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「新型コロナ流出源」で対立の米中 24日が米報告期限

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【藤和彦の目】米は武漢研、中国は米陸軍感染症研と押し付け合い

公開日: 2021/08/11 (ワールド)

Reuters Reuters

 バイデン大統領が5月26日に米情報機関に指示した新型コロナウイルスの起源に関する調査報告の提出期限が8月24日に迫っている。

  米下院外交委員会の共和党議員は2日、「武漢ウイルス研究所の研究員が自然界に存在するコロナウイルスを操作し、2019年9月12日以前にウイルスを流出させたことで人への感染が始まった」とする報告書を公表した。同委員会の共和党議員たちは昨年9月に新型コロナウイルスの起源に関する調査をまとめていたが、その後の公聴会などで得られた情報などを元に新たに作成したという。

  今回の報告書が明らかにした事実でまず最初に注目すべきなのは、武漢ウイルス研究所が2019年9月に150万ドルの予算をかけて、廃棄物処理システムや空調設備の改造に着手していたことである。

 2017年に運用を開始した同研究所については中国駐在の米外交官が2018年に「技術者の訓練不足などを理由にその安全性に重大な懸念がある」とする電報を送っていたが、報告書は「運用開始から2年も経っていない時点での改修工事は何らかのトラブルが発生した証左ではないか」と推測している。

 中国側はかねてから「2019年10月18日から武漢で開催された軍事スポーツ世界大会に参加した米国人選手が中国に新型コロナウイルスを持ち込んだ」と主張している。
 
 この点について報告書は「世界109カ国から9308人の選手が集まり、329の競技が実施されたが、武漢ウイルス研究所に近い会場は無観客だった。参加したカナダ選手が『街がロックダウン状態だった。私は到着後から12日間、咳や下痢などの症状に悩まされた』と証言している」として、「この大会に参加した各国の選手たちが新型コロナウイルスを世界に広げることになった」と逆の主張を行っている。

 報告書は武漢ウイルス研究所でコロナウイルス研究の中心的な役割を果たしてきた石正麗氏についても言及している。石氏は今年6月のニューヨーク・タイムズ紙のインタビューで「私の研究所では自然界に存在するコロナウイルスを遺伝子を操作してウイルスの機能を高める実験(機能獲得実験)を行ったことはない」と話した。
 
 報告書は「石氏らは米国の国立衛生研究所の資金とエコヘルス・アライアンスの代表であるダザック氏(WHOの武漢調査団に参加した唯一の米国人)の協力を得て、2018年から2019年にかけて機能獲得実験を行ってきた」と見ている。

  だが武漢ウイルス研究所が機能獲得実験を行ったことを示す決定的な証拠は提示できていない。武漢ウイルス研究所のデータベースにアクセスできない状態が続いているからである。石氏は「外部からサイバー攻撃を受けたことから、保全上の理由でオフライン化した状態になっている」と弁明している。

 このデータベースには研究所が収集した22000以上のコウモリなどのウイルスサンプルと遺伝子情報が収録されていることから、米国側は「このデータベースにアクセスできれば新型コロナウイルスの起源を突き止める決定的な証拠が手に入る可能性が高い」と考えているが、現在まで中国からの協力は得られていない。

  報告書の内容は隔靴掻痒の感が否めなかったが、その公表直後の5日、米CNNは「米情報機関が武漢ウイルス研究所が扱っていたウイルスのサンプルの遺伝子情報を含む膨大なデータを入手した」と報じた。ウイルスの遺伝子情報を解析する機器は外部サーバーとつながっていることが多いことから、ハッキングにより入手された可能性があることが指摘されている。

  「喉から手が出る」ほどほしい証拠を得た情報機関は、全データを処理する計算能力の確保が必要となるため、エネルギー省傘下の国立研究所などに分析させているが、筆者は中心的な役割を担っているのはローレンス・リバモア国立研究所だと考えている。

 同研究所は生物学に関する専門知識が豊富なことで知られており、「新型コロナウイルスからCGG-CGGという組み合わせの塩基配列を発見された。このような塩基配列は自然界では存在せず、ウイルスの感染力を高めるなどの実験を行う際に人為的に注入されることが多いことから、『中国の武漢ウイルス研究所から流出した』とする仮説は妥当である」との報告書(非公表)を2020年5月に作成していた(6月6日付ウオ-ル・ストリート・ジャーナル)からである。

 既に新型コロナウイルスのゲノム解析を行っているのであれば、膨大なデータの解析に多くの時間を要しないかもしれない。

  中国側もこれまでの守勢中心から米国を積極的に攻撃する姿勢へと転じている。
 
 中国科学技術日報は6日「ノースカロライナ大学のベリック教授が2008年に『疑似SARSウイルス人工合成』という論文を発表した」という事実を提示した上で、「この技術を活用して米軍基地『フォート・デトリック』内の陸軍感染症医学研究所が新型コロナウイルスを誕生させた」と報じた。

 中国では「フォート・デトリックから新型コロナウイルスが流出した」とする説が広く信じられており、中国国営メデイアのグローバルタイムズが実施したフォート・デトリックの実験室に対する調査を世界保健機関(WHO)に求める署名運動に約2500万人の国民が参加しているという。

 一方、米国では過半数の国民が「武漢ウイルス研究所から新型コロナウイルスが流出した」とする説を信じるようになっており、議会での主導権を握る民主党も共和党と同様の歩調をとるようになるのは時間の問題だろう。このように新型コロナウイルスの流出を巡る米中の対立は抜き差しならない状況になっているのである。

藤 和彦 (経済産業研究所コンサルテイング・フェロー)

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藤 和彦(経済産業研究所コンサルテイング・フェロー)
1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣参事官)。2016年から現職。著書に『原油暴落で変わる世界』『石油を読む』ほか多数。
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