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太陽光発電のポリシリコン、世界生産の半分は新疆ウイグル地区

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【藤和彦の眼】米労組から輸入停止求める声、米国の中国離れ加速か

公開日: 2021/04/07 (ワールド)

CC BY CC BY /U.S. Secretary of Defense

藤 和彦 (経済産業研究所コンサルテイング・フェロー)

 今年1月20日に誕生したバイデン米政権は、内外ともに活動を本格化し始めている。

 中国については当初「米国にとって今世紀最大の地政学上の課題」としつつも、「可能なときには協力的になる」としていた。

 協力可能な分野としては、新型コロナウイルスのパンデミック対応や気候変動対策が挙げられていたバイデン政権だったが、日が経つにつれて、中国との協力が非常に難しいことを実感しているのではないだろうか。

 まず最初に新型コロナウイルス対応だが、3月30日に公表された世界保健機関(WHO)の武漢調査団の報告内容を巡り、米中の間の溝の深さが改めて浮き彫りになった。

 バイデン政権は前政権と異なり「中国ウイルス」という呼称こそ控えているが、「WHOの武漢調査団が中国のオリジナルデータに十分アクセスできなかった」と強い不満を表明した。これに中国は猛反発し、「米国の研究所の調査も行うべきだ」と言い出す始末である。これでは米中両大国が協力してパンデミック対応を強力に推進するなど「夢物語」である。

 気候変動問題については、米国のケリー大統領特使が4月3日「中国と協力できることに米国政府は期待を寄せている。バイデン政権は中国との間で気候変動対策のために他の問題を人質にとることはない」と秋波を送っている。

 バイデン政権は22日に米国主催の気候変動サミット開催を予定しており、中国に対しても参加を促している。

 サミットの場で米国は世界で最も多くの二酸化炭素を排出している中国を口説き落とそうとしているのかもしれないが、実際のところ、中国が気候変動に関する米国のリーダーシップなど期待していないのであろう。

 それどころか、米国内で環境問題でも中国との摩擦が生じつつある。米国内での環境問題に関する意識の高まりを受けて意気軒昂な太陽光発電業界だが、太陽光パネルに使われる部材の主要生産地が新疆ウイグル自治区であることが政治問題になりつつある。

 新疆ウイグル自治区では、太陽光エネルギーを電気に変えるために不可欠なポリシリコンの世界の供給量の半分が生産されている。米国最大の労働組合である米労働総同盟産別会議はバイデン政権に対し、新疆ウイグル自治区で生産されるポリシリコンを含む太陽光関連製品の輸入を禁止するよう求めている(3月17日付ブルームバーグ)。

 新疆ウイグル自治区で生産されるポリシリコンが安価な石炭火力発電に依存していることもバイデン政権の環境政策にとって望ましくない。

 米共和党のルビオ、民主党のマークリー両上院議員は3月23日、新疆ウイグル自治区での強制労働で作られた太陽光関連製品に米国がどの程度依存しているかを示すよう、米国太陽光発電協会(SEIA)に要請した。

 これに対しSEIAの幹部は「両議員の懸念を共有している」とした上で「米国の太陽光発電企業に今年6月までに新疆ウイグル自治区から完全に撤退するよう求めている」との決意を述べた(3月24日付ロイター)。バイデン政権は気候変動問題で中国と協力したくても人権問題が障害になっている。

 中国市場からの撤退要求は太陽光エネルギー企業に限ったことではない。

 中国が新疆ウイグル自治区や香港を巡り強硬姿勢を続ける中で、中国で事業を展開している米国企業に対して「中国市場から今すぐ撤退せよ」とする論調が米国内で出てきている(3月31日付ニューズウイ-ク)。

 中国という巨大市場を失うリスク以上に、中国政府から圧力をかけられるリスクとブランドイメージが傷つくリスクの方が遙かに大きいというのがその論拠である。デロイト・トーマツ・コンサルテイングが実施した最近の調査によれば、ブランドに強制収容所の影が少しでもちらつけば、欧米の顧客の多くが離れていくという。

 米航空機大手ボーイングは3月31日、中国との関係については貿易と人権問題を分けて考えるよう米国政府に求めたが、バイデン政権は聞く耳を持つのだろうか。

 バイデン政権の回答は、このところ矢継ぎ早に打ち出され、実行に移されつつある一連の経済対策にあると筆者は考えている。

 バイデン米大統領は3月31日、今後8年間で2兆2500億ドルを投じるとするインフラ投資計画を発表した。バイデン氏は演説で「数百万人の雇用を生み、中国との国際競争に勝てるようにする計画だ」とし、超党派で対中強硬論が広がる連邦議会の状況を念頭に、中国への対抗策としての位置づけを強調した。

 ムーディーズ・アナリティクスは、新型コロナウイルス禍に対応するための1兆9000億ドルの経済対策などが1630万人の雇用増につながり、新たなインフラ計画が10年間で生む雇用は260万人に達すると分析している。

 両経済対策の効果で約1900万人の雇用が生まれる試算だが、2021年2月の米国の非農業部門の雇用者数が約1億4300万人であることにかんがみれば、「第二次大戦後以来最大の雇用創出計画」という看板は伊達ではない。

 巨額インフラ計画については共和党の反対が必至だが、その規模が大幅に縮小されたとしても、バイデン政権の1期目に新たな創出される雇用は1100万人以上になるという。中国経済とのデカップリングが起きたとしても、米国の雇用状態が痛むことはないよう、米国政府は強力な措置を講じているのである。

 マルクス・レーニン主義を信奉し、米国を中心とする民主主義諸国を脅威とみなしてきた中国に対し、バイデン政権は本気モードを全開させ、中国との間で「生死をかけた闘争」を勝ち抜く決意を固めたと言っても過言ではない。

 これに対し日本では「中国との関係を政経分離で対処すべき」との考えがいまだに根強いが、中国という巨大な地政学的リスクを管理するという観点から、対中ビジネスで支障をきたしても危機に陥いることないような戦略を一刻も早く官民挙げて構築すべきではないだろうか。
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藤 和彦(経済産業研究所コンサルテイング・フェロー)
1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣参事官)。2016年から現職。著書に『原油暴落で変わる世界』『石油を読む』ほか多数。
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