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バイデン政権で中東の火薬庫はサウジアラビア 

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【藤和彦の眼】バイデン次期政権はサウジと距離置く?

公開日: 2020/11/25 (ワールド)

Reuters Reuters

 米WTI原油先物価格は1バレル=40ドル台半ばに上昇し、8か月ぶりの高値で推移している。新型コロナワクチンへの期待に加え、米国での政権移行開始が主因である。

  大統領選で勝利を確実にした民主党のバイデン前副大統領が実際に執務を開始するのは1月下旬からだが、早くも世界の原油市場に影響を与え始めている。

 「次期政権が、連邦公有地で石油・ガス開発に関するフラッキング(水圧破砕法)を禁止すれば、訴訟などあらゆる手段を講じる」(11月23日付ロイター)

 このような方針を示したのは米石油協会(API)のソマーズ会長である。

  フラッキングはシェールオイル・ガスの採掘に利用されているが、環境団体は「地下水の汚染につながる」として反対している。民主党内で左派の影響力が強まっていることから、ソマーズ氏はバイデン氏の選挙公約に対し早くも警戒感を露わにしているのである。 

 フラッキングは米国内での原油・ガス生産急増の原動力であることから、制限されれば米国のエネルギー安全保障に悪影響が及ぶ可能性がある。




  米国内のエネルギー自給度が高まったことから、トランプ政権は原油の大生産地帯である中東地域でかつてないほど大胆な外交を展開してきたが、バイデン次期政権はそれを大きく修正するとの見方も高まっている。

  トランプ政権の中東地域での外交方針はイスラエル・ファーストだった。イスラエルにとっての脅威であるイランを封じ込める観点から、オバマ政権時代に関係がぎくしゃくしていたサウジアラビアを優遇した。

  バイデン氏が副大統領だったオバマ政権の外交は、イラン核合意に象徴されるように中東地域のバランスを重視する方針だった。これに不満だったのはイスラエルとサウジアラビアであり、「バイデン政権になれば、オバマ時代の悪夢が蘇る」と危惧するイスラエルとサウジアラビアが急接近するのは当たり前だったのかもしれない。

  イスラエル紙ハーレツは11月23日、「ネタニエフ首相が国交のないサウジアラビアを訪問し、ムハンマド皇太子と会談した」ことを報じた。

 会談にはサウジアラビアを訪れていたポンペイオ国務長官も加わったとされている。ネタニエフ首相は前日の22日、「米国はトランプ大統領が撤退を決めたイラン核合意に復帰すべきではない」とバイデン次期大統領を牽制していた。

   一方、サウジアラビア外相は会談が行われたこと自体を否定したが、会談はサウジアラビアの紅海沿岸に建設中の未来都市「NEOM」で開かれたようである。

 NEOMは大石油改革を推進するムハンマド皇太子の肝いりの巨大プロジェクト(総事業費は5000億ドル)だが、サウジアラビアの人権弾圧などが災いして海外の投資家からの資金確保が遅々として進まない。
 
 サウジアラビア政府は11月21日から2日間、オンライン形式でのG20・主要20カ国・地域首脳会合の議長を務めた。「中東の盟主」を国際的にアピールする狙いだったが、同国の人権侵害への批判が高まるなど、むしろサウジアラビアを取り巻く厳しい環境が浮き彫りとなった。

 財政難から公務員の給与の大幅カットを余儀なくされる状況に陥っており、若年層の雇用環境も厳しさを増している。一連の改革が、成果を上げないどころか経済全体を悪化させていることに苦悩するムハンマド皇太子にとって、イスラエルとの国交正常化で得られるマネーとハイテクは喉から手が出るほどほしいだろう。

  しかし、サルマン国王を始め王族の大半はイスラエルとの国交正常化に後ろ向きである。

  サウジアラビア政府は11月15日、「イスラエルによる東エルサレムの不正な占有状態を憂慮する」との声明を出したように、イスラム教の聖地を抱え、アラブのリーダーを自認するサルマン国王は、2002年にサウジアラビアが提唱した和平案を重視し、パレスチナに寄り添う姿勢を崩していない。

  歴史的な会談が行われた翌日(11月23日)、国営石油会社サウジアラムコの関連施設が、イエメンのシーア派反政府武装組織フーシ派の巡航ミサイル攻撃を受けた。サウジアラビア西部ジッダにある国内向けに日量12万バレルの石油製品を供給する施設が被害を受けた(周辺には米軍が提供するパトリオットミサイルが配備されていた模様である)。

  今年10月以来のフーシ派の攻撃に手を焼くサウジアラビアは11月17日、「もしフーシ派がサウジ国境に緩衝地帯をつくることに合意すれば、国連が提案する全面的な停戦に合意する」と妥協案を提示していた矢先の出来事である。フーシ派を支援するイランが、イスラエルと急接近するサウジアラビアへの警告を送ったという意味合いがあったのかもしれない。

   「バイデン政権になれば、米国の庇護が受けられなくなる」と焦るサウジアラビアの一連の行動も気になるところである。バイデン政権は平和的なイスラム活動には寛容な姿勢を示すとの懸念から、王室の支配を脅かしかねないイスラム組織(ムスリム同胞団)への弾劾運動を再開している(11月18日付ロイター)。

  サウジ外相は11月18日、独紙のインタビューで「もしイランが核兵器保有国になれば、サウジアラビアも核兵器保有の権利を行使する」と述べたが、サウジアラビアが焦れば焦るほど同国を巡る安全保障環境は悪化してしまう感が強い。

 バイデン政権誕生で、中東地域の地政学リスクの中心はサウジアラビアになってしまうのではないだろうか。

藤 和彦 (経済産業研究所コンサルテイング・フェロー)

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藤 和彦(経済産業研究所コンサルテイング・フェロー)
1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣参事官)。2016年から現職。著書に『原油暴落で変わる世界』『石油を読む』ほか多数。
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