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高まる武漢ウイルス研起源説は何を意味する

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【藤和彦の目】故意でない漏出か 再考される生物兵器説

公開日: 2021/07/01 (ワールド)

【藤和彦の目】故意でない漏出か 再考される生物兵器説

 新型コロナウイルスの起源を巡り、新たな展開が次々と起きている。最近の動きで特筆すべきは、6月18日付香港紙サウスチャイナ・モーニング・ポストが「中国国家安全部(スパイ組織)のナンバー2が今年2月、娘とともに『新型コロナウイルスが武漢ウイルス研究所から流出した』ことを裏付ける情報を携えて米国に亡命した」と伝えたことである。

 3月中旬にアラスカで行われた米中外交トップ会談で、中国側はこの人物の送還を求めたが、米国防総省情報局(DIA)に身を寄せていたため、米国側はその存在を知らなかったとされている。

  中国高官の亡命について、中国政府は火消しに躍起になっているが、米国政府もこれまでのところ公式な見解を出していない。この人物が持ち込んだ情報のせいかどうかはわからないが、新型コロナウイルスの起源についてのバイデン政権の対応がその後大きく変わったことだけは事実である。

 この騒ぎによって改めて思い起こされるのは「新型コロナウイルスが中国人民解放軍の生物兵器として武漢ウイルス研究所で開発された」という仮説である。「陰謀論」として一笑に付されていたが、このところその信憑性が増しつつある。

 米国務省が4月15日に公開した武漢コンプライアンスに関する報告書で「中国当局は生物兵器禁止条約(1975年に発効)に違反してウイルスなどの軍事的応用に関する活動を行っている」と初めて記載した。

 4月9日付英紙デイリー・メールは「米国務省が対外秘としている報告書の中に『武漢ウイルス研究所の研究員を含む中国の科学者は、2015年からコロナウイルスの軍事的可能性に関する研究を開始した』と記載されている」と報じている。

 4月8日付豪紙オーストラリアンは、米国務省の方針転換の背景に同省が昨年入手した人民解放軍の科学者らが2015年に作成したとされる文書の存在を指摘している。その文書には「生物兵器を使用して最大の被害を引き起こす理想的な条件」が縷々説明されており、その目的は「このような攻撃で病院での治療を必要とする患者を急増させ、敵の医療体系を崩壊する」ことである。

 文書の執筆者には「第1次世界大戦は化学戦争、第2次世界大戦は核戦争なら、第3次世界大戦はバイオ戦争になる」とする戦略的認識がある。まさに新型コロナウイルスのパンデミックで起きた大惨事を彷彿されるものであり、「新型コロナウイルスは武漢ウイルス研究所がつくった生物兵器である」との印象を持たせる内容である。

 筆者は新型コロナウイルスの起源についての現段階の見解は以下のとおりである。
①武漢ウイルス研究所の石正麗博士たちは2012年に雲南省の鉱山に生息するコウモリから新たなコロナウイルスを多数抽出した。
②2013年に新型コロナウイルスと遺伝子配列が96.2%共通するRaTG13ウイルスを発見した。
③2017年に多国籍の科学者チームとともにRaTG13ウイルスから新型コロナウイルスを作製した(石氏は2017年に「人間に伝染する恐れのあるコウモリのコロナウイルスの変異種を作った」とする論文を発表している)
④その後2019年までに管理上の不備で新型コロナウイルスが流出した。
 
 筆者が意図的な流出ではないと考えるのは、発生場所が中国国内であり、中国側のワクチンの手配が整っていなかったことが挙げられる。6月7日付英紙デイリー・メールは「人民解放軍の科学者は昨年2月24日に軍を代表して新型コロナウイルスワクチンに関する特許出願を行った。この科学者は石博士と共同で研究していたが、その3カ月後に不慮の死を遂げた」と報じたように、中国側はワクチン開発の準備を進めていた形跡があるが、予期せぬ形で不慮の事態が生じた。

  このような事情に加えて、中国の研究所の安全管理のレベルが国際的に見て著しく低い疑いもある。

 2018年に武漢ウイルス研究所を訪問した米国大使館の外交官が「同研究所の安全運営に問題がある。コウモリのコロナウイルス研究はSARSのようなパンデミックを引き起こすリスクがある」と警告していたことが明らかになっているが、米国はSARS発生以降、中国の研究所の動向を注視してきた(SARSウイルスも中国の研究室から漏洩したとの説がある)。

  中国は近年、猛烈な勢いでウイルス研究を進めているが、内情を知る中国の専門家も自国の安全管理に懸念を示していた。武漢ウイルス研究所は最も危険性が高いウイルスなどの病原体を取り扱う研究施設(BSL4施設)である。

 1万件以上のコウモリウイルスのサンプルを中国全土から収集したとされているが、所長は2019年の時点で「中国のウイルス研究所は深刻な予算不足の問題に直面しており、安全面の配慮がなおざりになっている」ことを認めている。中国科学院OBも「米国などの研究所と異なり、中国の研究所は明らかな欠点を有する」と述べている(6月5日付フィナンシャル・タイムズ)。
 
 中国政府は武漢ウイルス研究所の事態を改善する措置を講じないばかりか、新たにBSL4研究施設を設立する計画を有している(6月6日付米FOXニュース)。

 BSL-4研究施設は現在、米国や英国、インドなど世界23カ国で運営されているが、そのうち3分の1が安全レベルが低いとされていることから、米ペトレイアス元CIA長官は「危険なウイルス研究所の国際管理が必要である」と主張している。

 国際社会は一刻も早く中国の研究所のあり方についての情報公開を求めることで、中国発の次なるパンデミックををくい止めるべきではないだろうか。

藤 和彦 (経済産業研究所コンサルテイング・フェロー)

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藤 和彦(経済産業研究所コンサルテイング・フェロー)
1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣参事官)。2016年から現職。著書に『原油暴落で変わる世界』『石油を読む』ほか多数。
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