外))

イタリアの病院=Reuters イタリアの病院=Reuters

俵 一郎:経済着眼 (国際金融専門家)

 欧州で新型コロナの感染第二波が深刻となっており、感染拡大のペースは第一波のピークである春先(3~4月)よりも速くなっている。ちなみに欧州の一日当たり感染者数は10月22日に初めて20万人を越えた。10万人を越えたのが10月12日であるのでわずか10日で感染者数が倍増したことになる。欧州大陸ではスペインに続いてフランスで感染者数が累計で100万人を越えた。スペインのサンチェス首相は実際の感染者数はその100万人という公式統計の3倍になる300万人を越えている公算が強い、と発言している。オランダでも医療逼迫が深刻となり、春先に続いて患者のドイツ移送が始まっている。

 こうした中、欧州各国では夜間外出禁止やレストラン・バーの夜間営業禁止などの措置が取られている。例えば、パリでは午後9時から翌朝6時までの外出を禁止とした。ただ、感染者の急増にもかかわらず、各国とも第一波の感染ピークであった3~4月のような都市封鎖(ロックダウン)には慎重である。医学的には今回の感染者数の増加がPCR検査数を増やす中で、重症化する確率の低い若者が多く含まれている、致死率が春先に比べて低いこと、などが背景にある。そして何よりもロックダウンがもたらす致命的な経済的ダメージを避けたいとの思惑があるためだ。

 それでも欧州の景気は確実に悪化しそうだ。EUの実質成長率は今年第2四半期(4~6月)が前期比-11.4%とリーマンショック時すら上回る景気後退に直面した。第3四半期(7~9月)はロックダウンの解除による生産の再開、外出が増えたことによる個人消費の回復などから消費の回復で大きく持ち直したとみられる。しかし、第二波が到来した第4四半期(10~12月)は再びマイナス成長に戻ってしまいそうだ。欧州景気は第2四半期を底に回復経路をたどるとみられたが、残念ながら第4四半期以降に景気の二番底をつけることになりそうだ。

 先日発表された、ユーロ圏のPMI(製造業購買担当者指数)は9月の50.4から10月には49.4と景気の改善・悪化の境目となる50を割り込んだ。製造業(自動車、一般機械など)は緩やかな回復を続けている一方、でサービス業は大きく落ち込んでいる。サービス業のPMIは9月の48から10月には5か月ぶりの低水準となる46.2となった。

 このように欧州経済はコロナ禍の長期化によってサービス業と製造業との間の二極分化が拡がっている。サービス業は営業停止や外出禁止の影響を受けたバー・レストランをはじめ、世界屈指の観光国であるスペイン、フランスなどを中心にホテル、レジャー産業などが軒並み苦境に陥っている。

 有力エコノミストの予測によれば、第4四半期のGDP(前期比)はスペインが-1.3%、フランスが-1.1%のマイナス成長となると予測している。このサービス産業の落ち込みを製造業の好調が相殺するという構図となっている。この構図はドイツで顕著である。ドイツの8月の製造業受注は前月比+4.5%、同製造業PMIは59.3を記録した。同PMIのうち、自動車、工作機械などの輸出受注は、今年唯一のプラス成長国となりそうな中国向け輸出の急増などに支えられて2010年5月以来の高水準となった。

 サービス業を中心に景気が後退してマイナス成長になった場合、財政金融政策の追加的な措置に期待がかかる。欧州中央銀行(ECB)は10月29日に理事会を控えているが、緊急購入プログラムで国債、6月に社債の購入額上限を3月に発足した時の7,500億ユーロから1兆3,500億ドルに引き上げたので、少なくとも12月までは動かない、というのが大方の予想である。元々、マイナス金利の世界に踏み込み、上記のような大規模な量的緩和も実施しているので追加的な緩和政策があっても大きな刺激効果は望めない。

 こうなると、財政刺激策に期待がかかる。しかし、EUでは、もともと財政赤字にあえいでいた国が多いうえ、新型コロナ感染拡大の下で、所得補償や家賃補助などの緊急対策によって一段と赤字が拡大している。

 欧州委員会によると、ユーロ圏の今年の財政赤字は9,760億ユーロ、GDP比で8.9%に達する見通しである。赤字額は昨年度の10倍に達しており、マーストリヒト条約で定められた財政赤字の上限であるGDP比3%を大きく越えている。ちなみにリーマンショックの際(2010年)でもGDP比6.6%に過ぎなかった。この大幅な財政赤字がギリシャ、ポルトガルなど南欧を中心とした欧州金融危機につながったのは記憶に新しいところである。

 幸い、ECBによるマイナス金利、13,5000億ユーロに及ぶ量的緩和の下で、多くの国で借り入れコストが記録的な低水準になっているため、財政赤字拡大や債務の急増を危ぶむ声はほとんどない。ECBのラガルド総裁も「財政金融政策の支援は“財政の崖”(財政支出を急にやめて景気が悪化する)を避けるために必要な限り、続けなくてはならない」としている。ベストセラーとなった「国家は破綻する-金融危機の800年」(原題は“This time is different”)の著者で、財政健全化を訴えてきたカーメン・ラインハート世銀チーフエコノミストも「我々はまず(コロナとの)戦いに勝たねばならない。その費用をどのように払っていくかを考えるのはそのあとだ」と財政支出を容認していく姿勢に転換している。

 EUは北欧、オランダなどの強硬な反対で紛糾の末、7月にイタリア、スペインなどの困窮している南欧諸国の財政支援を目的に7,500億ユーロの復興基金スキームを可決している。EUならびに各国政府は、今回も必要とあればバー、レストランや観光業などへの所得補償などを中心とした財政支援策に出るであろう。
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