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EU 農業補助と気候変動対策を紐づけ

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【農を考える】有機農地比率、現在の8%を25%へ引き上げ

公開日: 2021/02/12 (ワールド, 気象/科学)

畑に木を植えて生物多様性を推進する仏有機農家(2017年山田撮影) 畑に木を植えて生物多様性を推進する仏有機農家(2017年山田撮影)

山田 優 (農業ジャーナリスト)

 欧州連合(EU)の共通農業政策(CAP)は、地球環境対策に貢献する方向へ大胆に舵を切る。総予算の4割を温室効果ガスの排出削減などへの貢献を条件とする他、10年間で農地の25%を有機農業にする目標も掲げる。環境問題で国際社会に強いメッセージを送ると同時に、新たな域内農業保護の武器にする戦略だ。

 CAPはEU総予算の3分の1以上を占める。単年度予算主義の日本と異なり、5年以上の期間の農業政策と予算を決める仕組みだ。現在、加盟国の間で新しいCAP改革の議論が進む。

 駐日EU代表部によると、1年前に決めた新しい成長戦略の欧州グリーンディール目標が、CAP改革の根っこに据えられている。2050年に、温室効果ガス排出が実質ゼロとなる「気候中立」を達成するのが同目標の柱で、農業分野を含めEUのすべての政策を動員する。

 CAP改革原案の最大の特徴は、610万戸に上る個別農家に対する補助金と地球環境対策との紐付けだ。従来も補助金には生物多様性への配慮などが義務づけられていたが、新しい制度ではさらに厳格にする。CAP補助金の4割はこうした目標に沿ったものに限定して支払われる。

 農家に対する手厚い支援とされてきたCAP補助金が、農家の具体的な貢献策と引き替えに支払われる「対価」に変わる。エネルギーを消費する農薬や化学肥料などの投入を抑えたり、炭素を多く含む湿地や泥炭地を保護したり、収穫残さの焼却を禁じたりすることが含まれる。二酸化炭素の土壌封じ込めなど、積極的な温室効果ガス削減に取り組む農家にはさらに補助金が上乗せされる仕組みだ。

 生物多様性の保護にも重点が置かれる。従来は生産性向上のために、1枚の畑の大きさを広げてきたが、野生の小動物の隠れ家となる林や石垣、生け垣、池を増やすことを奨励。農地の中に十分な非生産部分を設置しないと補助金が受け取れなくなるようにする。

 農業から食卓までのフードシステム全体で持続可能性を高めていく。2030年までに農薬や抗菌剤の利用を半減する目標も打ち出している。

 中でも議論を呼ぶのが、有機農業への転換計画だ。改革の提案では現在8%程度の有機農地比率を25%に引き上げる。ちなみに日本では同比率は1%に満たない。加盟国の間で有機農業に対して温度差があり、最終的に合意できるかは流動的だ。だが、有機農業をニッチ産業から、当たり前の農業に押し上げようとするEUの野心は伝わってくる。

 こうした一連の対策は、農産物の生産コストを押し上げる可能性がある。しかし、EUは農業の環境面で厳しいルールを導入することによって、域外からの農産物輸入の拡大に歯止めをかけることも期待する。

 温室効果ガス削減や生物多様性、アニマルウェルフェアに配慮しない海外の農産物に対し、農業団体などは「輸入の規制をするべきだ」と主張している。EU並みの水準をハードルにすることで、域内農業の競争力を高めるというしたたかな戦略と言えそうだ。
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山田 優(農業ジャーナリスト)
農学博士。1955年生まれ。日本農業新聞記者出身で海外農業を担当してきた。著書に『亡国の密約』(共著、新潮社、2016年)、『農業問題の基層とは何か』(共著、ミネルヴァ書房、2014年)、『緊迫アジアの米――相次ぐ輸出規制』(筑波書房、2005年)などがある。
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