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米国を交渉に引き出すための核攻撃能力

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【舛添要一が語る世界と日本(135)】ICBM開発に走る北朝鮮 ウクライナ戦争で核兵器の効能を確信した金正恩

公開日: 2022/03/29 (ワールド)

CC BY-SA 平壌=CC BY-SA /(stephan)

 3月24日、北朝鮮がICBMの発射実験を行った。

 翌25日、北朝鮮は、金正恩朝鮮労働党総書記の指揮の下、ICBMが発射される映像を公開し、それが新型の「火星17」だとして成果を世界に誇った。

 しかし、米軍と韓国軍が独自に収集したデータと比較分析した結果、発射されたのは旧型の「火星15」だったという。噴射ノズルが4つある新型に見せかける映像操作を行ったようである。

 今年になってから、北朝鮮はミサイル発射実験を繰り返している。1月には7回の実験を行っており、1月30日には中距離弾道ミサイル「火星12」の発射実験に成功した。

 その間、1月19日には、核実験とICBM開発の再開を示唆している。

 そして、2月27日と3月5日には、準中距離弾道ミサイルの発射実験を行った。また、3月16日には10回目の発射実験を実施したが、これは失敗に終わっている。

 こうして、遂に3月24日に、ICBMの発射実験に踏み切ったのである。これは、2017年以来のことである。

 2017年には、7月4日と7月28日にICBM級の「火星14」、11月29日にはICBM級の「火星15」の発射実験を成功させている。これに対して、トランプ大統領が激怒し、圧力をかけたために、翌2018年4月に、北朝鮮は核実験とICBMの発射実験の中止を決めた。そして、同年6月にはシンガポールで初の米朝首脳会談が行われたのである。

 今回、北朝鮮がICBMの実験を再開したのは、アメリカをはじめ国際社会がウクライナ戦争への対応に追われており、即座の対処ができないこと、また中国やロシアがアメリカとの対立を激化させていることが念頭にあったと思われる。2017年と違って、今回に関しては中露は北朝鮮の実験を批判していない。

 さらに言えば、金正恩は、祖父の金日成、父親の金正日以来の核兵器「信仰」の正しさをウクライナ戦争で再認識させられたのであろう。

 プーチン大統領が核兵器の使用可能性に言及するだけで効果は抜群で、NATO側は武力行使を断念する。逆に、ウクライナは核兵器を放棄したばかりにロシア軍の侵略を阻止できなかった。これが金正恩の認識であり、核兵器の有効性、そして北朝鮮の核武装政策の正しさを確信したに違いない。

 「火星15」を新型の「火星17」と称して実験の成功を吹聴したのは、4月15日に金日成の生誕110周年の祝辞に花を添える意味があるのだろう。ミサイルの型についての米韓両軍の分析が正しいか否かは別にして、今回発射されたミサイルが射程が約1万5千㎞とアメリカ全土を射程におさめる高性能であることは確かである。

 米朝首脳会談は、シンガポールの後も、2019年2月にはハノイで、6月には板門店で行われたが、金正恩は、制裁解除を勝ち取ることができなかった。トランプ政権としては、北朝鮮が核開発計画の放棄を約束しないかぎり、一切の譲歩はないという姿勢を堅持したのである。

 また、文在寅大統領との南北首脳会談も制裁解除の役には立たず、2020年6月には、北朝鮮は開城にある南北共同連絡事務所を爆破している。

 金正恩にしてみれば、再度アメリカを交渉の場に引き戻すには、アメリカ本土を核攻撃できる能力を持つことしかないことを再確認したのであろう。核ミサイル開発を止めることはないというのが建国以来の国是であり、その開発の成果を武器にしてアメリカと交渉し、経済制裁の緩和・解除を勝ち取ろうとしているのである。

 韓国では、3月9日に大統領選挙が行われ、野党のユン・ソギョル(尹錫悦)候補が勝ち、文在寅政権ほど対北融和的ではない政権が誕生する。その点でも、韓国に頼って対米関係を好転させるというシナリオは描けないのである。

 バイデン政権は対話路線を強調するが、これまでのところ対北朝鮮政策では成果を上げていない。今回の高性能、長距離射程のICBMの発射実験成功を機会に、どのような政策転換を行うのか。ウクライナで忙殺されていることは分かるが、東アジアでもまたアメリカの安全保障に黃信号が灯り始めているのである。

舛添 要一 (国際政治学者)

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