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【脱炭素】石油確保が使命のIEA 化石燃料停止を勧告

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【経済着眼】IEA(国際エネルギー機構)が180度転換 ここまで来た脱炭素

公開日: 2021/06/01 (ワールド)

Reuters Reuters

 IEA(国際エネルギー機構)では、5月中旬に「産業革命以降、上昇した気温を1.5度引き下げる」「そのために2050年までにカーボン・ニュートラル(温暖化ガスの排出ゼロ)を実現する」との地球温暖化に関するパリ協定を実現するためのレポートを発表した。この中で、各国政府、エネルギー企業に対して「新規の石炭・石油開発を今年から停止すべきだ」との勧告を提示した。

 IEAが1974年に創設された当時は、石油消費国が第一次オイルショックからの立ち直りを模索していた最中であった。当時のIEAの責務は如何にして世界の石油供給を充分にかつ円滑に増やしていけるかにあった。

 ひるがえってIEAは最近では気候変動の運動家などから2050年にカーボン・ゼロを達成するためのロード・マップ作りをなおざりにしている、と厳しい批判を受け続けてきた。ほぼ半世紀後、IEAは西側諸国への石油供給の安定からカーボン・ゼロへ向けてのシナリオ作りへと大きな路線転換を図ってきた。

 IEAでは化石燃料の消費を劇的に減らす研究投資、インフラ整備に2030年までに毎年5兆ドル(約550兆円)という投資の増加が必要としている。電力におけるクリーンエネルギーへの100%転換、自動車のEV化推進などの巨額の投資である。なお、IEAではこの大規模投資によって世界のGDPは毎年0.4%ずつ高まると推計している。

 IEAでは今回レポートの中で、2050年カーボン・ゼロの実現達成のためには、現行に比べて石炭消費で90%、石油で75%、天然ガスで50%削減することが必要であるとしている。

 そのためには新規の石炭、石油開発を停止することが必要、というドラスティックな提言につながったわけである。とくに、新規開発を停止すべきとの提言は、「石油価格安定のために新規採掘を増やすべき」としてきたIEAの歴史から見れば驚くべき姿勢転換であった。IEAはエクソン、BPなどの石油メジャーやグレンコアなどの資源開発会社に刃を突き付けた格好だ。

 IEAの報告は予測とか推奨といったレベルのものではなく、各国政府がエネルギー政策の基礎としなければならない性質のものだ。米国、EU、中国など主要国が2050年までのカーボン・ゼロ社会の実現を公約しているが、IEAの本レポートではそれがいかに困難な道程かを示している。

 各国ともたしかに具体的な歩みを進めている。米国ではバイデン大統領が、シェールオイル、ガス開発における国立公園内の連邦所有地のリース停止をいち早く発表した。デンマークでもいったん認可していた石油、ガスの新規開発計画をキャンセルした。また今年11月に予定されているCOP26では新興国に対する先進国からの数十億ドル規模の援助計画が話し合われることになっている。

 しかし、気候変動問題が注目を浴びた後も、石油メジャーやOPECなどの産油国では、アジア、アフリカなどの新興国での需要に応えるべく化石燃料に対する開発投資を続行するの議論を長年続けてきた。

 石油メジャーの経営陣にとっては、クリーンエネルギーへの転換を早める必要性は十二分にわかっているとはいえ、多額のキャッシュフローを生む石油、ガス生産を続けることが株主配当の増加につながり株主の利益に沿うものだ、との考え方であった。

 化石燃料からクリーンエネルギー分野への転換は多額の投資を要する一方で収益をもたらすのは相当先になるというジレンマに悩んできた。しかし、先般のシェルの株主総会で89%の株主がクリーンエネルギーへのシフトに賛同したように経営者も株主も気候変動対策に背を向けるような経営は成立しないことを充分に分かってきた。これから石油メジャーも気候変動対策を本格化させよう。

 容易に想像できるように産油国の対応は困難を極める。それもサウジアラビア、ロシアのような大国であれば、世界第二位、三位の石油・ガス輸出国であっても、まだ産業構造の高度化などで対応できるし、その準備もしてきている。問題はカザフスタン、エクアドルのような石油以外に資源もない小国であろう。

 いずれにしても今回示されたIEAのレポートは各国政府や産業界にとってのベンチマークとして使われていくことは間違いない。IEAのロード・マップが気候変動を防ぐ観点から、化石燃料関連の新規投資の停止を呼びかけたことは各国政府に対するウェーク・アップ・コールになるものであろう。先般、G7の環境相会合で石炭開発に対する新規ファイナンスの停止を決定したのもこうした流れに沿ったものである。

俵 一郎 (国際金融専門家)

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