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ペロシ下院議長の強行訪台 台湾にメリットなし

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些細な衝突も米中戦争へつながりかねない危機

公開日: 2022/08/05 (ワールド)

台湾に到着したペロシ米下院議長=Reuters 台湾に到着したペロシ米下院議長=Reuters

俵 一郎 (国際金融専門家)

8月2~3日、米国のペロシ下院議長がついに台湾を訪問した。マレーシアからフィリピン経由で中国空軍による威嚇を警戒して7時間もかけて到着したようだ。

 下院議長としてはギングリッチ議長以来25年ぶりの訪台となった。ただ前回は圧倒的な軍事力の差で中国としても座視する以外になかったが、今回は中国が「遼寧」「山東」の二隻の空母を出動させるまで軍事力の差は縮小している。

 ペロシ氏はワシントンポスト紙の寄稿で「日増しに高まる中国共産党による台湾侵攻の危機に臨んで米国議会の代表が台湾を訪問することは、中国からの高まる圧力に直面する台湾と米国がともにあるという明白なステートメントになる」と今回の訪台の目的について語っている。

 中国にとって、台湾問題はそもそも内政に属することであり他国の容喙を許さないという姿勢で一貫してきた。

 最近における中国の南シナ海における人工島の建設や香港に対する締め付け、台湾に対する武力侵攻も辞さない態度、などを背景に米国が民主主義を標榜する台湾への擁護を力説することは正しい。しかし、下院議長という立場の重要人物が訪台を強行するのは果たして賢明な判断なのであろうか。

 ペロシ訪台のリスクを過小評価すべきではないと思う。習近平国家主席はペロシ訪台について具体名を上げることは避けつつも、バイデン大統領に「米国は火遊びをしている」と強い警告を発した。

 習近平主席としては秋の党大会で異例の三選を目指しているなかで「中国の国家主権ならびに領土の一体性を決然として守り抜く」との決意を表明している。

 早速に中国は台湾を包囲する6か所で実弾を使った軍事演習をペロシ議長が台湾を離れた後も実施すると表明した。台湾海峡の中間線を越えて台湾側に二十数機の戦闘機を飛ばし、演習エリアの中には台湾が主張する領海も含まれているとの報道であった。

 李登輝主席が90年代央に訪米した際には本島近くまでミサイル発射を行った。今回も台湾近海に打ち込まれた。台湾を取り囲むように演習を実施しており、実質的な台湾封鎖になっている。

 中国は、ペロシ議長の訪台は「一つの中国」政策に対する重大な違反であるとの立場だ。ちなみに米国は1972年にニクソン大統領(当時)が電撃的に訪中して両国関係の改善につなげたものの、国交の正常化には至らなかった。

 カーター政権下の1979年1月1日の国交が樹立されるとともに米国は台湾との政治的関係を断絶した。

 一方で米国側は台湾との関係強化を見せつける必要性があった。習近平主席は中国政府が本土と台湾との完全なる統合を達成することを日増しに強い調子で叫び続けた。中国は、台湾の防空識別圏に対する戦闘機の侵入を含めて台湾に対する軍事的圧力を強めていった。

 ペロシ下院議長は82歳の今日に至るまで。1989年の天安門事件における虐殺など中国の人権問題について厳しく追及を続けてきた。91年に天安門を訪問した際には「中国の民主主義のために死去された人々のために」というのぼりを閃かせたくらいだ。

 今回の訪台は11月の中間選挙で共和党の勝勢が伝えられる中で民主党出身の議長として最後の活躍のチャンスと思ったのであろうことは想像に難くない。

 しかし、台湾問題は今日、もっと複雑な地政学的な問題をはらんでいる。台湾海峡を挟んだ軍事的衝突のリスク、さらにはいかなる些細な衝突も中国をして米国と闘わせることになるのが現実である。

 ペロシ議長にとってのジレンマは北京からの報復措置を受ける危険を高める一方で、もし訪台を中止していれば中国の圧力に屈したとみなされていたであろうことだ。

 ペロシ議長の訪台は台湾の安全保障を改善する具体策を携えてはいない。他国の首脳も台湾を訪問すべきとアジテートするのも北京の激怒を買うリスクを高めるに過ぎない。

 中国も激情に駆られて台湾への侵略行為などに訴えるべきではない。米国では政府と議会指導者は別物であり、ペロシ議長の訪台は何ら政府からの公的な裏書きを得ているわけではないことを注視すべきだ。

 むしろ、バイデン大統領は「米軍が訪台に反対している」と牽制していたくらいだ。そもそも一か月前に米国は台湾に対する基本的スタンスに変化はないとの声明を出している。中国を唯一の政府と認める一方で台湾への支援を続けていくという従来からの「あいまい戦略(strategic ambiguity)」を続けていくとの意思表明であった。

 ペロシ議長の訪台は、勇ましいファンファーレで鼓舞されたではあろうが、実態的に台湾に大きなメリットを与えたとは言いにくい。

 米国としては、中華民国政府との国交断絶と同時に1979年に制定した台湾関係法に基づき、台湾の安全保障を強化するために慎重に台湾と協調していくことが重要だ。

 つまり、米国が最新の武器を供与して軍事教練を強化することがペロシ議長の勇ましい訪台よりもはるかに台湾の安全保障の強化にとって有効である。
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