ジャカルタの中心部で14日テロが起こった。イスラム国(IS)がネットで犯行声明を出した。ついにアジアでもテロ多発かと受け取った人が多かっただろうが、実はアジアでも大規模テロは2000年以降に多発している。
13日に掲載した「アジアでもテロ多発」の記事をフロント面に再掲する。
昨年のパリの同時多発テロやチュニジアの博物館襲撃事件、今年1月12日のイスタンブールでの爆破など、欧州や北アフリカ、中東でのテロが報じられ、テロは中東と欧米のものという印象が強い。
だが、日本から距離的に近いアジアでも、2000年代に入ってからも10人を超える死者が出たテロ事件は数多く発生している。
15年近く前で記憶は薄れているだろうが、インドネシアのバリ島で202人の死者を出した大規模テロがあった。現場は2002年のバリ島観光地。ビーチやレストランで爆弾が炸裂した。死亡者の中にはオーストラリア人88名、イギリス人28名など観光客が多数含まれていた。
2005年に起きたやはりバリ島でのテロでも、23名が死亡している。事件は共にイスラム過激派組織「ジェマ・イスラミア」によるもの。同組織は2004年には在インドネシア・オーストラリア大使館前で自爆テロ、2009年にジャカルタの高級ホテルで連続爆破テロを実行するなど、インドネシアの広い地域で活動している。
フィリピンでは2000年代、10名以上の死者が出たテロ事件が毎年のように起こっている。特に大規模だったのは、2004年、フィリピン中部のバコロドに向かっていたフェリーを爆破、116名が死亡した事件だ。
当初は事故と考えられていたが、キリスト教から改宗したムスリムによる過激派組織「ラジャ・スレイマン運動」による犯行と明らかになった。同組織はキリスト教徒や欧米諸国に反発しており、インドネシアの「ジェマ・イスラミア」とも資金面や軍事面で協力関係にあると見られている。
昨年8月、タイ・バンコクで起きた爆破事件は記憶に新しい。中国人などの観光客が多いヒンズー寺院・エラワン廟とサートン船着場で相次いで爆発が起き、20名が死亡、125名が負傷した。逮捕された犯行グループには中国・新疆ウイグル自治区出身者が含まれ、タイ政府が中国から亡命したウイグル人を中国へ強制送還したことへの報復と見られている。
バンコクでは2012年にも連続爆破事件が起きており、実行犯1名を含む5名が負傷している。この事件は、イスラエル外交官を狙ったイラン人グループによる犯行だった。
2014年3月に行方不明になったマレーシア航空370便についても、マレーシアのナジブ首相がハイジャックの可能性を示唆するなど、テロ事件だとする見方もある。
少し日本からは距離があるが、インドでは、主要都市・ムンバイで2006年・2008年に大規模なテロ事件があった。2006年のテロでは、ムンバイ近郊鉄道の車両7ヶ所が爆破され、209名が死亡、800名以上が負傷した。数日後、ラシュカル=エ=クァッハルと名乗る組織が、ムスリム弾圧への報復として事件を起こしたと犯行声明を出した。
2008年には高級ホテル・タージマハル・ホテルなど10ヶ所で立てこもり事件が発生、172名が死亡した。犯人10名はラシュカル=エ=クァッハルの関連組織で、カシミール地方の分離独立を掲げるラシュカル=エ=タイバのメンバーと見られている。また、仏教の聖地ブッダガヤでも、2013年、イスラム過激派「インド・ムジャヒディーン」による爆弾テロがあり、5名が負傷している。
中国では2014年、昆明駅広場などで刃物を持った集団が通行人を無差別に襲い、警察官を含む34名が死亡した。中国当局による激しい弾圧がこうしたテロを誘発したとみられ、昆明市当局は、犯行はウイグル独立派過激勢力によるものと発表している。
ウイグル自治区の独立を求める組織によるテロはそれ以前にも起こっており、2013年には首都・北京の天安門広場に突入した自動車が炎上、運転手3名を含む5名が死亡し、38名が負傷した。この事件はパキスタンを本部に置きウイグル自治区の独立を掲げて活動する「東トルキスタン・イスラム運動」によるもの見られている。
インドネシアではユドヨノ前大統領が過激派の押さえ込みを実施、国家テロ対策庁やテロ対策特別捜査隊の設置により、2009年以降大規模なテロは発生していない。対策が功を奏した格好だが、「イスラム国」から訓練を受けたテロリストが各国に帰国しているとの情報がある。テロの恐れはアジアでも否定できない状況だ。