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香港国家安全法が施行、「国際批判は完全に無視された」(倉田教授)

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【編集長インタビュー】倉田立教大学教授に聞く「今夕のデモに警察はどうでるか」に注目

公開日: 2020/07/01 (ワールド)

5月1日にデモを取り締まる香港警察=Reuters 5月1日にデモを取り締まる香港警察=Reuters

 中国政府が30日夜11時に香港の政治的な自由を失わせる香港国家安全法を香港の官報に載せ、公布し同時に施行した。香港ウォッチャーの第一人者、立教大学の倉田教授にビデオ通信インタビューした。倉田氏は「中国政府はあらゆる反政府活動を取り締まり、中国で裁く権限を得た」と語ったうえで、「本日のデモ・集会は新型コロナを理由に禁止されたが、香港国家安全法に反発する民主派は街頭デモや集会を開くだろう。警察が強圧的な排除や大量逮捕に動くかどうか」と今日の動きに警戒感を示した。(聞き手はニュースソクラ編集長、土屋直也)

ーー昨晩11時に公表されたという香港国家安全法制の全文をどう見ますか。

 簡単に言えば、中国政府の解釈次第でほとんどすべての反政府運動を取り締まることができます。香港政府や香港にある英国式の司法をバイパスした形で中国政府の判断、解釈が押し通せるような仕組みです。香港の政治的な自由は根本的な打撃を受けることになりました。

ーー香港の既存の英国式の法体系では人権が保証されていたのですが、香港の司法をバイパスしてしまうとはどういうことですか。

 国家安全維持法と香港の既存の法律が矛盾した場合は、国家安全維持法が優先されると明確に規定されています。

ーー中国政府による取り締まり機関が香港に駐在するのではないかと懸念されていましたが。

 国家安全維持公署という役所が作られ、中国政府から人が派遣されます。さらに、維持公署は、ある程度、範囲を限定しつつも、逮捕して、容疑者を中国大陸に送致して中国の裁判所で裁くこともできると規定されています。
 加えて国家安全維持委員会も作られます。この委員会は香港政府の長官が司会をして、政府幹部が入る形になっていますが、中国政府から顧問が一人派遣され、助言することになっています。委員会は非公開ということも明記されていますので、中国政府からくる顧問が牛耳り、香港政府を事実上操ることが可能になります。中国政府がどんな人を送り込んで何をするのかも心配です。

 国家安全維持法には国家政権転覆罪が規定されているのですが、その対象は中国政府だけでなく香港政府の転覆も罪になると書かれています。そのうえ、中国政府、香港政府に対する憎しみを増大させることも「扇動」ということで裁けます。

 政策批判をするだけで、解釈次第では取り締まれます。どの程度の批判なら取り締まりの対象にならないのかが、まったくわかりませんので事実上、政策批判はできないという状態になりかねません。萎縮と忖度を香港社会に広げることになるでしょう。

ーー外国人も香港に居る場合は取り締まり対象になるのですか。

 香港に居なくても適用されます。外国人であれ香港人であれ、国家安全に危害を与えるような行動があり、それが香港で効果がある場合は適用されると書かれています。念頭にあるのは、台湾でしょう。台湾人が香港での民主化運動を支援するようなら違法とし取り締まり対象にしたいのでしょう。法律上は台湾に限らず、海外の香港人、日本に居住する香港人が現地の政府に働きかけて中国に圧力をかけてくれというようなことを言うとこれも犯罪となります。

ーーすごく広範囲に取り締まれるシビアな法律ですね。欧米は成立前から法律内容を予想して批判をしていたわけですが、その批判にはまったく配慮されていないのですか。

 国際的な批判に配慮した形跡は何もないです。香港の法律家団体が懸念していた点はほとんど配慮されていません。

ーー米国をはじめ欧州諸国もかなり厳しい制裁措置を取らざるを得ないということでしょうか。

 米国はすでに中国政府の関係者に対するビザの発給の制限であるとか、軍事技術の香港への輸出の制限を打ち出していますが、とても弱い制裁です。米国はもっと厳しい制裁措置を科すことになるのでしょう。

 米国連邦議会は香港自治法案を審議しており、上院を全会一致で通過しました。昨年11月に成立した香港人権・民主主義法の強化版です。香港自治法案では香港の根幹である金融の分野にまで制裁を発動できると書きこんでいます。香港の財界人は、発効すれば脅威だと指摘しています。米国はこうして制裁手段を広げており、トランプ大統領は大統領選の動向をみながらさらに強い制裁にでるのでしょう。

ーー本日は7月1日ですが、香港では禁止された抗議デモが自然発生的に起こるでしょうか。

 新型コロナを理由に禁止されたのですが、なにしろ毎年、大規模デモを実施してきた7月1日ですから町にでるという人は少なくないでしょう。本日の夕方の時間になったときに香港政府や警察がどんな取り締まりをするのかは焦点です。独立を主張するような旗をもっているだけで逮捕できます。大規模な逮捕や催涙弾を使うなどの排除をどこまでするのかも重要なポイント。

ーー香港国家安全維持法はもう施行されているのですね。

 昨日11時に香港の官報に載り、公布され、と同時に施行されました。本来なら内容を浸透させるため公布から施行までは一定の期間を置くべきものなのでしょうが、同時とすることで、内容への反対表明を一切封じ込めたのでしょう。民主主義のかけらもないやり方ですが、異論封じを優先させたのです。

 法律の条文で原案から一か所だけ変えられたのは「外国勢力の干渉を罪にする」という条文で、これは外国人を罰すると読めるわけですが、変更後は「外国政府と結託することを罪にする」と変えています。変更後は外国人とつながる香港人を罰すると読めます。私と付き合う香港人に累が及ぶのを恐れています。

ーー非常に網羅的な取り締まり法ですね。

 最初に申し上げたように、なんでも取り締まろうと思えばできてしまう法律でなないでしょうか。

ーー日本政府はどうふるまうべきでしょうか。

 国家安全維持法は国際社会、とりわけ民主主義の国にとっては大きな問題です。欧米諸国とよく連携をすることが大事です。抜け駆け的に中国と日本だけが友好関係を結ぼうということはあってはならないことです。

土屋 直也 (ニュースソクラ編集長)

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土屋 直也(ニュースソクラ編集長)
日本経済新聞社でロンドンとニューヨークの特派員を経験。NY時代には2001年9月11日の同時多発テロに遭遇。日本では主にバブル後の金融システム問題を日銀クラブキャップとして担当。バブル崩壊の起点となった1991年の損失補てん問題で「損失補てん先リスト」をスクープし、新聞協会賞を受賞。2014年、日本経済新聞社を退職、ニュースソクラを創設
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