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バイデン公文書問題で浮き彫り 公文書管理の日米の差 

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【舛添要一が語る世界と日本(177)】公文書管理が民主主義の質を決める

公開日: 2023/01/17 (政治, ワールド)

アメリカ国立公文書記録管理局=cc0 アメリカ国立公文書記録管理局=cc0

 バイデン大統領が、機密文書の管理を巡って批判されている。

 副大統領時代の機密文書が、昨年11月2日にワシントンの個人事務所で、12月20日には私邸で見つかった。それに加えて、1月11~12日には新たに5枚、文書が出てきた。

 アメリカでは、大統領や副大統領が退任するときには、職務に関する文書を国立公文書館に渡すことが法律で義務づけられている。

 昨年の公文書「発見」のニュースは、今年になって1月9日にCBSが報道したことで明らかになり、ホワイトハウスもこれを追認した。しかし、公表まで2ヶ月以上も経っており、11月8日の中間選挙前に意図的に隠蔽していたのではないかとの疑いが強まり、とくに野党の共和党からの攻撃が激しくなっている。

 岸田首相との首脳会談の冒頭でも記者たちからこの問題を声高に指摘される場面が日本のテレビでも伝えられた。会談後に共同記者会見を行わなかったのも、この問題を質問されるのを避けるためだったと言われている。

 先の中間選挙の結果、下院は共和党が過半数を握っている。トランプ前大統領も、機密文書を多数自宅に保管していたことを民主党に厳しく批判されており、バイデン大統領にとっては、今回はそのブーメラン効果とも言われるような逆風となったのである。バイデン政権にとっては、頭の痛い問題である。

 それでは日本の公文書管理はどうなっているのか。

 行政のトップが公職退任時に、職務上の公文書を公文書館に引き渡すというようなルールはない。

 私も行政の長を務めたが、大臣在職中は、公文書を自宅に持ち帰ることがよくあった。それは、職場ではゆっくりと読んで検討する時間がないからであり、夜、自宅で復習するためである。また、週に1日は公文書管理の日を設け、項目毎にファイルして自宅で保管していた。

 そうすることによって、週末などを利用して、懸案の問題についての解決策を考えるときの参考になるからである。退任時には、すべてシュレッダーか焼却の処分にしたので、全く残っていない。処分方法に関しても何の決まりもない。

 公文書の機密性について言うと、90%はほとんど公表資料である。大臣にまず説明した後、同じ資料をマスコミに配布するからである。記者たちは、役人から提供された資料で記事を書く。その資料は、役所の担当部署で保管されているはずである。

 つまり、機密性の高い文書はほとんどなく、もし極秘のような資料があれば、説明後に大臣から回収する。そもそも、アメリカのように “classified” と ”unclassified”の区別は明確にされていない。

 行政の長が接する機密文書の比率は、日本よりもアメリカのほうが遙かに高いのではあるまいか。それは、民主主義に関する認識が彼我で異なるからである。単純化して言うと、政治家主導のアメリカと官僚主導の日本との相違である。

 政権交代があると、役人まで交代するスポイルズ・システムのアメリカでは、政権の座にある政治家が数多くの機密文書に触れる。その上で、政治的判断を下し、政策を決定するのである。

 一方、日本では誰が首相や大臣になろうが、各省庁が粛々と自らの敷いたレールの上を走って行く。意図的に大臣に見せない資料もある。別の言い方をすれば、大臣に渡す文書はあまり価値のないものであることが多い。

 選挙で選ばれた政治家が、行政の舵取りをすべきだが、日本の場合は、官僚機構が独立性を持つ「政治的組織」となって、省益を守るために、持てる情報を独占し、それを大臣にすら明らかにしないのである。もちろん国会にも示さない。

 このような状況になった一因は、政権交代が頻繁に行われないことにある。政治主導の統治を確立するためには、政権交代によって、政策も官僚の人事も大きく変わるという緊張感が必要である。官僚機構側で、森友・加計問題のような情報隠滅が行われてはならないのである。

 日本の民主主義の質を高め、官僚主導から政治主導に移行するためにも、公文書管理のあり方を検討することは意義がある。

舛添 要一 (国際政治学者)

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