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日本の弾道ミサイル防衛体制では迎撃できず

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【舛添要一が語る世界と日本(127)】北朝鮮、ミサイル発射実験を繰り返す狙い

公開日: 2022/02/01 (政治, ワールド)

ミサイル防衛。弾道弾ミサイルに直撃するパトリオットミサイル=cc0 ミサイル防衛。弾道弾ミサイルに直撃するパトリオットミサイル=cc0

舛添 要一 (国際政治学者)

 1月30日朝、北朝鮮は中距離弾道ミサイル「火星12」を日本海に向けて発射した。

 最高高度2000㎞のロフテッド軌道での発射で、通常軌道の場合は射程が5000㎞に及び、グアムを攻撃できる。2017年5月には、同じ「火星12」をロフテッド軌道で発射している。

 今年になってから、1月5日と11日には極超音速ミサイルを、14,17,27日には短距離弾道ミサイルを、25日には巡航ミサイルを発射しており、今回が7回目である。

 この異常な頻度での発射実験は何を意味するのか。

 2月4日から3月13日まで北京でオリンピック・パラリンピック大会が開かれる。また、3月9日には韓国で大統領選挙が行われる。これらの機会に発射実験を行うことを避けるために、駆け込み的に集中して実施したと思われる。

 韓国の文在寅大統領は、今回のミサイル発射に対して、「朝鮮半島の非核化や平和安定、外交的解決に向けた国際社会の努力に対する挑戦だ」と厳しく批判した。大統領選を前にして、文在寅政権の対北宥和政策の失敗が浮き彫りになってきていることへの焦りの念が感じられる。

 この連続したミサイル発射の狙いは何なのか。

 金正恩政権の最大の目的は、今の独裁体制の維持である。それは、祖父の金日成、父の金正日以来変わっていない。21世紀にもなって世界でも希有な独裁体制(金王朝)を継続させるためには、世界最強国で人権、民主主義、反独裁の旗手、アメリカからの攻撃を抑止する能力を持つことが不可欠である。それはアメリカを核攻撃することのできる軍事力を持つことしかない。

 具体的には、大陸間弾道ミサイル(ICBM)、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)である。前者は「火星14」、「火星15」であり、後者は「北極星3」であり、全てロフテッド軌道で発射した実績がある。

 国民の生活を犠牲にしても、金王朝存続のために核ミサイル開発を急いでいるのである。

 2018年4月には、金正恩は核実験とICBM発射の中止を宣言し、その後、4,5月には板門店で南北首脳会談、6月にはシンガポールで米朝首脳会談が開かれている。しかし、経済制裁の緩和や経済支援といった成果を得ることはできず、今日に至っている。

 今回の「火星12」の発射は、核実験やICBMの実験再開への序幕となるのかもしれない。5年前には、8,9月に「火星12」を通常軌道で発射し、日本上空を通過させている。また、同年9月には6回目の核実験を行い、11月には「火星15」を発射している。

 相次ぐ北朝鮮のミサイル実験に対して、今の日本の弾道ミサイル防衛(BMD)体制では十分に対応できないことが露呈している。ロフテッド軌道でも極超音速ミサイルでも迎撃は困難であり、日本列島全体が標的になる。

 敵基地攻撃能力を保有することも1つの手段であるが、それで日本の防衛が十分になるわけではない。たとえば、鉄道を使った移動式のミサイル発射システムに対しては、ピンポイントで攻撃することは容易ではない。

 日本もアメリカの核抑止力に頼るしかないのである。北朝鮮が同盟国日本を核攻撃すれば、必ずアメリカから核の反撃を受けるという確証が必要である。アメリカを信用できないフランスは、モスクワに到達する中距離核ミサイルで自ら武装している。広島、長崎を経験した日本では、政治的に核武装は現実的ではない。在日米軍基地に勤務するアメリカ人が「人質」としての役割を果たしうるが、基本は強固な日米同盟関係である。

 2017年のときには、アメリカのトランプ政権は強い調子で北朝鮮を非難し、それが核実験やICBM発射を中断する金正恩の決定に、そして米朝首脳会談に繋がってる。しかし、バイデン政権はウクライナ問題や米中関係とりわけ台湾問題に勢力を集中しており、北朝鮮問題の優先度は低い。

 しかも、2017年には国連安保理の北朝鮮制裁決議に賛成した中国とロシアは、今回は北朝鮮の実験を擁護している。それだけ、中国やロシアのアメリカとの対決姿勢が厳しくなっているということである。

 中朝間の鉄路による貿易を再開させた中国の習近平政権は、今は北京五輪を成功させることに集中しており、北朝鮮に影響力を行使するような余裕はない。

 バイデン政権は、昨年8月のアフガニスタンからの撤退に始まり、中国との対立、ウクライナ問題と、外交防衛上は大きな成果を上げておらず、そのことが支持率の低下にも繋がっている。

 日本としては、アメリカのみならず、ヨーロッパ諸国、ロシア、中国とも対話の道を模索し、北朝鮮との外交的チャンネルを確立する努力を放棄してはならない。
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