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ウクライナで改めて、台湾有事の現実味

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【舛添要一が語る世界と日本(141)】弾圧派の李家超が香港長官、香港が体現する1国2制度の有名無実

公開日: 2022/05/10 (ワールド)

CC BY モスクワ動物園を訪れた習近平氏とプーチン氏(2019年)=CC BY /Kremlin.ru

 5月8日、香港で行政長官の選挙が行われた。

 住民による直接選挙ではなく、北京政府が事実上指定する1500人の選挙委員による間接選挙である。

 候補者はただ一人、李家超である。彼は、香港警察のトップとして2019年の民主化デモの取締を指揮した人物である。

 選挙の結果、1416票を獲得した李家超が圧勝した。最初から結果が分かっていた選挙であるが、今後の香港は北京との一体化をさらに進めていくだろう。

 1997年7月1日の香港返還時の「一国二制度」という約束は、25年が経過する間に次第に反故にされてきた。それに伴い、香港を脱出し、イギリスなどに移住する人も増えている。

 このような香港の状況を見て、台湾の人々は、「一国二制度」という仕組みが幻想であったことを再認識している。そして、「自由な台湾」が失われることへの危機感も増している。

 2月24日にロシア軍がウクライナに侵攻し、2ヶ月が経過した今も戦闘が続いている。ロシアがウクライナに襲いかかったように、中国が台湾に侵攻してくるのではないか(台湾有事)という可能性が、これまで以上に論じられるようになっている。

 しかし、台湾とウクライナとの相違点についてもきちんと整理しておく必要があるし、日本への影響もまたウクライナ戦争とは大きく異なる。

 実は、ウクライナ状況を最も注意深く見ているのが習近平である。

 台湾を武力統一した場合に、どのような国際的反応があるのか。ロシアに科された経済制裁、ウクライナへの武器支援などの実態をつぶさに観察していると思われる。

 大国ロシアが予想外に苦戦し、国際的孤立を招いている。西側による最新鋭の武器の提供がウクライナ軍の激しい抵抗を可能にしているからである。

 中国は、軽々に台湾に侵攻することはあるまいが、同時にアメリカと伍するだけの軍備の充実にさらなる努力を展開するものと思われる。

 1972年のニクソン大統領訪中を契機として、アメリカも日本も中華人民共和国を唯一の中国として承認し、台湾は中国の一部であるという認識を確定した。したがって、台湾を独立国とは認めていない。その点では、独立国であるウクライナにロシアが侵攻するのとは異なる。

 アメリカは、中国との国交樹立に際して、台湾関係法を制定し、「台湾住民の安全のために適切な行動をとる」とした。アメリカ製兵器の台湾への売却はその「適切な行動」の1つであるが、軍事介入することまでは明言していない。

 台湾の独立は認めず、しかし、同時に中国による武力侵攻は認めないというのがアメリカの立場である。日本も同じ姿勢である。

 ウクライナはNATOのメンバーではないため、西側諸国は軍事介入はせずに武器援助を行っている。台湾に対しても、アメリカは同様な方針を維持するであろう。

 しかし、近年の米中関係の悪化に伴い、アメリカでは、台湾への防衛義務を明確にすべきだという意見が強まっている。ロシアのウクライナ侵略は、そのような主張を勢いづかせている。

 習近平は、中国建国100周年目の2049年までには台湾を統一し、アメリカを抜いて世界一の大国になることを目標に掲げている。平和的な統一が好ましいことは言うまでもないが、香港の中国化という現状を見れば、一国二制度という仕組みが何の意味も持たなかったことを台湾の人々は認識している。国民党支持の有権者の間でもそうである。

 そのため平和的統一というのは可能性としては低く、いつ中国が武力統一に踏み切るかと言うことが注目の的になっている。それが現実のものとなるのが台湾有事であるが、それに対抗してアメリカが武力介入に踏み切れば、日米安保条約上、日本もアメリカの作戦に協力せざるをえなくなる。

 習近平がウクライナ戦争から教訓を得れば、近い将来に武力侵攻を行う可能性は少ないと思われる。日本としては、台湾有事論で過熱することなく、台湾に対しても、中国に対しても、冷静かつ慎重な行動を求めていくしかない。

 武力による侵攻が始まれば、いかに大きな犠牲を世界全体が払うことになるかは、今のウクライナが証明している。

舛添 要一 (国際政治学者)

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