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ロシアが仕掛ける「シリア和平」外交戦     

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シリア情勢激変、IS攻勢とイラン復帰の裏で(上)

公開日: 2015/09/08 (ワールド)

ドイツに到着したシリア難民=Reuters ドイツに到着したシリア難民=Reuters

菅原 出 (国際政治アナリスト、危機管理コンサルタント)

 シリア難民が欧州に押し掛け、欧州諸国にとって最大の内政問題になりかけている。シリア和平ができないと、欧州は際限のない難民流入にあえぐことになる。そんな背景の下、シリアを巡る外交戦も激しく変化し始めた。

 まず、7月下旬、ニューヨークのジャファリ・シリア国連大使の事務所を米国のパワー国連大使が訪れ、約40分間会談した。両国の国連大使の直接会談自体、2012年にシリアが本格的な内戦に陥って以来、両政府高官による初めての直接的な接触である。

 最近共同通信がシリアのメクダド外務副大臣に行ったインタビューで明らかになった。8月23日に行われたインタビューで同外務副大臣は、両国連大使の会談のなかで米大使は「オバマ政権が進めている米軍による反体制派武装組織の訓練はシリア軍に対するものではない。実際にオバマ政権のパワー国連大使はシリアのジャファリ国連大使に対して、米軍が訓練する反体制派組織はシリア軍に対する軍事作戦は行わない」とご丁寧に説明したという。

 メクダド外務副大臣は、「米国を含め(国際社会は)シリアの体制転換政策を見直す方向に変化している」「ISの拡大でテロが欧州の首都やトルコ、サウジなどに拡散したため、シリア内戦の早期終結が必須だと各国が突然目覚めたのだろう」と共同通信に語っている。

 オバマ政権の対シリア政策は、「アサド存続やむなし」の方向に少し傾きかけているのかもしれない。

 米国の変調を意識しているのだろうか。ロシアのプーチン政権は最近、中東、とりわけシリア和平のための外交活動を活発化させている。

 8月11日にはサウジアラビアのジュベイル外相をモスクワに招き、シリア紛争について協議している。シリア内戦をめぐっては、サウジアラビアが反政府勢力を支援し、ロシアはアサド政権を支援している。異なる勢力をバックアップするサウジとロシアが、シリア内戦をめぐって直接協議したことになる。

 ロシアとサウジはシリア内戦をめぐっては大きく利害が対立しているが、ロシアのラブロフ外相は、「ISの掃討に関係国が力を合わせるべき、その連合にアサド政権は不可欠」との従来の主張を展開し、サウジのジュベイル外相は、「アサド大統領は問題の解決策の一部ではなく問題そのものに過ぎない」としてアサド政権の存続を前提とした和平案には反対の意向を示したと伝えられている。表に出てきている主張は平行線のままだが、対立2国が直接協議したこと自体が、歩み寄りの兆候と見るべきだろう。

 ロシアにとってシリアは、旧ソ連域外で唯一軍事基地を有する戦略的に重要な国である。同国に親ロシア派の政権が存続することは、シリアを通じて中東地域への影響力を維持するために不可欠である。ロシアは軍事・経済的な支援をアサド政権にしているため、反政府派からすればロシアは敵対勢力だ。ISを含む反政府派にアサド政権が倒されればロシアのシリアにおける権益は吹っ飛んでしまう。

 8月11日付の『ニューヨーク・タイムズ』紙は、ロシアがサウジアラビアの外相と会談しただけでなく、サウジ情報機関とシリア情報機関の高官同士の会合を仲介するなど、背後で積極的な外交を展開していることを伝えている。共同通信によれば、この時サウジ側は「シリアから(親イランの)シーア派民兵組織ヒズボラを排除すれば、サウジは反体制派への軍事支援をやめる」とシリア治安機関トップのマムルーク将軍に「異例の和平提案」をしたことを伝えている。

 またシリアのモアレム外相はロシア政府との協議の後、オマーン政府高官と会ったことが分かっている。オマーン政府はサウジアラビアとイランの双方と関係が緊密であり、米国政府とイラン政府間の核問題をめぐる協議も、オマーン政府が仲介して秘密裏に開催されていたことが知られている。シリア和平をめぐってもオマーンがサウジとイランの仲介をしていたとしても不思議ではない。

 こうした動きの後、8月17日にロシアのラブロフ外相はイランのザーリフ外相とモスクワで会談し、シリア和平について協議した。米国やサウジアラビア等が、アサド大統領の退陣をシリア和平の条件にしていることに対し、ラブロフ外相は、このような条件を設定することに反対の意思を表明し、イランのザーリフ外相も、「アサド大統領の進退については彼の政府の代表者及び反対勢力の代表者間の協議によって決められるべきだ」、すなわちアサド大統領の進退問題はシリア人自身が決める問題であって、外国がとやかく言う問題ではないとの立場を改めて明確にした。

  その上で両国は、「関係各国はまずイスラム国(IS)の脅威に対処することで力を合わせるべきだ」との従来の主張を展開した。ロシアとイランはシリア和平に関しては足並みを揃えている。

 ちょうどロシアはその直前、シリア反体制派の代表者をモスクワに招待してシリア和平の仲介のための協議を進めていた。招かれたのは「シリア国民連合(SNC)」の代表者たちで、ラブロフ外相はこれらシリア反体制派の指導者たちに、「主権国家の独立の維持、同国をテロの温床にしないための安定の回復」が第一である、と伝えたという。

 ロシアは、サウジアラビア、シリア反体制派まで含めた多角的な外交を展開しているが、その一方でシリアへの軍事支援も著しく強化しているのではないかとの懸念が強まっている。9月5日、ケリー米国務長官がラブロフ外相と緊急の電話会談を行ったのは、「ロシアがシリア内戦に軍事介入するのではないか」と米情報機関の一部が懸念を強めたためだった。

 シリア「内戦」をめぐる関係各国の駆け引きは、新たな段階に突入している。
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