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ウクライナ 併合めざし占領地域でロシア化と住民投票

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【舛添要一が語る世界と日本(140)】思惑外れ焦り強めるプーチン

公開日: 2022/05/03 (ワールド)

ウクライナで避難する親子=Reuters ウクライナで避難する親子=Reuters

 ウクライナでは、侵攻したロシア軍と、これに抵抗するウクライナ軍の間で激しい戦闘が続いている。2月24日の侵攻以来、もう2ヶ月以上が経っているが、停戦交渉がまとまる兆しはない。グテーレス国連事務総長の仲介も功を奏したとは言えない状況である。

 アメリカを中心とするNATO諸国は、ウクライナへの軍事支援を強化しており、戦争の長期化が危惧される。

 ロシアは、首都キーウの攻略に失敗し、東南部に攻撃を集中している。マリウポリを支配下に置き、ドンバス→マリウポリ→クリミア→オデーサへと占領地域を拡大し、さらにはモルドバにまで到達しようとしている。

 モルドバのウクライナ国境周辺には、ロシア系住民が多く住む沿ドニエストル(トランスニストリア)共和国がある。国際的には独立国として承認されていないが、1500人のロシア軍が駐留している。この帯状の地域がロシアの支配下に入れば、東西、そして南からウクライナを攻撃できる。北は、ロシアの友好国ベラルーシである。

 この占領計画を実行に移すのは容易ではないが、ロシアは、軍事力のみならず、経済、社会、生活のロシア化、そして住民投票という手を使う。南部のヘルソン州では、ロシアの通貨ルーブルが導入されたり、レーニン像が再建されたり、さらには住民投票の準備も進んでいる。

 ウクライナ東部のルガンスク、ドネツク両州のうち、親露派武装勢力が実効支配している地域(それぞれ、ルガンスク人民共和国、ドネツク人民共和国を標榜)については、ロシアは2月21日に国家として承認した。そして、23日にはクレムリンは、「両国」がウクライナ政府軍から攻撃されているとして、「特別な軍事作戦を実施」することを表明し、翌24日に侵略を開始したのである。

 アメリカと勢力を二分したソ連邦の時代を懐かしむプーチンは、ソ連帝国、強いロシアの復活、失われた領土の回復を大きな目標に掲げ、2000年チェチェン、2008年ジョージア(グルジア)、2014年クリミアと軍事介入し、いずれも期待通りの成果を上げてきた。

 たとえば、ジョージア(グルジア)で2008年に起こった南オセチア紛争(ロシア・グルジア戦争)を見てみよう。ジョージアには、親露派で分離独立を唱える南オセチアとアブハジアが存在しているが、2008年8月7日の午後、グルジア軍は南オセチアの首都ツヒンヴァリに対し軍事行動を起こした。

 これに対抗してロシア軍が南オセチアに入り、アブハジア軍もロシア軍に合流して5日間戦闘が行われた結果、グルジア軍は撤退し、ロシアは8月26日、南オセチアとアブハジアの独立を承認したのである。

 親露派勢力の要請に基づいて軍事侵攻し、独立国として承認するというパターンであり、それと同工異曲なのが、2014年3月18日のクリミア半島併合である。住民投票でロシア帰属が決められたからだとロシアは主張し、ウクライナから奪取したのである。

 クリミアは、「ロシア共和国からウクライナ共和国への友好の証」として、1954年にフルシチョフがウクライナに割譲した地域である。プーチンは、フルシチョフの行為を違法だと断罪している。

 それまではロシア共和国に属し、ロシア人も多いこの地域では、住民投票をすればロシア帰属が決まるのは当然であった。

 ただ、クリミアの住民投票は、ウクライナ全国民が行ったものではなく、「領土変更は国民投票によってのみ議決することができる」と規定するウクライナ憲法73条の違反である。そこで、ロシアは、まずクリミアに独立宣言をさせ、独立国家としてロシアに併合させたのである。

 今年の2月、プーチンがウクライナ東部のルガンスクとドネツクを独立国家として承認したのは、このクリミア併合と同じ手法であり、今またヘルソン州で同様な住民投票を実施しようとしている。

 しかし、ヘルソン州ではロシア系住民は多数派ではない(2001年の統計による)。ウクライナ人が82.0%であり、ロシア人は14.1%にすぎない。クリミアでは、ロシア人が58.3%で、ウクライナ人は24.3%である。

 住民投票を行えば、ロシアの狙い通りの結果になるように操作されるであろうが、この住民構成を見れば、独立という決定になることを世界は承認しないであろう。

 停戦交渉の展望も開けない今、ロシアの焦りが目立ってきている。

舛添 要一 (国際政治学者)

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