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北欧バランス崩れ、ロシアの勢力後退は必至 

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【舛添要一が語る世界と日本(188)】ウクライナ侵攻が裏目に 欧州外では中露で勢力拡大

公開日: 2023/04/04 (ワールド)

CC BY フィンランドとロシア国境=CC BY /dr.eros

 3月30日、トルコ議会がフィンランドのNATO加盟を承認し、加盟が決定した。ロシアは反発するだろうが、プーチン大統領のウクライナ侵攻は、ロシアに配慮する外交政策を展開してきた国まで敵陣に追い込んでしまった。スウェーデンについては、トルコはクルド人武装組織に対するテロ対策が不十分だとして加盟に反対している。ハンガリーも反対である。

 ノルウェー、デンマーク、スウェーデン、フィンランドの北欧4カ国の安全保障政策は多様であった。ノルウェーとデンマークはNATOの創設メンバーである。フィンランドはロシアに配慮する政策を採用した。そして両者に挟まれたスウェーデンは重武装中立政策を展開してきた。この微妙な均衡を「ノルディック・バランス」と呼ぶ。

 フィンランドは、ロシアの隣国で、国境が1300㎞にわたり、ロシア第二の都市サンクトペテルブルクから目と鼻の先にある。1939年9月1日に勃発した第二次世界大戦は、その1週間前の独ソ不可侵条約の締結が前提にあった。

 ヒトラーとスターリンの密約であるが、ドイツとソ連は、ポーランドなど周辺諸国を分割して奪い取る作戦に出た。11月にはソ連軍がフィンランドに侵攻した。フィンランド軍は激しく抵抗したが、領土の10%を失って休戦した。しかし、この冬戦争における果敢な反撃のおかげで、独立を保つことができたのである。

 その経験から、フィンランドは、第二次大戦後はソ連を刺激しないためにNATOやECに加盟しなかった。他方、ワルシャワ機構軍にも参加しなかったのである。その意味では中立であるが、ロシアへの配慮ということが「フィンランド化」という表現で西側から揶揄されてきた。

 米ソ冷戦が終わると、フィンランドは、1995年にEUに加盟し、2000年にはユーロを通貨として採用している。その意味で、西側の一員にすでになっていたと言ってもよく、軍事的にもNATOとの協力関係を深めていた。

 そこに、今回のロシア軍のウクライナ侵攻である。その状況を見て、フィンランドは、「明日は我が身」という思いで、NATOへの加盟申請を行ったのである。その結果、加盟が認められたのである。

 4月2日には、フィンランドで国会選挙(一院制、定数200)が行われたが、投票の結果、中道右派の「国民連合」が48議席を獲得し、第一党になった。2位は右派のフィンランド人党(フィン党)で46議席、マリン首相率いる社会民主党は43議席で3位となった。これから連立政権交渉が行われるが、マリン政権は崩壊した。しかし、NATO加盟には3党とも賛成しているので、選挙の結果で変化することはない。

 プーチンのウクライナ侵略は、北欧の安全保障体制を根本から変えてしまいそうである。スウェーデンのNATO加盟が決まれば、スカンジナビア半島全体がNATOに組み込まれる。

 2014年にロシアはクリミアを併合したが、それを受けて、NATO加盟国のバルト三国、ポーランド、チェコ、スロバキア、ハンガリー、ルーマニア、ブルガリアの東欧9カ国は、結束を固めるために「ブカレスト9」を設立した。北はエストニアから南はブルガリアまで、ロシアに対して大きな壁を結成したのである。そのさらに北にフィンランドという長い壁が加わった。

 ベラルーシはロシアの同盟国であるが、ウクライナまでNATO入りすると、その壁がさらに肥大化することになる。それを阻止するためのウクライナ侵攻だったはずが、逆の事態を引き起こしてしまったのである。

 そして、NATOの戦略次第では、ロシアの隣に核ミサイルをはじめアメリカ製の兵器が配備されるということになる。これはプーチンにとっては悪夢であるが、その悪夢が現実のものとなりつつある。

 問題は、それを阻止するために、ロシアが何らかの行動に出ないかどうかということである。プーチンは、ベラルーシに戦術核兵器を配備することを決めた。

 NATOは、戦車に加えて戦闘機の供与も始めている。最新鋭の武器を手にしたウクライナ軍は頑強に抵抗し、東部ドネツク州のロシアによる掌握を阻止している。停戦の見通しは全く立っておらず、戦闘は長期化しそうである。

 「ノルディック・バランス」の崩壊により、ヨーロッパの戦略地図は大きく変化するであろう。1917年のロシア革命、1918年の第一次世界大戦終結後のロシアが置かれたように、領土は縮小し、影響力が減退した状況になる可能性がある。

 しかし、当時と異なるのは、アジア、アフリカ、中東などで、中国とともにロシアが影響力を増していることである。地球儀を眺めて見れば、まだ、ウクラナ戦争後の国際秩序がどうなるかは見通せないのである。

舛添 要一 (国際政治学者)

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