英国で実施された国民投票で、欧州連合(EU)からの離脱が過半数を得た。これを嫌気した東京株式市場で日経平均は前日比1000円以上の大幅な下げとなった。少なくとも一時的には世界同時株安が見込まれる「衝撃」をもたらした。
できればリスクは小さいほうがいいし、地域統合は安全保障上も維持すべき戦略と考えていた。国民投票の結果は残念だ。だが、EUの部分的な弊害も見え始めていただけに世界を組み替えていくための第一歩と考えることもできる。欧州のリーダーたちは衝撃を奇貨にかえる柔軟な対応が求められるだろう。
重要なのは、英国とEUの関係は離脱、残留の二つの選択肢しかないわけではないことだ。戦争が始まったわけではなく、英国がEUのメンバーから抜けるといっても人、もの、カネの移動が突然シャットダウンされるわけではない。
離脱の交渉を進める中で、新たな関係、枠組みを決めていくことになる。つながりがや交流を断つことはできないのだから、英欧間の問題解決のためのメカニズムは必ず必要になる。
実は、両者の関係は現実的には離脱と残留のまんなかになるはずだ。その意味で、EU側のリーダーたちは離脱に懲罰的な制裁を課さず、新たな関係構築という柔軟な姿勢をもたなければならない。それは、部分的には限界や矛盾が見えたEUそのものを強化する再構築作業そのものだ。
英国の指導者と国民に求められるのは、国を二分した議論を国内の対立という形で引きずらないことだ。「離脱」という大きな方向は共有しつつ、どこまでEUから離れるのが適切な距離感なのか、万機公論に決すべきだし、その余地は大きい。
離脱派の一方的なイニシアティブで英国のあり方を決めるのではなく、両派が妥協しながらコンセンサスを築き、英国としての統一を維持する知恵と柔軟性が大切だ。それができなければ、本日6月24日は英国の落日の始まりとなり、それができれば、英国が平和と繁栄をさらにゆるぎないものにした日となるだろう。
英のEU離脱の衝撃を奇貨として |
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柔軟対応が強さを生む
公開日:
(ワールド)
Reuters
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土屋 直也:ネットメディアの視点(ニュースソクラ編集長)
日本経済新聞社でロンドンとニューヨークの特派員を経験。NY時代には2001年9月11日の同時多発テロに遭遇。日本では主にバブル後の金融システム問題を日銀クラブキャップとして担当。バブル崩壊の起点となった1991年の損失補てん問題で「損失補てん先リスト」をスクープし、新聞協会賞を受賞。2014年、日本経済新聞社を退職、ニュースソクラを創設
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