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中国とインドの緊張激化 なぜ米中対立が中印対立に波及

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【藤和彦の眼】インドを襲う災難続々 水、新型コロナにスーパーサイクロン 

公開日: 2020/05/29 (ワールド)

CC BY ブラマプトラ川が流れる、インドの都市グワーハーティー=CC BY /dritzdcool

藤 和彦 (経済産業研究所コンサルテイング・フェロー)

 5月25日インド紙はこぞって中印間の軍事的緊張の高まりを報じた。

 「中印の西側の国境紛争地域にあるガルワン川流域に中国軍が1万人規模の軍隊を派遣している。中国軍はさらに臨時用のインフレ施設を建設した」

 中国軍とインド軍は直近の5月9日にも東側の国境紛争地域で小規模な衝突を起こしている(インド兵4人と中国兵7人が負傷)。

 両国は衝突を巡って19日協議が行われたが、物別れに終わった。この事案について米国は20日、「現状変更に向けて利用している」として中国を非難するとともに、インドに対しては抵抗を促した。

 インドと中国間の確執は、1962年10月から11月にかけての中印国境紛争にさかのぼる。この紛争で惨敗を喫したインド軍は、「打倒中国」のために核兵器開発に踏み切ったとされている。

 その後もインド軍と中国軍の間で偶発的な小競り合いが生じていたが、2017年6月に中国側がブータンとの道路建設に踏み切ったことから、両国間の緊張が再び高まった。

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 中国は最近、インドとの歴史的なつながりが深いネパールにも接近している。首都カトマンズと中国チベット自治区を結ぶ鉄道計画を進めているネパール政府は5月18日、インドとの領有権問題の火種となっている地域を領土に含む新しい地図の発表を決定したが、インド側は「中国の関与がある」として猛反発している。

 インドはさらにベンガル湾に流れるブラマプトラ川(中国名はヤルンツァンポ川)にも神経を尖らせている。中国チベット自治区を水源とするブラマプトラ川は、インドやバングラデシュの住民1億人以上に水を供給しているが、2015年頃から中国が上流でダムを建設し、「水を抜き取っている」疑念が生じているからである。

 「21世紀は貴重な水の取り合いで戦争が起きる」との警告が20世紀末から出ているが、ブラマプトラ川は潜在的な紛争地域の一つなのである。

 中国がインドとの間で国境を巡る軍事的緊張を高めている背景には、「一帯一路」構想があることは間違いないが、新型コロナウイルスのパンデミックを巡る米中間の対立も関係しているのではないか、と筆者は考えている。

 現在、米国政府は、国際保健規則(WHO加盟国のルール)第6条第1項及び第2項(加盟国はウイルス感染症発生の情報をすぐ開示してWHOに報告し、それを各国が共有しなければならない)を根拠に、関係国を巻き込みながら、中国に対して数十兆ドル規模の損害賠償をさせようとする動きが活発化しているが、インド政府がこの動きに同調する可能性がある。

 人口13.5億人を擁するインドのモデイ首相は3月24日、インド全土を都市封鎖(ロック・ダウン)すると宣言、その期限は複数回延長されている。しかしこれにより都会で仕事を失った出稼ぎ労働者たちの大移動が生じ、新型コロナウイルスの感染が地方に拡大するマイナスの結果を招いてしまった。

 インドの新型コロナウイルス感染者の拡大がとまらず、5月中旬に中国の感染者数を上回り、アジア最多となった(5月26日時点のインドの感染者数は14万5456人)。国内で最も感染者数が多いのはムンバイであり、全体の20%を占めている。

 封鎖が長引く中、インド政府は5月中旬に約28兆円規模の大型経済対策を発表したが、低迷する経済の下支えにどれだけ効果があるか不透明な情勢である。

 2014年5月の就任以来、最大の苦境に追い込まれているモディ首相にとって「泣き面に蜂」だったのは、インド東部に20日夜、観測史上2回目のスーパーサイクロンが上陸したことである。インドと隣国バングラデシュでは住民数百万人が避難したものの、広範囲に被害が出るのは確実である。

 被害の全容は現時点では明らかになっていないが、大勢の住民が避難所に集まることで、新型コロナウイルスの感染がさらに拡大する恐れが強まっている。

 新型コロナウイルスの感染のせいで経済への悪影響が深刻化する中で、モディ首相に近い法律家集団は4月中旬、中国当局のコロナウイルス感染拡大の責任を追及する訴えを国連人権理事会に提出した(5月13日付JBpress)。

 インド政府は今のところ静観の構えだが、インド国内で中国への反発が急速に高まっていることの証左であることは間違いない。

 インド政府が今後米国の動きに応じるようなことになれば、腹を立てた中国がインドに対して懲罰のための軍事行動に出る可能性があるのではないだろうか。1979年のベトナムへの軍事介入の再来である。

 鄧小平は「ベトナムを懲らしめる」と息巻いていたが、ベトナムの抵抗に遭い苦い敗北を喫した。だが国内では、大規模な戦争を主導したことで確固たる権力基盤を固めたと言われている。この経緯を習近平が知らないはずはない。

 新型コロナウイルスの蔓延により、米軍の活動が停滞している隙を突くかのように、中国は南シナ海の実効支配の既成事実を図るなど「火事場泥棒」的な動きを強めている。「新型コロナウイルスとスーパーサイクロンのダメージでインド軍は弱体化している」と判断し、兵員を投入すれば、1962年以来の大規模紛争になってしまうかもしれない。

 人口で世界第1位、アジアでの経済規模第1位の中国と、人口で世界第2位、アジアでの経済規模第3位のインド。ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)が4月27日に明らかにした報告によれば、昨年の軍事費世界第2位は中国(2610億ドル)、第3位はインド(711億ドル)である。

 日本では台湾や香港、朝鮮半島などに対する中国の動向に関心が高いが、核兵器を共に有する中印間の大規模な軍事紛争の勃発リスクについても警戒が必要ではないだろうか。
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藤 和彦(経済産業研究所コンサルテイング・フェロー)
1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣参事官)。2016年から現職。著書に『原油暴落で変わる世界』『石油を読む』ほか多数。
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