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早期停戦には、戦後の青写真が必要

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【舛添要一が語る世界と日本(144)】ウクライナ戦争が長期化する理由

公開日: 2022/05/31 (ワールド)

CC BY プーチン大統領(2022年3月)=CC BY /Kremlin.ru

 2月24日のロシアによるウクライナ侵攻から、100日になろうとしている。

 3ヶ月以上も戦闘が続こうとは、誰も予想しなかったのではないか。

 プーチン大統領自身がまずは驚いているだろう。

 2000年のチェチェン、2008年のジョージア(グルジア)、2014年のクリミアと、親露派勢力支援のために軍事介入したが、いずれも短期間に目的を達している。その成功体験から、今回も武力で容易に片が付くと思っていたようである。

 プーチンの「特別軍事作戦」の目標は、親欧米派のゼレンスキー政権を打倒し、ロシアの傀儡政権を樹立することにあった。だから首都キーウに軍を進めたのである。

 昨年後半からの国境地帯での軍事演習は侵攻の準備であったが、完全掌握を狙うルハンシク、ドネツクの2州に侵攻するものと多くの専門家は見ていた。つまり、クリミア併合の再現だと思ったのである。

 ところが、それに加えて、ロシア軍はキーウに進軍していったのである。それは、主たる目標が親露派勢力の保護にではなく、NATO加盟を図るゼレンスキー政権の転覆にあったからである。軍事的圧力に抗しきれず、ゼレンスキー大統領は直ぐに逃亡すると見ていたのである。

 ところが、上記のような先例とは異なり、そうはならなかった。クリミア併合後にアメリカは15億ドルの軍事支援を行い、ウクライナ軍の装備と訓練を近代化したため、抵抗力が増したのである。

 しかも、2014年と違って、今回は西側諸国が即座に反応し、最新鋭の兵器を大量に供与し始めた。対戦車ミサイルにしろ、無人攻撃ドローンににしろ、それらの武器は反撃のために極めて有効で、遂にロシア軍は首都から放逐されてしまった。

 こうして、特別軍事作戦の主たる目標の達成が不可能となったのである。それどころか、フィンランドとスウェーデンがNATOに加盟申請する事態にまで至った。

 ロシアは、今は東部に軍事力を集中し、同胞のロシア人を「ナチス」から守るという大義名分を錦の御旗としているのである。

 今後の戦局の見通しは不透明であり、停戦交渉も中断されたままである。28日には、マクロン仏大統領とショルツ独首相がプーチン大統領と電話で会談し、ゼレンスキー大統領との直接交渉を呼びかけた。

 これに対して、プーチン大統領は、停戦交渉を中断させているのはウクライナ側だと非難し、さらに欧米からのウクライナへの武器供与を批判した。また、黒海の港からウクライナの穀物が輸出できない状況を打開するよう求める独仏首脳の要求に対して、解決策に協力する意向を示すとともに、経済制裁の解除を強く求めた。

 トルコのエルドアン大統領もまた、ロシアとウクライナの仲介の努力を継続している。

 トルコは、反トルコ活動を行うクルド人テロリストを支援しているとして、フィンランドとスウェーデンのNATO加盟には反対しているし、ロシアに対する経済制裁にも参加していない。一方で世界最強の無人戦闘機「バイラクタル」をウクライナに提供している。仲介役としては最適であるが、まだ功を奏していない。

 ウクライナは西側からの軍事支援に助けられて反撃を続けており、ロシア軍もプーチン大統領によって設定された目標の達成を止める気はない。

 軍事的に見てロシアを超える大国はアメリカしかいない。そのアメリカがどのタイミングで停戦の号砲を鳴らすかに全てがかかっている。ゼレンスキー大統領が豪語するように、ロシアを打ち負かすまでウクライナ軍に戦わせるのか。

 追い詰められたロシア軍が、生物・化学兵器や核兵器を使用しない保証はない。これは、極めて危険である。

 早期停戦に持ち込むためにも、戦争終了後の国際秩序について青写真を書いておかなければならない。

 たとえば、クリミア半島の帰属についてはどうするのか。ロシアが無抵抗で返還に応じるとは予想しがたいが、外交的な解決は可能なのであろうか。

 1979年にアフガニスタンに軍事侵攻したソ連は、10年間で1万4千人のソ連軍の兵士を死なせて、1989年に撤退した。今回のウクライナでは、僅か3ヶ月でその戦死者数に達している。

 ソ連軍のアフガン占領下で、ソ連に抵抗させるためにアメリカが支援したイスラム過激派が、その後アルカイダとなって、2001年9月11日アメリカで同時多発テロを引き起こした。それに対抗するため、直後にアメリカはアフガニスタンに介入し、20年間の占領に失敗した後、昨年撤退している。

 結局は、アメリカは、ダブル・スタンダードであり、民主主義を掲げる外交や戦争が必ずしも上手く行くわけではない。世界第二の経済大国であり、軍事大国でもある中国がアメリカと協力してウクライナ戦争を止めさせるというシナリオもあるかもしれないが、世界の覇権競争におけるアメリカの真の敵は中国であり、そのような想定は無理である。

 やはり、戦争は簡単には終わらないと思わざるをえない。

舛添 要一 (国際政治学者)

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