アフガニスタンでは、タリバン政権の骨格が固った。
ハッサン・アフンド師が臨時首相、アブドル・ガーニ・バラドル師が臨時副首相に就任した。
また、シラジュディン・ハッカーニが臨時内相だが、彼はアメリカがテロ組織に指定する組織に属し、FBIが指名手配中の人物である。女性は閣僚になっていない。さらには、タリバン以外の勢力は含まれていないし、旧政権の幹部も排除されてる。これは、自ら記者会見して約束したことと矛盾している。
女性やジャーナリストが迫害されているという報告もある。「勧善懲悪省」の復活など、シャリーア(イスラム法)に基づく支配を復活させようとしている。
女性は公共の場ではブルカで全身を覆うことが要求される。女性が教育を受ける権利まで否定しないというが、男女共学は認めていない。
イスラム原理主義に固執しているのである。
イスラム教には、予言者ムハンマドが活躍した6世紀~7世紀のアラビア半島という時代を反映した教えが多々ある。
豚肉を食することを禁じたのは、当時腐った豚肉を食べて死ぬ人が続出したからである。放牧で生きる遊牧民にとっては、略奪(ガズウ)は産業の一つであり、戦争が日常茶飯事で、多くの男が死んだ。
取り残された未亡人と孤児を救うために、余裕のある男が4人まで妻を娶ってよいことにしたのである。ムハンマドも孤児で、祖父や叔父に育てられて苦労した経験を持つ。
シャリーアは、イスラム教の経典コーランとムハンマドの言行録(スンナ)を法源とする法体系である。殺人、強姦、同性愛、麻薬の使用と流通、強盗などは死刑である。1400年以上が経過する今日では時代に沿わないものもあるだろう。
たとえば、同性愛などは、同性との婚姻を認める欧米諸国とは大きな落差がある。しかし、シャリーアを堅持しようとするのがタリバンのようなイスラム原理主義なのである。
ブルカなどの着用も、人間の弱さを前提にする「イスラムの人間主義」でもある。夫や兄弟以外には「美しいところを隠せ」と女性に要求するのは、男が女性の美しさに欲望を募らせて犯罪的な行動に走るのを阻止するためである。男女別学も同じ考え方である。そして、そこまでしても悪事を働く者は厳罰に処すのである。宗教、道徳が全生活を律するわけである。
しかし、この男女の別を徹底すれば、女性を治療するのに女性の医師、女性を教育するのに女性の教師、女性を運ぶタクシーに女性運転手が必要になってくる。社会を維持するためには、女性の社会的進出が不可欠なのである。そういう点を指摘すれば、タリバンとて反論できないであろう。
しかも、資金源としてケシの栽培を行い、麻薬を流通させている。シャリーアに基づけば、タリバンは死刑である。自らが、そういう矛盾を行っていることも批判してよい。
一方、ケマル・アタチュルクが建国したトルコでは、世俗化を進め、女性が社会的に進出している。シャーリアは廃止され、ローマ法を起源とする法律を制定している。アルバニア、レバノン、シリア、チュニジアなども同様である。
2010年12月18日にチュニジアでジャスミン革命が起こり、「アラブの春」という民主化運動が起こったが、チュニジアでは、それ以前から世俗化が実行されていた。私は、大学での講義のために訪れていたチュニスで、法服を来て、颯爽と町中を闊歩する女性裁判官の姿に驚いたものである。
今でも、その対極にあるのが、イランやサウジアラビアである。前者はイスラム教の聖職者が、後者は王族が支配しているが、シャリーアを厳格に適用している。
タリバンが理想としているのは、そのようなシャリーアに基づく支配である。それは欧米の民主主義とは全く異なるものである。
しかし、アメリカは、石油という資源の確保、中東におけるアメリカのプレゼンスの維持のために、中東に介入してきた。1990年1月に湾岸戦争が勃発すると、アメリカはサウジに米軍を展開し、それはイラク戦争でサダム・フセインを排除する2003年まで続いた。
これが、アルカイダやISによる反米運動を起こすきっかけとなったのである。
サウジアラビアは、2019年7月、16年ぶりに米軍の駐留を認めた。サウジにとって、シーア派のイランやイエメンを牽制することが目的である。アメリカは、サウジアラビアに民主化などは要求していない。
20年続いたアフガン戦争も、9/11同時多発テロを引き起こしたアルカイダの首領オサマ・ビン・ラデンをタリバン政権が匿ったという理由からであった。彼は2011年5月2日にパキスタンで殺害されたが、アメリカは米軍駐留をアフガニスタンを民主化するという理由に切り替えたのである。これは、サウジアラビアに対する態度とは全く異なる。
イスラム原理主義の国において、西欧流の民主化は無理である。アフガンのことはアフガン人に任せるという姿勢しか対応の仕方はあるまい。
イスラム原理主義に固執、資金源は教義が禁じるケシ栽培 |
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【舛添要一が語る世界と日本(107)】タリバン新政権で、アフガニスタンはどういう国になるのか
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(ワールド)
麻薬の原料となるケシ=CC BY /unukorno
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舛添 要一(国際政治学者)
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