11月4日、アメリカ議会の上院議員の3分の1、下院議員の全員を改選する中間選挙が行われました。4年ごとの大統領選のちょうどまんなかに実施される連邦選挙なので、中間選挙と呼ばれます。
ご承知のように、選挙結果は上院、下院ともに野党の共和党議員が過半数を占めることになりました。民主党のオバマ政権は、完全に議会の支配権を失った形です。米国の政治制度からみて、どうなるのでしょうか。
アメリカでは上院・下院を通過した法案は大統領に送られ、大統領が署名すると法律として成立します。大統領は署名をしないことで法案を拒否できる強い権限があります。大統領が拒否した場合でも、両院が3分の2以上の賛成により再可決すれば、法案は成立しますが、今回の選挙では共和党も3分の2以上の議席を獲得してはいません。
このため、共和党が作った法律を大統領が拒否する堂々巡りが繰り返されかねない状況が生まれてしまいました。ちなみに、オバマ大統領は議会を通過した国防省への一時支出などに対し、過去2回拒否権を発動しています。
一方、大統領は議会を通さずに法案を成立させる大統領令(Executive Order)の発令が可能です。オバマ大統領は就任以来193個もの大統領令に署名しており、例えば2013年には銃規制法の強化についての大統領令を発令しています。
共和党はどう政権をけん制していくのでしょうか。たとえば、オバマ政権は2012年に移民の子供の国外追放を制限するなど、移民に対して寛容な政策を取っていましたが、2013年に長期不法滞在者に一定の条件に基づき居住権を与える法案は共和党が多数の下院で拒否されています。
同法案を「犯罪者への特赦も同然」と非難する共和党が、上院でも多数派となった今、類似の法案の議会通過は一層厳しくなりました。大統領令による法案成立も考えられますが、2年後の大統領選、連邦議会選での民主党候補への影響を考えると、慎重に行動せざるを得ないでしょう。
おもしろいのは、共和党が中間選挙で勝利したことは、日本もかかわるTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)交渉にプラスに働くかもしれない点です。実は、民主党はTPPを含む貿易自由化に反対する姿勢を取っていました。上院には条約の批准に関する承認権があるため、上院でも共和党が多数派となったことで、交渉が進みやすくなる可能性がでてきました。ただし、TPP締結が成功すれば、オバマ政権にとって大きな成果となるため、共和党が手を貸すのをためらうかもしれません。
2期8年が最長の任期であるアメリカ大統領にとって、任期の最後の2年間に影響する2期目の中間選挙は重要です。しかし、戦後のアメリカ大統領の大半が2期目の中間選挙で上院の多数派の地位を野党に奪われています。オバマ大統領が不人気なのは間違いありませんが、2期目の中間選挙が鬼門なのは、米国大統領にとって宿命的なものともいえます。