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独クーデター未遂、極右やロシアとの接点も捜査

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【舛添要一が語る世界と日本(172)】世界的に民主主義が退潮する中で

公開日: 2022/12/13 (ワールド)

CC BY-SA ドイツの連邦議会議事堂=CC BY-SA /Tilemahos Efthimiadis

 12月7日、ドイツで、国家転覆を目指すテロ組織のメンバーら25人が逮捕された。

 陰謀論を唱える「ライヒスビュルガー(帝国臣民)」という極右のドイツ帝国信奉者の団体で、退役軍人などが参加し、連邦議会襲撃を計画していた。ドイツ政府は約3000人の警察官を導入して、ドイツの11州160カ所のみならず、オーストリア、イアタリアの拠点も捜索した。

 このクーデター未遂事件の主犯は、かつてドイツ東部の一地域を支配していた貴族の家系の「ハインリッヒ13世」を名乗る男で、第2次大戦後に生まれた民主的な連邦共和国を認めない立場である。

 また、ロシア人女性が一人逮捕されており、この組織がロシアと接触していたという報道もあるが、ロシア政府はそれを否定している。

 アメリカでは、「ディープステート(闇の政府)」が国家を裏で操っているという陰謀論をQAnonが拡散し、その闇を打ち砕くために登場した救世主としてトランプを崇めた。そして、トランプが敗北した2020年の大統領選挙の結果を認めず、2021年1月6日に議会を襲撃したのである。今回逮捕されたドイツのテロ集団もQAnonの考え方を共有し、独連邦議会の襲撃のヒントを得たという。

 逮捕された者の中には、極右政党AfD(ドイツのための選択肢)に属する元連邦議会議員も含まれており、AfDとの関係も捜査の焦点となっている。

 ドイツでは不法移民の流入で治安悪化、文化摩擦など様々な問題が生じており、それに対する国民の不満を背景にAfDが勢力を拡大した。第一次世界大戦後のワイマール共和国で経済不況による生活の困窮から、ドイツ国民が反ユダヤ主義のナチスを支持していったのと同じである。

 ドイツのみならず、ヨーロッパでは移民や難民に対する反感が高まっており、イタリアでも移民排斥を訴えるネオファシストのジョルジャ・メローニが首相に就任している。このような排外主義的ナショナリズムが、ライヒスビュルガーのような勢力の台頭を許したのである。

 この組織の懐古主義、復古主義は帝政ドイツの復活を理想としており、そのアナクロニズムは1世紀前の事件を思い起こさせる。1922年10月、ムッソリーニはクーデターじみたローマ進軍を敢行し、イタリア政府の非力さを浮き彫りにした。その結果、1年生議員ながら、政党間の話し合いと国王の大命降下によって、ムッソリーニは首相に就任している。

 その成功に影響されたヒトラーは、1923年11月にミュンヘン一揆を起こすが、これは失敗した。しかし、この事件によりヒトラーやナチスの名声は高まり、後の勢力拡大へと繋がるのである。

 今回のような時代錯誤的な企ては、一部の頭のおかしい集団が起こした馬鹿げた事件なので、そんなに騒ぎ立てる必要はないという意見もドイツにはある。

 しかし、昨年時点で、ライヒスビュルガーの支持者は2万人を超えており、さらに増加しているという。ショルツ政権が、大規模な捜査を実行したのは、その潜在的危険性を認識したからである。

 アメリカやドイツのような先進国では、新型コロナウイルスの感染流行についても、科学的知見ではなく、陰謀論に基づく解釈がSNSなどを通じて拡散している。日本でもそうであり、たとえばワクチンの「危険性」を警告する主張が拡散している。コロナ流行もまた世界の陰謀論者に火に注ぐ油を与えたようである。

 そして、ウクライナ戦争の勃発は、陰謀論の隆盛に拍車をかけることになった。ロシアとウクライナの間の宣伝合戦の中で、何が真実なのかが分かりにくくなっている。それだけに、陰謀論による謎解きが受けるのである。

 近年は、民主主義国家の数が減り、権威主義国家の数が増える傾向にある。世界経済の悪化で国民の不満が高まり、それを解消するに手段に関して民主主義政府のパフォーマンスが劣悪になっており、しかも議会との関係で政策の決定が遅延する傾向にある。

 これに対して、権威主義国家、独裁国家は決定が迅速であり、その政策がどのような結果をもたらすかは別として、政府の効率が高い。その点で、民主主義国家に対して優位に立っていると言える。

 このような傾向は今後ますます強まっていくことが予想される。そのような国際情勢の中に、今回のドイツのクーデター未遂事件を位置づけることもできよう。

舛添 要一 (国際政治学者)

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