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中国ショックは起きるか

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【経済着眼】銀行への資本注入で経済恐慌は回避へ

公開日: 2015/11/18 (ワールド)

Reuters Reuters

俵 一郎 (国際金融専門家)

 中国の景気悪化を懸念する声が高まっている。確かに第二四半期の実質GDPは前年比6.9%と9年ぶりに7%の大台を割り込んだ。IMFの見通しでも今年が6.8%、来年が6.3%と成長率は減速していく見通しだ。

 鉱工業生産を見てもかつての二桁の伸びが10月には前年比5.6%にまで低下している。10月の貿易統計を見ても輸出が前年比-6.9%、輸入が同-18.8%となっている。とくに今年に入って二桁の減少が続く輸入の低迷は中国の生産活動低迷を如実に表している。国際商品市況の急落をもたらし、資源国を中心に世界経済に大打撃を与えている。

 中国経済の停滞については数多くの論評がでているので、ここでは過去の日本経済との比較も踏まえて中国経済の現状分析をしてみたい。まず、第一に元々、中国は、農業部門の余剰労働力を都市労働者として低賃金で雇用するという形で工業の急速な発展を遂げてきた。日本が1960年代に多くの農村の中卒、高卒者が集団就職で上京してきて工場労働者として日本の高度成長を支えてきたのと全く同じ動きである。

 中国でも2000年代後半に農業部門の余剰労働力が払底して、いわゆる「ルイスの転換点」を迎えたとみられる。こうなると、急速に賃金の上昇が起こるだけでなく、産業構造の高度化を図らないと成長がおぼつかない「中所得国の罠」にはまる。大きな目で眺めれば中国はこの局面に突入している。

 加えて2012年には労働力人口(15-59歳)が初めて減少した。日本は70年代初にルイスの転換点を過ぎたが、その後も最近まで労働力人口が増えるという「人口のボーナス」を享受した。これに対して、中国はあっという間にルイスの転換点を過ぎ人口ボーナスも受け取れなくなった。これでは10%台の成長から7%さらには6%台に落ちるのも自然な動きである。

 習近平総書記は政権の座に就いた時点で高度成長のピークを過ぎた経済運営を委ねられたのである。為政者として経済の高度成長に代わり、中華民族の栄光を掲げて南シナ海への進出などを図り国威発揚に努めたのも当然であろう。

 ただ、中国経済には進化の兆しもあるのが第二のポイントだ。急速に経済のサービス化が進んでいることである。国民総生産に占めるサービス業のウエイトは今年50%を越える。これはプラス材料である。

 こうした動きも日本経済の辿ってきた道と同じである。中国の景気指標をみると、上記のように鉱工業生産や貿易指標が弱い一方でアリババなどのインターネット販売の急増や我が国に訪れる中国人観光客の「爆買い」もこのような消費意欲の高い都市におけるサービス業の発展を反映している。小売売上高は11.0%(10月前年比)と底堅い。

 中国というと低廉な労働力を駆使した「世界の工場」というイメージであるが、いまや先進国並みに小売、建設、不動産などサービス業が経済を支える構図となっている。製造業部門という「古い中国」(Old China)の不振を「新しい中国」(New China)の勃興が埋めているわけだ。

 第三に、果たして中国経済はバブルの崩壊にあうのかどうかだ。日本は高度成長とその後の経済のサービス化の過程を経て順調に成長して1980年代にはJapan as Number One(世界一の日本)と称賛されるに至った。しかし、それも束の間の出来事で、結局、バブルの崩壊で今に至るデフレ、低成長の苦境から脱せないでいる。

 中国が同じ道を辿るかどうかだ。リーマンショック後の総額4兆元にのぼる景気対策は鉄鋼、セメント、石油化学などの広範な産業分野で過剰設備を産み出してきた。不動産の開発投資も地方政府の収入源として貴重であったため、先を争って開発ブームが巻き起こった。中国における総債務のGDP比は10年余りの間に110%から230%にまで急速に拡大した。

 日本の80年代から90年代初のバブル期をしのぐ急膨張である。地方債の発行解禁による金利負担低減などの施策を打ち出しているとはいえ、民間・国営企業の社債償還の不履行が発生しているように過剰債務の下で資金繰り悪化を来している先が増えている。最終的には日本と同様に銀行の不良資産累増に至るのであろう。対応を間違えば、日本同様にクラッシュする可能性はある。

 このような状況下、中国当局は上海株価の暴落もあって相次ぐ政策金利の引き下げを通じる金利低下を図った。一年もの貸出金利は昨年末の5.6%から10月末には4.35%まで低下した。しかし、財政面では高速鉄道の敷設計画(8000億元)などインフラ整備資金を投入しているとはいえ、規模としては限定的である。

 過去の大盤振る舞いが過剰設備を生んだことや投資から消費主導の経済構造転換を図っているので、財政刺激策に頼って総需要を喚起しようという意図は目下のところ希薄だ。

 総括すると、中国の低中成長は人口動態から見れば当然のことで驚くようなことではない。また経済のサービス化も進展しているので投資が投資を生むといったダイナミックさは消えうせても安定感が加わり、実体経済面で経済恐慌を来すことはあるまい。ただ世界第二の経済大国の成長率低下は世界経済に大きな影響を及ぼし続ける。

 懸念されるのは債務の累増による金融面の不均衡が金融危機を起こす事態だ。それを防ぐために表沙汰になるかどうかはともかく潤沢な外貨準備と余裕のある財政資金を通じて銀行への資本注入が行われるだろう。

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