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中国製ワクチンへの疑義広がる 中国は情報公開を

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【藤和彦の目】RNAでなく不活化ワクチンの限界と将来リスク

公開日: 2021/06/23 (ワールド)

中国のシノバック・ワクチン=Reuters 中国のシノバック・ワクチン=Reuters

 中国政府は6月上旬「中国は既に全世界に3億5000万回分のワクチンを提供した」ことを明らかにした。中国国内のワクチン開発企業は24時間フル稼働で生産に当たっており、ワクチン生産量は大幅に増加している。

 中国は40カ国以上にワクチンを輸出しており、世界保健機関(WHO)も「一般的な冷蔵庫で保管できる」メリットに着目して中国製ワクチンについての緊急使用を承認した。

  ワクチン生産大国であるインドが自国の感染爆発のせいで海外への輸出を停止する中で中国製ワクチンの存在感が高まっているが、輸入国から「感染拡大防止の効果が疑わしい」との声が高まっている。

 まず最初に問題になったのはチリである。チリはワクチン接種が最も進んでいた国の一つだったが、4月に入ると国内で感染が再び拡大し、チリ政府は6月10日、首都サンチャゴの全域にロックダウンを再導入すると発表した。チリで接種されているワクチンの9割が中国のシノバック製ワクチンである。

  バーレーンでも同様の問題が起きている。バーレーンは中国のシノファーム製ワクチンの接種率が極めて高いのにもかかわらず、感染者が急増している事態を受けて、ワクチンの2回接種を完了した人を対象に米ファイザー製ワクチンの追加接種を開始した。

  インドネシアでは中国製ワクチンを接種した医療関係者数百人が新型コロナウイルスに感染したことが明らかになっている(6月18日付ロイター)。

  新型コロナワクチンの有効性に関する報告書の公表がこのところ相次いでいる。

 JPモルガン・アセット・マネジメントは11日「欧米製ワクチンを採用している国々(米国、英国、フランスなど9カ国)では人口の40%以上に接種した後、感染者が大幅に減少したのに対し、中国製ワクチンを採用している国々(9カ国)ではワクチン接種後に感染者が減少したのはハンガリーのみであり、特にバーレーン、モルデイブ、セイシェルでは感染拡大が深刻化している」との分析結果を公表した。

  オックスフォード大学も「世界で最も感染率の高い上位10カ国のうち、パラグアイを除く9カ国が中国製ワクチンを採用している」との研究結果をまとめている。

  フランス政府はワクチンを接種した入国者に対する緩和措置を発表したが、中国製ワクチンが対象外となったことから、中国側はフランスに「同等の制裁」を行うと抗議した。

  韓国政府もワクチンを接種した入国者に対する緩和措置を公表したが、中国製ワクチンを対象とした。これについて中国政府は歓迎の意を評したものの、韓国国内では「再び感染が拡大する」との不安が広がっている。

  中国国内に目を転じると、自国製ワクチンの接種が猛烈な勢いで進んでいる。1日平均のワクチン接種回数は2000万回以上であり、人口の40%以上がワクチンを1回以上接種した。総接種回数も10億回に到達し、世界全体の接種回数である25億回の4割近くを占めている。

  ワクチン接種が進むにつれて、マスク着用や社会的距離確保の方針が緩和されている欧米諸国とは対照的に、中国国内の移動制限措置などはいまだに厳格なままである。最近も広東省でインド由来の変異株(デルタ)の感染者が発見されると大規模なPCR検査が実施されるなどの強硬な手段を講じられている状況を見るにつけ、「中国政府自身も自国製ワクチンの有効性を信じていないのではないか」と思いたくなる。

  中国の疾病対策当局も4月に「中国製ワクチンの効果は小さい」との見方を示していた。その直後にこの発言は撤回されたが、中国当局もバーレーンのようにファイザー製などのワクチンの追加接種を検討しているようである。

  ファイザー製などのワクチンの有効率が90%以上であるのに対し、中国製ワクチンの有効率が50%程度(WHOを定めた最低水準)と低い原因はその製造方法にある。

 中国企業が開発したワクチンは不活化ワクチンである。熱やアンモニアなどで不活化した(殺した)ウイルスを体内に投与して抗体をつくるという従来の製造方法である。この方法はインフルエンザワクチンなどで使われているが、インフルエンザウイルスに比べて増殖の速度が遅い新型コロナウイルスでは体内で抗体ができにくい。

 このためワクチンの有効性が低いとの判断から、欧米のワクチンメーカーはこのやり方を採用しなかった。現在の状況にかんがみるとその予測が正しかったと言えるだろう。

  中国製ワクチンの問題は有効性の低さにとどまらない。中長期的なスパンで見た安全性についての疑義もある。筆者が懸念しているのはADE(抗体依存性感染増強現象)である。ワクチン接種によってつくられた抗体がウイルスの細胞への侵入を防ぐのではなく、逆に細胞への侵入を助長する現象のことである。

 大阪大学の研究チームが最近、新型コロナウイルス感染者の体内に「感染を増強させる抗体」がつくられていたことを突き止めていることから、ADEに対する懸念が深まっている。

 ファイザー製などのワクチンでもADEのリスクはあるが、不活化ワクチンについてはそのリスクを懸念する研究者が少なくない。新型コロナウイルスと遺伝情報が似ているSARSウイルスのワクチンは、研究中にADEが生じたためにその開発が断念されたという経緯があるからである。      

 中国製ワクチンは感染防止に役立たないばかりか、ADEのリスクが高まる危険な代物かもしれないのである。中国政府は一刻も早くワクチンの有効性や安全性に関する情報公開を行うべきではないだろうか。

藤 和彦 (経済産業研究所コンサルテイング・フェロー)

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藤 和彦(経済産業研究所コンサルテイング・フェロー)
1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣参事官)。2016年から現職。著書に『原油暴落で変わる世界』『石油を読む』ほか多数。
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