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欧米で噂されるバルト舞台の「対ロ戦争」

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【ロシアと世界を見る目】シリアでの衝突のほうが可能性高い?

公開日: 2016/02/19 (ワールド)

ロシアのプーチン大統領(左)とオバマ米大統領=Reuters ロシアのプーチン大統領(左)とオバマ米大統領=Reuters

小田 健:ロシアと世界を見る目 (ジャーナリスト、元日経新聞モスクワ支局長)

 東アジアでは今月に入り北朝鮮が長距離弾道ミサイル実験を強行、中国が南シナ海の西沙諸島に地対空ミサイルを配備した。17日には米国の最新鋭ステルス戦闘機F―22が韓国上空を飛行するなど、軍事的緊張を示す動きが続いている。

 欧米でもロシアとの戦争の可能性をうかがわせる相当にきな臭い話が相次いでいる。
 
 まず英国の公共放送BBC2の準ドキュメンタリー番組『第三次世界大戦:作戦指令室の内部』。2月3日の夜放送された。バルト3国の1国、ラトビアでロシア人住民(ロシア語系住民)が分離独立をめざし蜂起、ラトビア軍と衝突、これにロシア人住民を支援するためロシア軍が介入する。その場合、英軍、NATO(北大西洋条約機構)はどう対応すべきか、どのような選択肢があるかを探った番組だ。
 
 2014年春にウクライナ東部でロシア人住民がウクライナからの分離独立をめざし反乱、ロシアが介入、結局、クリミアを併合した。これと同様のことが次ぎに起きるとしたらロシア人住民が多いバルト諸国だろうとの想定で作られた。

 番組では英国の元軍人や元外交官10人が「作戦司令室」に集まり、対応を協議する。バルト諸国はウクライナと違ってNATOに加盟している。当然、NATOに加盟している1国への攻撃はNATO全体への攻撃であるとして反撃する義務を定めたNATO条約第5条の適用対象となる。

 従って少なくともラトビアを舞台にNATO軍とロシア軍が戦うことになるだろうが、問題はNATOもロシアも核兵器を保有しているということ。番組に参加した元欧州最高司令部副長官のリチャード・シレッフ卿は、ラトビアのためにロシアと核戦争を戦う用意はあるかと問いを発し、核戦争の可能性が排除されなかった。

 次に米国の国防省系シンクタンク、ランド研究所の研究員、デービッド・シラパク氏とマイケル・ジョンソン氏が連名で2月初めに報告書を発表した。これもバルト諸国を舞台にしたロシアとの戦争のシミュレーション報告『NATO東部方面の抑止力強化:バルト諸国防衛の机上演習』で、研究所のウェブサイトで発表した。

 ここでもロシアがウクライナの次に狙うのはバルト3国であると想定され、ロシア軍は現状では60時間以内にエストニアやラトビアの首都に到達できるとの計算結果を明らかにした。そこで報告はロシアの介入を阻止するため、NATO軍が7旅団を増強するよう提言している。

 BBCの番組もランド研究所の論文も欧州での発火点をバルト諸国とみている。だが、その想定自体が間違っているとの批判もロシア内外で出ている。ラトビアではロシア人住民が人口の24%を占めるが、そもそも彼らの多くは分離やロシアとの併合を求めていない。そうした顕著な運動はない。

 バルト諸国ではソ連崩壊後、ロシアに移住したいロシア人住民は1990年代に移住した。ロシア人住民が言語、文化、国籍の問題について不満を抱いていることは確かだが、彼らの対応はウクライナ東部やクリミアの人たちとは異なると説明される。

 また、ロシアが介入した場合、NATO軍の反撃、そして住民による強い抵抗が待っており、ロシアは泥沼に入り込む。そんなことをロシアがあえてするか。

 ロシアと欧州の周辺の状況をみると、NATOとロシアの軍事衝突の可能性はバルト諸国よりもシリアで高いのかもしれない。昨年11月にトルコ軍が領空侵犯を理由にロシア軍機を撃墜、ロシアとトルコの関係は一気に冷却化し、その後も緊張度は増している。

 ロシアがアサド政権を支持しているのに対し、トルコはその打倒をめざし、利害が対立する。ロシア国防省は2月4日、トルコがシリアに地上軍を送り介入しようとしているとの声明を出した。

 トルコもNATO加盟国。NATOはシリアを舞台にしたロシア・トルコ衝突の場合の対応を検討しているだろう。

 米国のジェームス・クラッパー国家情報長官は2月9日の上院での証言で、米国に脅威を与えている国の第一にロシアを挙げた。以下、中国、イラン、北朝鮮の順。クラッパー長官は「ロシアはNATOについて基本的にパラノイド(偏執狂)だ」と批判した。

 米国のロシアに対する警戒感の強さは2017年度予算教書にも現れている。欧州に展開する米軍の兵員と兵器を増強し演習を強化する『欧州安心提供イニシアチブEuropean Reassurance Initiative』に対する予算を2016年度の4倍の34億ドルに増やすことを決めた。ロシア軍対策の強化である。

 こうした対応についてロシアではNATO諸国がロシアを「悪魔視している」と反発する声が高い。米国では大統領選が進行中だし、予算獲得競争も展開されている。ロシアを敵視しやすい時期ではあるが、米欧とロシアの関係は単なる冷却化の域を脱しつつあるのかもしれない。リセットの道は遠い。
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小田 健:ロシアと世界を見る目(ジャーナリスト、元日経新聞モスクワ支局長)
1973年東京外国語大学ロシア語科卒。日本経済新聞社入社。モスクワ、ロンドン駐在、論説委員などを務め2011年退社。

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