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【舛添要一が語る世界と日本(143)】露包囲網のクアッドきょう開催 インドは露と親密、豪州は中国に柔軟

公開日: 2022/05/24 (ワールド)

CC BY CC BY /Marco Verch

 5月22日に来日したバイデン大統領は、24日、岸田首相と首脳会談を行った。テーマは多岐にわたる。

 ロシアのウクライナ侵攻は、国際社会に大きな衝撃を与え、民主主義陣営の団結を要請している。

 その関連で、中国による台湾の武力統一という「台湾有事」も議論されている。

 さらには、北朝鮮による度重なるミサイル発射実験は、世界の安定への挑戦となっている。

 ロシア、北朝鮮、中国に対して安全保障上の協力を行うことは、日米安全保障条約締約国として、当然のことである。日本はこの3核保有国の隣国であり、侵略行為に備える必要があるが、非核国の日本としては、アメリカの核抑止力に頼らざるをえない。韓国もまた、同じである。

 バイデン大統領は、両国に対して核抑止力を行使すること(拡大核抑止)を約束した。この点に関しては、日米韓の齟齬はない。しかも、韓国では、大統領選で親北朝鮮の文在寅政権グループが敗北し、保守の尹錫悦政権が生まれており、日米韓の連携がより円滑になると期待されている。バイデン大統領は、文在寅政権時代に悪化した日韓関係を改善させることを韓国に求めたのである。

 ウクライナ戦争がどういう形で終結するにせよ、ロシアの凋落は不可避であろう。アメリカに対抗して、世界の覇権を争うのは中国であることは間違いない。バイデン大統領の今回のアジア訪問の目的は、この中国に対する包囲網の形成にある。

 24日には、日米にオーストラリアとインドを加えたクアッドの首脳会合が開かれる。

 インドは、原油や武器の輸入などでロシアと緊密な関係にあり、ロシアに対して厳しい姿勢をとっていない。

 また、オーストラリアでは21日の総選挙の結果、政権交代となり、労働党のアンソニー・アルバニージー党首が次期首相となる予定である。対中強硬姿勢のモリソン政権と異なり、中国との姿勢は柔軟である。この政権交代が、クアッドの結束にどのような影響を与えるかも注目に値する。

 経済の分野では、バイデン大統領はIPEF(インド太平洋経済枠組み)構想を進めることを公にし、岸田首相もそれに参加することを決定した。参加国は、アメリカ、日本、オーストラリア、ブルネイ、インド、インドネシア、韓国、マレーシア、ニュージーランド、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナムであり、世界のGDPの40%を占めることになる。

 焦点は、
①デジタルを含む貿易
②サプライチェーン
③クリーンエネルギー・脱炭素、インフラ
④税制・汚職対策
――である。世界のGDPの40%を占めることになる。

 トランプ政権が反故にしたTPPに戻ればよいのではないかと言いたくなるが、中国の攻勢に対して保護貿易主義のムードが高まっているアメリカでは、その選択は不可能である。自由貿易を拡大することになるからである。

 先端技術分野での米中対立は、トランプ政権下で先鋭化し、ファーウェイ(華為)などへの圧力行使となったことは周知の事実である。それに加えて新型コロナウイルスの感染拡大、さらにはウクライナ戦争によって、半導体などの供給が大きく制限される事態となった。

 そこで、それに対応するために、「供給網(サプライチェーン)の強靱化」という課題を提示し、そのためにIPEFを活用しようというのがバイデン政権の狙いである。

 この問題は単に経済にとどまらず、安全保障とも緊密な関係にある。価値観を共有しない国からは半導体などの戦略商品を輸入しないという方針につながるのであり、それは自由貿易の原則とは背反し、経済ブロック構想に繋がってしまう。

 日本は中国とは緊密な経済関係を維持しており、その関係を希薄化させることにつながる。多くのアジア諸国もその懸念を共有する。自由貿易を目指すTPPは関税引き下げによってアメリカという巨大市場へのアクセスを可能にするものであるが、IPEFにはそのような具体的なメリットはない。それだけに、このバイデン構想に賛成する国が増えるかどうかは不明である。

 中国が嫌がるこの枠組みに参加して、対中関係を悪化させる愚を犯そうとはしないからである。

 自由貿易を目指す組織としては、日中韓、ASEAN10カ国にオーストラリアとニュージーランドが参加するRCEP(東アジア地域包的経済連携)がある。さらには、21,22日に開かれたAPEC (アジア太平洋経済協力会議)もあるが、21,22日に開かれた貿易相会合は、ロシアへの対応などで参加国に見解の差があり、共同声明を採択できないまま閉幕した。

 これらの組織に加えてIPEFを発足させることに大きな意義があるのだろうか。日本の国益にプラスになるような運営を行えるかどうか、岸田政権にとっては重い課題である。

舛添 要一 (国際政治学者)

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