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英雄ファウチ氏が窮地 武漢研流出説の再燃で

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【藤和彦の眼】武漢研とファウチ氏など米感染専門家の関係は

公開日: 2021/06/10 (ワールド)

ファウチ氏=Reuters ファウチ氏=Reuters

藤 和彦 (経済産業研究所コンサルテイング・フェロー)

 新型コロナウイルスの起源について、米国で再び論争が巻き起こっている。

 新型コロナウイルスの起源についてWHOは3月末に公表した武漢調査報告書の中で「動物から人間に感染した可能性が高く、武漢ウイルス研究所から流出した可能性は極めて低い」と結論付けたが、これを疑問視する声が高まっているのである。最近の世論調査によれば、米国人の58%、民主党支持者の43%が武漢ウイルス研究所流出説を支持しているという(6月4日付Zerohedge)。

  バイデン米大統領が5月26日、情報機関に対し「中国で最初に確認された新型コロナウイルスの起源を巡る調査報告を90日以内に行う」よう指示したことを明らかにした。バイデン大統領の政策スタッフは政権移行直後に、トランプ前政権下で非公表で行われていた新型コロナウイルスの起源に関する調査を中止させていた(5月28日付CNN)が、ここに来て方針転換を図ったのである。

 武漢ウイルス研究所流出説は最近まで陰謀論として無視されてきたが、このところ主要メデイアは手のひらを返したように、流出説をあり得る仮説として扱い始めた。

 このような状況の変化で注目を浴びているのは、ニューヨークの非営利団体エコヘルス・アライアンスのピーター・ダスザック代表である。ダスザック氏は昨年2月、医学誌ランセットに「新型コロナウイルスが自然な発生源を持たないことを示唆する陰謀論を私たちは断固として非難する」と宣言し、これをきっかけにメデイアに頻繁に登場することになった。

 その後、「中国ウイルス説」を唱えるトランプ前大統領がエコヘルス・アライアンスへの連邦助成金を打ち切ると、ダスザック氏はメデイアに「陰謀論者たちの犠牲者」として祭り上げられた。

   一躍「時の人」となったダスザック氏は、前述のWHO調査団のメンバーとして唯一中国への入国が認められた米国人となり、WHOが「研究所流出説は非常にありえない」と結論づけるのに主導的な役割を果たしたとされている。

 しかしダスザック氏の「不都合な真実」が次々と明らかになっている。

  ダスザック氏は武漢ウイルス研究所に所属するコウモリのウイルス研究の第一人者である石正麗氏と長年共同研究を行い、十数本近い論文を共同執筆している。さらにダスザック氏が代表を務めるエコヘルス・アライアンスは60万ドルの連邦助成金を受け取り、これを研究資金として武漢ウイルス研究所に提供していたことが明らかになっている。

  武漢ウイルス研究所との関係があまりにも強いダスザック氏だが、トランプ前政権から米国の新型コロナウイルス対策の総責任者として活躍してきた米国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)のアンソニー・ファウチ所長にも疑惑の目が向けられるようになってきている。

 ファウチ氏はダスザック氏と同様、武漢ウイルス研究所流出説を当初から強く否定してきたが、複数のメデイアが「情報自由法」に基づき入手したファウチ氏のメールの中にダスザック氏とのメールが見つかり、話題となっている。

 問題となっているメールは昨年4月のものである。ダスザック氏が「(ファウチ氏がメデイアの前で「新型コロナウイルスは武漢ウイルス研究所から発生したものではない」との見解を示したことについて)勇敢なことだ。「コウモリから人へ感染した」との主張を述べてくれたことに感謝する」とのメールを出すと、ファウチ氏は「親切な手紙をありがとう」と返信したというものである。

 ファウチ氏とダスザック氏との関係はこれにとどまらない。
 
 ダスザック氏の団体は60万ドルの連邦助成金を受け取る際にP3COと呼ばれる米保健福祉省内にある監督委員会の審査を受けていなかったという問題が浮上している。

 P3COは、2011年に米ウイスコンシン州とオランダにある研究所がフェレットと呼ばれる小動物の間で効率的に感染するようにH5N1型鳥インフルエンザウイルスを変異させる実験(機能獲得実験)を行っていたことが明らかになり、大問題となったことがきっかけに設立された組織である。

 2014年からオバマ政権は機能獲得実験に対する連邦助成金の提供を中断していたが、2017年に危険なウイルスの研究を監督するP3COを設けることで機能獲得実験に対する連邦助成金の提供を再開した。しかしエコヘルス・アライアンス経由で武漢ウイルス研究所でのコウモリのコロナウイルス研究のために充てられた連邦助成金はこのP3COの審査を受けていなかったのである。

 その理由はファウチ氏が所長を務めるNIAIDが「機能獲得実験ではない」と判断し、審査をするよう指示しなかったからである。

 ファウチ氏は5月12日の議会で「米国がウイルスの機能獲得実権のために武漢の研究所に補助金を出したことはない」と証言しているが、「この助成金をもとに武漢ウイルス研究所は雲南省のコウモリの体内から見つかったコロナウイルスについての機能獲得実験を杜撰な安全基準の下で行っていた」と考えている研究者は少なくない。

 ファウチ氏は「数十億ドル規模の機関(武漢ウイルス研究所)にコウモリの調査のために年間わずか12万ドルを提供したからといって、我々が(ウイルスの発生に)関与したなどと本気で言いたいのだろうか」と反論している(6月4日付フィナンシャル・タイムズ)が、共和党の議員たちは「議会で嘘の証言を行ったファウチ氏に対して証人喚問を行うべきである」と主張し始めている。

  「新型コロナから米国を救った」との称賛から一転して「新型コロナウイルス発生の共犯者」との疑いをかけられ始めているファウチ氏、バイデン大統領が期限を設けた90日後に米国の情報機関はどのような審判を下すのだろうか。
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藤 和彦(経済産業研究所コンサルテイング・フェロー)
1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣参事官)。2016年から現職。著書に『原油暴落で変わる世界』『石油を読む』ほか多数。
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