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コロナだけではない コウモリ由来のパンデミックに要注意

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【藤和彦の眼】WHO中国調査で中間宿主見つかるか 次のパンデミックは二パウイルス?

公開日: 2021/02/05 (ワールド)

Reuters Reuters

 新型コロナウイルスの発生源を調べるため世界保健機関(WHO)が中国湖北省武漢市に派遣した調査団は2月3日、中国科学院武漢ウイルス研究所を訪問した。WHO調査団は、疫学、ウイルス学、公衆衛生学、動物健康学、食品安全学などの専門家から構成され、2週間の隔離期間を終えた1月28日から現地調査を開始していた。

 武漢ウイルス研究所は、トランプ前米政権が「新型コロナウイルスの流出先だ」と主張していた施設である。WHOの調査団はこの施設に4時間ほど滞在し、「バット(コウモリ・ウーマン)」の異名を持つ著名な研究者、石正麗氏らと協議した。

 石氏は2002年から2003年にかけて中国を中心に世界で流行したSARSウイルスがコウモリ起源だといことを証明して「バット・ウーマン」と呼ばれるようになった。WHO調査団は訪問後「率直でオープンに議論した。重要な質問にも返答があった」としているが、「多くの疑問が残った」とコメントするメンバーもいた。

 ウイルス研究所の訪問に先立ち、WHO調査団は世界で初めて新型コロナウイルスの集団感染が確認された武漢市の華南海鮮卸売市場を視察したが、同市場は徹底的に消毒され、売られていた野生動物(キツネ、アライグマ、シカなど)も回収されていた。当時の状況を正確に把握するのは困難だったとされている。

  「このままでは中国の主張(新形コロナウイルスの発生源は中国ではない)にお墨付きを与えるだけの調査に終わりかねない」との懸念が高まっている。

 だが、WHOはあくまで「調査の目的は、新型コロナウイルスの感染経路を追跡することで、将来のウイルスの感染拡大を防ぐことが重要であり、中国の科学者や公務員と共同調査の協力関係を構築することが重要である」とのスタンスである。どういう意味だろうか。

 新型コロナウイルスのもともとの発生源に関して世界の研究者が注目しているのは、2013年に中国雲南省の洞窟に生息するコウモリから採取されたコロナウイルスである。このウイルスの遺伝情報が新型コロナウイルスと96%以上合致しているからである。

 この洞窟は、昆明市の市街地から南西に40キロメートル、ラオスとベトナムとの国境近くの山村にある。このあたりはかつて銅の採掘場があったが、2012年に坑道に入った人から重症の急性呼吸器疾患が多発した(2020年12月17日付朝日新聞)。

 コウモリの糞にこのウイルスが潜んでおり、それを吸った人が発症したとされている。

 新型コロナウイルスと遺伝情報が近いウイルスはこれだけではないことがわかってきている。1月28日付サウス・チャイナ・モーニング・ポストは「2010年にカンボジア北部で捕獲されたキクガシラコウモリの冷凍試料から新型コロナウイルスに類似するウイルスが発見された」と報じた。

 キクガシラコウモリは、体長6~8センチメートル、鼻の回りの複雑なひだ(鼻花)が菊の花に似ていることが和名の由来である。

 夜行性で昼間は洞窟などで眠っている。このキクガシラコウモリから新型コロナウイルスと遺伝情報が92%以上一致するウイルスが見つかったのである。

 驚くことに新型コロナウイルスに類似するウイルスは、日本のコウモリからも見つかっている。

 東京大学の村上晋准教授(ウイルス学が専門)は2020年11月、「研究室で凍結保存していたキクガシラコウモリ(2013年に岩手県の洞窟で捕獲)の糞から新型コロナウイルスに類似するコロナウイルスが検出された」ことを明らかにした。

 中国以外にカンボジアや日本でこのような発見が相次いでいるのは、新型コロナウイルスのパンデミックを契機にWHOがアジア地域全体でサーベイを行ったからである。

 新型コロナウイルスの発生源はもともとはコウモリだということは共通認識だが、4パーセント弱しか違わない雲南省のコウモリのウイルスでも中間宿主を介さずに自然の進化だけではいまの新型コロナウイルスになるには40年以上の時間が必要とされている。

 SARSの場合はタヌキやジャコウネコから人に感染したが、新型コロナウイルスでも中間宿主が介在している可能性が高い。

 新型コロナウイルスの発生源は遺伝子情報が99%以上が一致しなければならないとされているが、これに該当するウイルスを保有する中間宿主を発見することが今回のWHO調査団の主目的だろう。

 極めて困難な作業を言わざるを得ないが、この作業が不可欠なのは、次のパンデミックの発生が懸念されているからである。

 筆者は2020年11月9日付コラムで「鳥インフルエンザのパンデミック発生のリスク」について述べたが、オランダを拠点とする「医薬品アクセス財団」は1月下旬、「次のパンデミックのリスクは、死亡率が最大で75%とされるニパウイルスの中国での感染爆発である」との警告を発した。

 ウイルスの媒介者となるオオコウモリは、マレーシアやインド、シンガポール、バングラデシュなどで集団感染を引き起こしている。

 最初の感染例は1999年、マレーシアのニパ川沿いに暮らしていた養豚業者だったが、オオコウモリの尿が付着していたナツメヤシの実を食べた豚との接触が原因だったとされている。その後南アジア地域を中心に12カ所で集団感染が確認されている(中国での発生の報告はない)。

 初期症状は風邪に似ており、発熱や頭痛、筋肉痛、嘔吐、喉の痛みなどが生じる。重症化すると急性呼吸不全を起こし、2~3日で昏睡状態になるという。無症状者から感染が広がることも確認されている。

 米CDCは「今後発生が予測される新興感染症の4つのうち3つは動物由来である」としているが、中でもコウモリ由来のパンデミック発生には要注意である。

 次のパンデミックを防止するためには、アジア地域全体でコウモリを始めとする野生動物の監視が必要であり、中国の協力が不可欠なのである。

藤 和彦 (経済産業研究所コンサルテイング・フェロー)

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藤 和彦(経済産業研究所コンサルテイング・フェロー)
1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣参事官)。2016年から現職。著書に『原油暴落で変わる世界』『石油を読む』ほか多数。
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