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ブラジル大統領 コロナ拡大で来年の再選危うい 

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【経済着眼】頼みの軍部がソッポ 人気のルーラ元大統領が出馬か

公開日: 2021/04/09 (ワールド)

ボルソナーロ氏=Senado Federal-Attribution ボルソナーロ氏=Senado Federal-Attribution

俵 一郎 (国際金融専門家)

 3月30日、ブラジル史上初となる陸軍、海軍、空軍の三軍の最高司令官が同時に辞任を表明した。前日の29日のアセベット国防相解任に抗議したものだ。ボルサナーロ大統領自身、陸軍士官学校出身で元陸軍大尉と軍の出身であり、このところコロナウィルス感染の拡大から支持率が低下する中で軍部の協力を求めていた。

 2019年1月に就任したボルサナーロ大統領は、コロナウィルスの感染拡大に対して、経済活動を最優先すべきとして、州知事が権限を持つ都市封鎖(ロックダウン)に強硬に反対を続け、「軍隊を派遣してでも阻む」と脅しをかけてきた経緯がある。

 ブラジルでは1964年から20年近くの長きに亘って軍政が敷かれてきた反動として、軍人は憲法遵守の精神を叩き込まれている。大臣や将軍たちは憲法遵守の精神から「軍は政府機構の一部である」(アセベット国防相)と言い切り、同大統領からの協力要請を拒否したものとみられる。

 世界最悪と言われるパンデミックの第二波に直面して、ボルサナーロ大統領からの離反を鮮明にしたのは軍部だけでなく、経済界も効果的な政府の行動を要求する文書をたたきつけた。

 いまやボルサナーロ大統領はパンデミックに対して野放図な姿勢が世界最悪の感染を生んでしまった責任を問われている。さらに汚職事件で裁判中であったルーラ元大統領が釈放されて来年の選挙でボルサナーロ政権に挑む可能性も出てきた(後述)。

 同大統領は世界の指導者の中でパンデミックに対して最も懐疑的な一人であった。マスクをつけることを拒み続け、パンデミックは「軽い風邪のようなもの」「男らしく臨め。感染するのは運命だ。」と言い張ってきた。米国のトランプ前大統領と科学的でない対応は双璧であった。

 抜け目のないポピュリストでもある同大統領は昨年の感染ピーク時にもマスクをしないで大衆の中に入って握手をするなど「男らしさ」を見せつけた。ただトランプ大統領と同じく昨年7月には新型コロナに感染した。「日頃から運動を心掛けているので抵抗力がある」という言葉通りに早期に回復したのではあるが。

 2020年のGDPは、-6.1%と既往最悪のマイナス成長となったが、新型コロナ対策として6,000億レアル(GDP比9%)におよぶ財政支出にも助けられて国際機関やエコノミストらの見通しに比べれば、マイルドなものとなった。

 月額600レアル(約1万円)の所得補償を約2,000万人の下層所得者に配布する政策が経済的な困難を和らげるのに相応の効果を上げた。死者数増加のペースが落ち始め、やがて高原状態となった。さらに20年7~9月期以降、GDPがプラス成長に転じたため、一時的には同大統領は賭けに勝ったと思われた時期もあった。 

 しかし、昨年11月以降、感染率は再び上昇に転じ、死者数も急速に増加し始めた。地球の反対側にあるブラジルでは北半球とは逆さまに夏シーズン入りし、2月央には有名なリオのカーニバルの季節を迎えた。

 しかし、季節的に感染率が落ちると思われた、その2月央に死亡率は第一波の水準を抜き去った。3月下旬以降は1日あたり3000人と最高記録を塗り替えた。その後も改善は見られず、依然として世界最悪水準にあり、一日あたり死者数(4月7日現在)は4,195人と断トツで世界のトップを走っている(第二位は、米国の915人)。パンデミック発生以降の累計死亡者数も33.6万人と米国(55.6万人)に次ぐ水準となっている。

 年を挟んで日本にも伝染してきたブラジル変異株と呼ばれる新型ウィルスがアマゾン川流域にあるアマゾナス州の州都であるマナウスで今年初めに発見された。ブラジル国内から他の中南米諸国さらには世界中に伝播を続けている。感染力が従来型に比べて1.6~2.2倍もあると言われている。

 ブラジル変異株の急速な拡大はブラジルの医療制度を危機的状況に貶めている。このままいくと、高水準で知られるブラジルの医療制度が崩壊に直面する可能性も出てきた。

 ワクチン接種も遅く、3月27日までに全人口の7%が一回目の接種を終わったに過ぎない。全人口に対する接種率でみてもイスラエルの61%、英国の47%、米国の32%などと比べると全く遅々として進んでいない。

 ボルサナーロ政権下でワクチンの陣頭指揮を執るべき保険省は組織的混乱をきたしている。コロナ対策を巡る衝突などで大臣が解任されてパンデミック発生以来4人目となるのだからやむを得ない側面もある。しかし、識者からは「保健省は何をやっても全く計画性に欠けている」と強く批判されている。

 たしかに保健省は昨年12月からワクチン普及キャンペーンを始めたものの、十分な水準の注射器すら確保できずにいる。保健省では今年中に5億6,200万人分のワクチンを契約したと豪語、ブラジルの全人口(2億1,300万人)を考えると一人2回のワクチンを確保しているはずだった。

 ブラジル国民の間では都市封鎖とその効果についての見方は分かれる。ブラジルではファベーラと呼ばれる世界最大の貧民窟を持つなど貧困層が多い。生計費を稼ぐためには外出せざるを得ない。

 彼らに対する給付金支出をもっと寛大に行えばそれを防ぐことができる。しかし、ブラジルの政府債務はGDP比90%と新興国の中では高水準に達しているため、ボルサナーロ大統領も否定的だ。

 さらに悪いことにインフレが高進しており、2月の消費者物価は前年比+5.2%に上昇しており、特に食料品価格の急騰は貧困層の生活を一段と苦しいものに追いやっている。ブラジル国民は物の値段が「ボロソナーロ」(ポルトガル語で「高い」)と大統領の名前をもじって揶揄している。

 インフレ高進を背景にブラジル中央銀行も3月17日に5年半ぶりに政策金利を2%から0.75%引き上げて2.75%としたうえ、次回会合で今回と同程度の利上げを行うと予告している。本来はコロナ禍では先進国のように成長促進政策を採るべきではあるが、インフレ抑制を優先せざるを得ない苦しさがある。

 ボルサナーロ大統領はブラジル経済の一段の悪化、医療崩壊の可能性の双方に直面している。これだけでも十分に大統領選での再選が危ぶまれるところだ。さらに、ブラジルの最も有名な政治家であるルーラ元大統領が来年の大統領選に出馬する可能性が出てきた。

 連邦最高裁から一審、二審における汚職事件の有罪判決を一時的に無効とされたためだ。世論調査によると、もし今でも人気の高いルーラ氏が出馬可能となれば、来年10月の大統領選でボルサナーロ氏を打ち破る公算は強まっている。 

 コロナ感染による死者数の急増と大統領選での不利な予想を前にしてボルサナーロ大統領は、政策面で新味を出す必要性に迫られている。最近では公衆の前でマスクを着けて現われ、テレビ出演ではワクチンの重要性に触れるなど、これまでの姿勢を180度方向転換したようにも見える。

 また、コロナウィルス対策のタスクフォースを設けたほか、これまでの強烈なトーンを修正して温和な話しぶりも演じるようになった。ソーシャルディスタンスやロックダウンなどを嫌悪してコロナ感染を拡大させたという議会からの弾劾リスクを回避する必要性も感じているようだ。しかし、コロナ感染の拡大が止まらない限り、大統領選再選のバーは益々高くなりそうである。
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