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ウクライナのEU加盟 主導するEU委員長に危うさ

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【舛添要一が語る世界と日本(146)】バルカン諸国が長年の順番待ち、ウクライナ優遇に不満噴出も

公開日: 2022/06/14 (ワールド)

CC BY CC BY /Balkan Photos

 6月11日、EUのフォンデアライエン委員長は、キーウでゼレンスキー大統領と会談し、ウクライナのEU加盟について議論した。

 ウクライナを加盟候補国として推薦するか、1週間後までに評価をまとめると委員長は述べている。

 そもそも基本的な問題は、ウクライナがEUに加盟する資格があるのかどうかということである。また、仮に候補国になっても、加盟条件を満たしているかについての審査が迅速に行えるのかという問題もある。

 他にも長年にわたって加盟待ち、審査待ちの国があるのであり、ウクライナのみを政治的配慮から優遇することは問題である。

 たとえば、トルコは50年間も加盟を待っており、フィンランドとスウェーデンのNATO加盟に反対しているのも、取引材料としてEU加盟承認を持ち出したいからである。

 1993年6月に、EUは「コペンハーゲン基準」と呼ばれる加盟基準要件を設定した。

 第一は地理的要件で、ヨーロッパの国であることである。
 第二は政治的・法的要件で、法治国家、民主主義、基本的人権の保護、少数派の保護を保障する安定した制度を備えていることである。
 第三は経済的要件で、市場経済が機能しており、EU内の競争力と市場力に耐えうることである。
 第四は、EC法の総体系を受け入れることである。

 加盟までの段取りは、まずは加盟国候補に認定されることである。欧州委員会は、ウクライナがコペンハーゲン基準を遵守する能力があるかどうかの意見書を作成する。その上で、EU理事会で加盟国全会一致の賛成を得なければならない。

 ウクライナの現状を見たときに、ロシア系などの少数派に対して「尊重と保護」を保障しているかどうか疑問符が付けられよう。その他、経済的要件なども十分に満たしているとは言いがたいのではないか。

 バルカン諸国では加盟が順番待ちの状況である。2004年にスロベニア、2013年にクロアチアが加盟したが、その後は進んでいない。

 ( )内に申請時期を記したが、古い順に並記すると、北マケドニア(2004年3月)、モンテネグロ(2008年12月)、アルバニア(2009年4月)、セルビア(2009年12月)、ボスニア・ヘルツェゴビナ(2016年2月)である。

 加盟候補国に認定されたのは、それぞれ2005年12月、2010年12月、2014年6月、2012年3月、ボスニア・ヘルツェゴビナはまだである。さらに、加盟交渉が開始されたのは、モンテネグロとセルビアのみで、前者が2012年12月、後者が2015年12月である。

 このように時間がかかるのは、EU法の総体系35章を全て受け入れ、国内法に取り込まなければならないからである。それが完了しているかどうかを、各章毎に審査しなければならないので、時間が必要なのである。加盟条件を全て満たし、欧州議会の承認を得て、全加盟国と候補国が批准してはじめて正式加盟となる。

 ロシアに侵略されたウクライナへの同情心から、以上のようなルールを無視してウクライナのみを政治的に優遇することは、公平の観点から問題であるし、他の加盟待ちの国々は不満を持つだろう。そのような二重基準(ダブルスタンダード)は、EUの国際的な評価にも関わってくる。

 フォンデアライエン委員長は政治的資質に欠ける。ロシアがウクライナを侵略した直後の2月27日、ウクライナ支援を表明して、「ウクライナはEUの一員、加入してほしい」と感情的な発言をしている。これは、ミシェルEU大統領をはじめ各方面から批判を浴び、委員長は発言を撤回せざるをえなくなった。

 また、5月4日には、ロシア産原油の段階的輸入禁止提案を行ったが、加盟国への十分な根回しをせず、ハンガリーの反対にあって、頓挫、つまり大幅な譲歩の余儀なきに至っている。

 彼女は、ドイツで第3次、第4次メルケル内閣で国防大臣を務めたが、様々な問題への対応について、その能力が疑問視されたのである。

 アメリカのバイデン大統領とともに、フォンデアライエン委員長は、ウクライナ戦争の解決などに主導的な役割を果たさねばならないが、両者とも、危機の時代の指導者としては心許ないかぎりである。政治は結果責任である。過剰な感情移入やパフォーマンスは避けねばならない。

舛添 要一 (国際政治学者)

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