北朝鮮製の地雷が爆発し、韓国兵が重傷を負った事件に端を発した韓国と北朝鮮の緊張は8月25日未明、双方が合意に達し、一応の緊張緩和が実現した。
このプロセスを通じて韓国側は、北朝鮮の最高指導者である金正恩第1書記の3つの弱点を把握したという。
日韓の外交筋が明らかにしたもので、最近、韓国政府内で共有化されたという。
弱点を説明する前に、事件をもう一度振り返ってみよう。
8月4日に軍事境界線近くの非武装地帯(DMZ)で地雷が爆発。韓国側は謝罪を求め、北朝鮮向けの大型拡声器を使った放送を開始した。
これに反発した北朝鮮側が、韓国側を攻撃し、双方の緊張が一気に高まった。22日から断続的に双方の高官が会談を断続的に開き、25日になって6項目の合意文が発表され、事態が沈静化した。
韓国政府の情報部門がこの事件を子細に分析した結果、金正恩氏は、(1)情勢把握能力に甘さがある。(2)危機的状況に弱い。(3)1つのことに執着しやすいー性格と判断したという。
情勢把握については、正恩氏が情勢を何回も読み間違ったことを挙げた。
例えば、北朝鮮が韓国と緊張状態になった時、韓国国内の世論は分裂することが多いが、今回は「北朝鮮に譲歩するべきでない」と与野党もまとまった。
それにも関わらず、緊張を一方的に高め、引くに引けなくなった。
危機的状況での弱さは、緊張状態の中で、北朝鮮側が最前線にどんな指示を出していたかで分かったという。正恩氏は、「韓国側が万一発砲しても、応戦してはいけない」という指示を出していた。
最後の「執着心」は、自分の批判を行っている拡声器放送を中断させるために、あらゆる手段を動員したことだ。
放送中断を韓国側が持ち出すと、北朝鮮側は地雷爆発について、「遺憾の意」まで表明し、折れてきた。北朝鮮が韓国側に謝罪するのは極めて異例なことだ。
放送の中断にこだわるあまり、会談に出ていた北朝鮮側の高官も、柔軟な駆け引きができなかったという。
北朝鮮は10月10日に、朝鮮労働党創建70周年という大きな記念行事がある。
このタイミングで再び韓国を挑発する可能性があるが、韓国側は対応に自信を深めている。
韓国がつかんだ金正恩氏の3つの弱点 |
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地雷爆発騒動でわかった指導者としての能力の欠如
公開日:
(ワールド)
Reuters
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五味 洋治(東京新聞論説委員)
1958年生まれ。中日新聞社入社後、韓国延世大学留学。ソウル支局、中国総局勤務を経て、米ジョージタウン大学にフルブライトフェローとして在籍。著書に「父・金正日と私ー金正男独占告白」など。
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